2012 Fiscal Year Research-status Report
グローバル社会における視覚伝達の構造を考慮した情報デザイン学習ツールキットの開発
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24730748
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
上平 崇仁 専修大学, ネットワーク情報学部, 教授 (20339807)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 情報デザイン / デザイン教育 / ビジュアルコミュニケーション / 異文化コミュニケーション / 参加型デザイン / 教材開発 |
Research Abstract |
24年度の研究計画で挙げた項目のうち、3点において研究活動を行った。 はじめに、「情報教育としてのデザイン教育領域の課題事例・教育カリキュラム調査」については、申請者の所属する専門家コミュニティを通じて、日本各地のデザイン教育関係者との意見交換を行い、カリキュラムおよび実践演習事例の情報収集を行った。動向として、デザイン思考の概念が普及し、非専門家向けの広義のデザイン教育の必要性が高まっていること、人々が主体的な創造行為への参加を可能にする、つくる仕組みをデザインするための一階層上のデザイン、いわばメタデザインの視点とそれらを具体化する方法論が求められていることが確認できた。 次に、「フィールドワーク,ウェブシステムによる世界各地の視覚伝達デザイン事例収集」は、研究者自身が2012年9月にコペンハーゲン(デンマーク)、ストックホルム(スウェーデン)に滞在し、街の中で利用されている視覚伝達デザイン・ユニバーサルデザインの事例の収集・記録を目的とした実地調査を行った。この事例の一部は学内研究所の発行する機関誌に資料として報告した。また、誰でも発見したデザイン事例を投稿可能な画像投稿システムの開発を行った。このシステムは、位置情報とタギングによって編集できる機能を持ち、現在インターネット上で試験運用中である。 そして、「学習ツールキットの試作」については、これまでの教材をベースに、4点の試作(IA Basic Learning Kit[1] / CardSort Game / タイプフェイス神経衰弱 / サービススケッチツール)と制限付き配布、および利用者へのヒアリングを行った。[1]については、ウェブサイト上で無償公開したところ、日本各地の学校やIT系企業を中心に3000部以上ダウンロードされ、学習するためのキットの概念について、ニーズの高さを確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の研究活動として計画書に事前に掲げた、国内の情報収集、北欧の実地調査、システム開発、ツールキット試作、については、おおむね当初の予定通りに実施することが出来たと言える。一方で、研究計画に残された項目の「異言語/異文化間におけるコミュニケーション構造の調査・分析・モデル化」については、関連文献や資料収集、予備的なインタビュー調査(6名)は行ったものの、時間不足により分析と文章化を進めることができなかった。しかしながら当初の計画の項目が多すぎたこともあり、この項目については次年度の課題としたい。 ツールキットに関しては、一年間で4点のキット試作と配布、レビューを得ることができたことは大きく評価できるが、キット自体にレビューを反映して改訂していく必要がある。また情報を集約し、知られる機会を増やすためにもウェブサイトを整備していくことが求められる。また、現状の試作キットは、インターネット上で配布して誰でも利用できるという条件は備えているものの、本研究において達成したい目的とは乖離があり、予備調査や関連研究で得た知見と統合しつつ成果物の試作としてのツールキットを検討していく必要がある。試作に関しては次年度も重点課題としたい。 理論化および成果発表においては進行不足があるものの、ツールキットデザインの実践面には進捗があったと言えるため、「おおむね計画通り」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、前年度の調査で得た知見を反映しつつ統合するフェーズに入る。特に前年度に進捗が遅れた「異言語/異文化間におけるコミュニケーション構造の調査・分析・モデル化」については、理論の学習と、関連する研究者との意見交換の機会を増やし、考察を深める。また異文化コラボレーションの事例として北欧型の参加型デザインを調査し、参照可能なモデルを検討する。 次に、これまで得た知見を反映させ,学習ツールキットの構想を深める。 ツールキットの試作と本開発に着手するとともに、開発した学習ツールキットを利用したワークショップの設計も検討する。 場を設定することで開発のマイルストーンにするととともに、実践的に仮説検証を進めることを狙う。 また、事例収集で作成したシステムを拡張することを試みる。具体的には、現在の利用目的に加えて、ツールキットで作成した作品をオンラインで共有可能にする画像共有システムの開発を行う予定である。これによって実空間とインターネット空間を効果的に接続した教材が可能となり、ツールキットのアイデアの可能性を広げると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
追加での事例収集、ユーザ参加型デザインの調査のため、欧州(フィンランドorドイツ、デンマーク)での実地調査を行う。そのための旅費が必要であり、前年度の研究費残額\88,566は、ここに充填する予定である。 また、システム構築・ツール開発を部分的に委託するために人件費・謝金が必要である。 またツール開発における議論やプロトタイプ作成において、消耗品(紙・工作道具・ポストイット・インクカートリッジ)等が必要である。その他機材 ソフトウェアについては、前年度に揃えられたので、現在の所使途予定はない。
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