2013 Fiscal Year Research-status Report
グローバル社会における視覚伝達の構造を考慮した情報デザイン学習ツールキットの開発
Project/Area Number |
24730748
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
上平 崇仁 専修大学, ネットワーク情報学部, 教授 (20339807)
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Keywords | 情報デザイン / デザイン教育 / ビジュアルコミュニケーション / 異文化コミュニケーション / 参加型デザイン / 教材開発 / 共創 |
Research Abstract |
25年度は、前年度に得た知見を反映しつつツールキットとしての統合に向けた検討を行った。以下の三点にまとめる。 1)前年度のツールの試作成果をベースに、カードソーティングゲーム 、タイプフェイス神経衰弱 のデザインを行った。1については、研究代表者の担当しているデザイン演習の履修者約の他、複数のWeb系企業内の社員にキットを用いたワークショップ実践を行うことができた。有用性を確認したのち、インターネット上で配布を行っている。2については、デザイン系教育を行っている日本各地の大学15校、企業10社に配布し、利用者へのヒアリングを行ったほか、学会誌にて取り組みを報告した。また新規に「デザインなぞなぞ」プロジェクトを実施した。なぞなぞの構造をユーザ参加のプラットフォームとして取り入れ、学びをスケールさせるツールとして捉えたものであり、β版となる書籍を作成し配布した。 2)実空間と情報空間を接続したツールキットの構想を進めるため、まず、オンラインで共有可能にする画像共有システムの開発を行った。ユーザが画像を投稿すること、加えて別のユーザが画面のドラッグ&ドロップによって視覚的に分類・整理することができることが特徴である。演習において試験運用を行い、動作と利用効果を確認することができた。 3)学習ツールキットの利用文脈を検討するために、だれでも簡単にビジュアルサインを作成できるアプリケーション「PixC」(学生との共同開発)を事例にして、異言語ユーザにおける共創(Co-Design)の可能性について検討を行った。さまざまな専門家との議論を通して、ツールは実利用されるだけでなく、中高生向けのデザイン・情報教育に対しても利用可能であるという示唆を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に達成が遅れていた「異言語/異文化間におけるコミュニケーション構造の調査・分析・モデル化」については、2012年度に行ったフィールドワークの調査結果を学内研究所紀要に報告したほか、上記の実績概要3)デザインアプリの開発事例をもとにした共創に関する検討の成果と合わせて、7月のデザイン学会で発表予定である。昨年度は予定がつかず海外フィールドワークを行えなかったこと、理論化・モデル化に関してはまだ考察が深められていないため、今後の課題となる。 ツールキットの試作に関しては、アウトプット駆動で進められており、2年で5点(IA Basic Learning Kit / サービススケッチツール / タイプフェイス神経衰弱 / カードソーティングゲーム / デザインなぞなぞ)の良質な試作成果とレビュー、利用したいという多くのユーザを得ることができたことは評価できる。当初に想定した学習者のみならず、企業の現場においても利用したいという声が多く、ニーズを高まりを確認することができた。特に建築系研究者からは、建築における利用文脈を調査するためのツールとしてのありかたを提示され、それらの展開について議論することができた。一方で成果となるツールを配布するためのウェブサイトの整備が遅れており、教育関係者に周知する機会を増やせていないことは反省点であると言える。 また、画像共有システムに関しては、実利用できるレベルまで実装することができた。これをもとに実空間と情報空間を接続した最終成果物の構想と試作を進めることが可能となったことは大きな前進であると言えよう。調査で得た知見と統合しつつ,開発を進めていくことが今後の課題となる。 以上、ツールキットの試作には成果を挙げられたが、理論化および成果公開においての進行不足があるため、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は調査で得た知見と統合しつつ,大きく3つの研究を行う。 1)画像共有システムの開発および統合ツール開発:昨年度実装を行った画像共有システムを用いて、実空間と情報空間を文脈的に接続して利用可能な最終成果物の構想と試作を行う。そしてインターネット上で試験運用を行う。ツールキットの試作と本開発に着手するとともに、開発したツールキットを利用したワークショップの設計も検討する。 2)ツールキットを用いた共創の可能性についての考察:これまでは「異言語/異文化間におけるコミュニケーション構造の調査・分析・モデル化」を軸に進めてきたが、コミュニケーションを取り、伝えあうだけではなく、異なる知見を持ち寄り、複数名での創造的活動に繋げるためにコミュニケーションを行うこと、そして文化差を乗り越えて共有できる道具をもつことについて、社会的な必要性が増している。これらの背景を反映してツールキットのニーズについて再検討を行い、共創によるデザインおよびそれを通した学習について、理論面からの検討を行う。また関連する研究者との意見交換の機会を増やし、考察を深める。 3)ウェブサイトにおける公開と普及活動:制作したツール群をウェブサイトで一元化して公開し、普及に向けた活動を行う。具体的にはワークショップやメディア等を通したユーザ増につなげる活動を定期的に行うほか、遠隔地で自分たちでツールキットを利用できるように指導者用マニュアルを整備する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
7,8,9月に学務との調整が出来ず、国際会議(Human Computer Interaction International 2013)での情報収集および海外フィールドワークが実施出来ず、そのための出張費を計上していないため。また委託しているシステム設計で未完成な部分があり、その分の人件費を計上していないため。 追加での事例収集、共創によるデザイン事例、デザイン教育事例の調査のため、欧州(フィンランドorドイツ、デンマーク)での実地調査を行う。そのための旅費として使用する。 また、ツールキット開発におけるシステム構築・デザイン実装を部分的に専門家、アルバイトに委託するために人件費・謝金として使用する。
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