2014 Fiscal Year Research-status Report
グローバル社会における視覚伝達の構造を考慮した情報デザイン学習ツールキットの開発
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24730748
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
上平 崇仁 専修大学, ネットワーク情報学部, 教授 (20339807)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 情報デザイン / 参加型デザイン / コミュニケーションデザイン / 共創 / デザイン教育 / 視覚伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに得られた知見を反映しつつ、ツールキットとしての統合に向けた検討を行った。26年度の実績を以下の4点にまとめる。 1)作成した学習ツールキットの公開と普及活動:前年度までの試作は6点(IA Learning Kit / サービススケッチツール / タイプフェイス神経衰弱 / カードソーティングゲーム / デザインなぞなぞ/PixC)が公開されており、各ツールの運用や普及活動、および利用者へのヒアリングを継続した。いずれも教育機関のみならず、企業の新人研修・管理職研修まで幅広く利用されており、ツールの有用性を確認することができた。またビジュアルサイン作成ツール「PixC」は川崎市・横浜市の依頼で公開ワークショップやデモ等を行った。 2)新規のツール開発:チームによる議論の活性化を行うためのツールとして、新規にDiagram Vocabulary Catalogの開発を行った。議論内容を視覚的に記述することで構造的な理解を支援するものである。大学生を対象に評価を行い、良好な結果を得たため、公開の準備中である。 3)画像共有システムの開発および統合ツール開発:前年度までに構築した、デザイン学習のための画像共有システム「Visual Exchange」の運用実験を行い、多様な端末からの動作確認と演習における学習効果を確認した。またフィンランドにおいてフィールドワークを行い、コンテンツに相当するさまざまな視覚言語の事例を収集した。 4)ツールキットを用いた共創の可能性についての考察:前年度までの考察の結果、異言語/異文化間において、情報を伝えあうための静的なモデル化に限界が見えるため、異なる知見を持ち寄り、文化差を乗り越えて共創するために「生産的なコミュニケーションを生み出す道具づくり」に焦点を当てることに方針を変更した。議論を通して、そのためのコア概念を抽出することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ツールキットに関しては、7点のアウトプット(6点公開/1点未公開)を作成し、インターネット等を経由してこれまで多くの人々が利用している。数多くの企業や自治体などでの利用実績の他、26年度のデザイン学会の発表では、グッドプレゼンテーション賞を受賞し、専門家からの評価を得ることも出来た。そして、ヒアリングや専門家との議論を通して、これらのデザインツールは、大学生という当初の想定利用者だけでなく、中等教育向けのデザイン・情報教育に対しても展開が可能であり、また一方で企業内教育においてもニーズが高いことが確認できた。デザインの学習機会を提供するものとして、十分な達成であると言える。一方で成果となるツールを配布するための公式ウェブサイトや各種マニュアルなどの整備が遅れていることは反省点である。 開発を進めてきた画像共有システムに関しては、機能面は実装を完了し、運用と実験のフェーズにあるが、a)コンテンツの追加投入、b)最終成果物の構想と設計、c)ユーザインタフェースの修正とインターネット上での公式オープンについての準備が今後の課題となる。特に最終成果物は、実世界と情報世界の効果的な接続を狙うため、さらなる検討が必要である。 最後に、「異言語/異文化間におけるコミュニケーション構造の調査・分析・モデル化」に関して、当初はツールキットの予備段階として位置づけていたが、考察を通して研究の前提となるコミュニケーションデザインの枠組みに見直しを行ったため、試作と評価を行う中で見えてきたことを理論化するという方向への変更した。そのため目標である論文執筆と発表も先送りとなっており、この項目の進捗は遅れている。 以上、ツールキットの試作には成果を挙げられたが、理論化および成果公開においての進行不足があるため、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は、これまでの3ヶ年の試作と考察で得た知見を統合しつつ、大きく以下の3つの項目について研究を行う予定である。ただし、本年度は研究拠点が日本国外にあるため、実践的活動への制約が多い。そのため場所に依存しない項目を中心とする。 1)ウェブサイトにおける公開と普及活動:制作したツール群をウェブサイトで一元化して公開し、普及に向けた活動を行う。また遠隔地の利用者がツールキットを利用できるように、指導者用解説マニュアルを整備する。 2)画像共有システムの開発および統合ツール開発:昨年度実装を行った画像共有システムを用いて、実空間と情報空間を文脈的に接続して利用可能な最終成果物の構想と試作を行う。そしてインターネット上で試験運用を行う。ツールキットの試作と本開発に着手するとともに、開発したツールキットを利用したワークショップの設計も検討する。 3)ツールキットを用いた異文化間共創の可能性についての考察:異言語/異文化間において、異なる知見を持ち寄り、さまざまなバリアを乗り越えて共創を行うために、いかに目的を共有し、コミュニケーションを活性化できるかに焦点を当てる。 また欧州各国の専門家との議論を行い、これまでコア概念として抽出した、playful/empowerment/Cross Boundaryの3つをより深め、これまでに試作したそれぞれのツールを用いて、より人々が創造的な活動を行うことを支援するツールの役割、可能性、およびデザインアプローチの方法についての考察を行う。
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Causes of Carryover |
26年度後半期には在外研究の準備を行っており、成果発表のための学会発表出張と理論化のための専門家の知見提供を得られる議論の機会を持てなかったため。また委託しているシステム設計やユーザインタフェースに未完成な部分があり、その分の人件費を計上していないため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
共創によるデザイン事例、デザイン教育事例の調査のため,ベルギー/オランダでの実地調査を行う。そのための旅費として利用する。またツールキット開発におけるシステム構築・デザイン実装を部分的に専門家、アルバイトに委託するために人件費・謝金として使用する。
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