2012 Fiscal Year Research-status Report
韓国における才能教育の実態に関する研究-制度上の機能と地域での役割に注目して-
Project/Area Number |
24730714
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kio University |
Principal Investigator |
石川 裕之 畿央大学, 教育学部, 助教 (30512016)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 韓国 / 才能教育 / 教育制度 / 競争原理 |
Research Abstract |
本研究の初年度となる今年度は、文献・資料の収集・分析など基礎的な研究に力を注ぐとともに、現在の韓国の才能教育をめぐる状況に関する情報を整理した。その結果、近年、韓国の才能教育機関の類型がさらに多様化しており、才能教育機関や才能教育対象者の数も爆発的に増加していることが分かった。これは、「第2次英才教育振興総合計画」に基づく、李明博政権下での才能教育振興政策による結果と考えられた。また、2011年の高校体制改編(高校類型の整理・単純化)に伴い、特殊目的高校に関する規定(初・中等教育法施行令第90条)が改正され、特殊目的高校に関する法令上の規定から「英才」の文言が削除されたことも大きな変化であった。なお、韓国社会で才能教育実施が正当化されている背景について教育資源配分の公平性と効率性という観点から考察したところ、韓国では科学者など国家・社会の発展に寄与する人材を育成することで、少数者に特別な教育を提供する才能教育の存在が正当化されていることが明らかになった。また、才能教育が社会経済階層の再生産を助長するという批判については、生活保護受給者の子女や僻地居住者など不利な条件にある才能児に対して、積極的に才能教育の機会を提供することで対応していることが判明した。さらに、受験名門校として強い批判を浴びてきた外国語高校の入試のように、才能教育機関の入試方法に繰り返し規制をかけることで、才能教育が受験競争を煽るという批判をかわそうとする姿勢が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は3年計画の初年度であり、主要な文献・資料の収集・分析と近年の才能教育政策の動向を探ることが主要な目的であった。この観点からは目的はおおむね順調に達成されているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に則り、各地方の教育庁や才能教育機関における現地訪問調査によって、地域レベルので才能教育の実施状況を探ることが今後の主要な課題となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・引き続き関連文献・資料の収集をおこうために、設備・備品費が必要である。 ・収集した情報の整理や論文執筆等研究成果の発表のために、文具やパソコンソフトの購入に当てる消耗品費が必要である。 ・韓国におけるフィールドワークや国内外の学会大会等における研究成果の発表のために、国内・外国旅費が必要である。 ・韓国におけるフィールドワークの際に専門家から知識の提供を受けるために、人件費・謝金が必要である。 ・その他、日本から韓国への通信費、文献・資料等の複写費および搬送費が必要である。 なお、次年度への未使用額(繰越金)が生じたが、これは以下の事情によるものである。本年度に収集可能な関連文献・資料の数が当初予測していたより多く、次年度に収集予定だった関連文献・資料を前倒しで収集するために前倒し請求をおこなった。これにより関連文献・資料の収集は順調におこなうことができた。しかし、諸般の事情により本年度3月に予定していた韓国でのフィールドワークを中止せざるを得なくなったため、結果として未使用額が生じた。本年度の未使用額は当初予定していた韓国でのフィールドワークを次年度に実施することで使用する。
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