2012 Fiscal Year Research-status Report
絵画表現に躓きを見せ始める子どもの描画発達を促進する教育実践学研究
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24730752
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
小田 久美子 ノートルダム清心女子大学, 人間生活学部, 講師 (10461229)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 芸術教育 / 輪郭線 / 子どもの描画 |
Research Abstract |
平成24年度は、文献研究と並行して、子どものための体験型芸術教育の実態や動向を現地で調査し、その後幼稚園教諭との連携のもとで、保育者の役割を含めた新しい造形活動カリキュラムを策定し、その展望について検討した。 1 内容 フランスでは、約4~12歳の子ども達が遊びながら学べる体験型のワークショップを主に国立美術館で提供している。そこでは作品を取り上げながら様々な技法での制作が行われ、芸術に関心を持つ手がかりになるような工夫がされている。特に作品鑑賞を基盤とした表現活動は、1990 年にルーブル美術館において「子どものアトリエ」が始まったことを通じてよく知られる教育分野であるが、日本においてはその受容が進んでいるとは言えない。そこでこのような背景およびこれまでの研究成果をもとに、芸術作品を用いた教育実践について、吟味・検討・論述した。 2 意義 本年度に進めた研究の意義は、美術作品やその鑑賞を取り入れた新しい造形カリキュラムを開発、5歳児のための活動の計画・立案をし、同時に教育現場と連携しながら、保育者の人的環境としてのありかた・役割に関する考察を幼稚園での実践に向けて行ったことである。 3 本年度研究成果の発表 平成24年度の研究成果をまとめ、「V.Gogh 'La Chambre de Van Gogh a Arles'を用いた絵画プログラムの検討と意義」 として平成25年3月発行(印刷中)の査読付学会誌にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は文献研究と並行して子どものための体験的芸術教育の実態や動向を現地で調査する予定であったが、当初の計画よりも進展があったため、翌年2月の現地調査出張を9月に早めることが出来た。この時期は、ハイシーズンにあたるので航空運賃等の上昇が挙げられ従来の予算より数万円の不足が確認され、前倒し請求を願うことになった。しかし現地調査の実施月が早くなったことで、調査結果をまとめた論文を本年度中に投稿、掲載発表することが出来た。同時に教育実践に向けての準備を行う時間をより充実させることが可能になったことからも、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究で得られた知見をもとに、幼稚園と連携しながら輪郭線を用いた造形遊びを実施し、その発達的変容と効果について考察する。調査・観察を実施する対象者は、ノートルダム清心女子大学附属幼稚園年長児で、分析の視点と分類項目にしたがって整理・分析・検証していく。 1 対象:附属幼稚園 年長児学級(ゆり組30名、ひまわり組30名、ばら組30名)総計90名にて人物・植物・動物の輪郭線ある画用紙、鑑賞した美術作品に関連した輪郭の一部を提示した画用紙と、白色画用紙を用いて調査を実施する。 2 日程:5月22日(水)~ 7月12日(金)10:00~10:45 3 造形遊びと観察:輪郭の一部を提示した画用紙と白色画用紙を、子ども自身が選択できるようにする。画用紙にはあらかじめ名前を書いておく。調査中の対象者の態度、調査への興味など、気づいたことは個人別にまとめておく。対象者の描画への興味を確かめながら、楽しい描画活動であることを徹底する。効果的に研究を進めるために、あらかじめ各クラス担任から、造形活動にあまり積極的ではない子どもの人数とその対象児についての聞き取り調査を行っておく。 4 描画材料:16 色パス 八つ切り画用紙 5 結果の整理方法:画用紙の種類及び年齢による子どもの絵画表現を比較検討するために、次のような分析の視点と分類項目を設定した。(a)どの画用紙を選択したか(b)色数(c)着色面積(d)表現内容のカテゴリー分析(色彩・線と形・構図・テーマ)・固有色を使っている・固有色を使っていない・物の形を描こうとしている・無造作な描画か塗色だけである・天地の関係がわかる・個々をばらばらに描いている・輪郭を利用している・輪郭を利用して創作の絵を加えている・何を描いているかわからない
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査・観察時の資料記録に必要であるカメラ購入を次年度にまわしたこと等により、平成25年度分として請求する助成金が発生した。カメラ購入はもちろん、 附属幼稚園での円滑な調査実施のために造形活動用画材費や複写費、総計540枚の資料計算のための学生研究補助費として使用するだけでなく、研究成果をまとめ日本国内の学会や研究会で発表するために用いることができるよう努力したい。 次年度と合わせた助成金の主な使用計画は以下のようなものである。図書費、文具費、資料提供・閲覧費、通信運搬費、印刷費、幼稚園教員研究補助費、カメラ費、モバイルパソコン費、USB費、造形活動用画材費、学生研究補助費、資料収集旅費、専門的知識の提供費、印刷用紙費、成果発表費、外国語の校閲費。
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