2013 Fiscal Year Research-status Report
絵画表現に躓きを見せ始める子どもの描画発達を促進する教育実践学研究
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24730752
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
小田 久美子 ノートルダム清心女子大学, 人間生活学部, 講師 (10461229)
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Keywords | 芸術教育 / 輪郭線 / 教育実践 |
Research Abstract |
1 内容 平成25年度は、平成24年度の研究で得られた知見をもとに、幼稚園教諭と連携しながら輪郭画用紙を用いた造形遊びを5月から7月に亘って実施し、発達的変化と効果について考察した。調査・観察を実施した対象者は、大学附属幼稚園年長児で、あらかじめ設定されていた「分析の視点」と「分類項目」にしたがって、結果を整理・分析・検証している。 2 意義 当該年度に進めた研究の意義は、美術作品やその鑑賞を取り入れた新しい造形カリキュラムを、教育現場と連携する中で保育者の人的環境としてのあり方・役割に関する考察を行いながら実践して、その効果を導きだしたことである。また輪郭線を幼児の多面的な生活環境と関連させた造形遊びとして取り入れることは、子どもの「表現したい」という内発的欲求を引き出す働きかけをする点で、これまでにない新しい援助の方法であると言える。 3 本研究の重要性 芸術作品とタイアップした表現活動の開発に加え、芸術に触れる機会を活動前に用意することで、今まで省みられなかった分野に意味を見いだし、わが国における幼児期の美術教育の新しい可能性を探求してくものである。造形的な躓きを持つ子どもが輪郭線という手がかりを得ることにより、白紙に対する不安を解決するだけでなく、さらに絵を描くことに積極的な子どももそうでない子どもも、画用紙を選択することで共に楽しく活動することができるため、今後現場での支援の手段としてバリエーションを得るための実践力が高い。 4 本年度研究成果の発表 成果をまとめ、研究論文「3つの輪郭線が及ぼす絵画表現への影響と比較」として平成26年3月発行の学会誌(査読有)にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度からの継続研究である平成25年度は、当該年度の研究計画・方法に即して、幼児教育・描画心理学に関連した文献の検索・収集・複写・分類と資料整理を継続的に行いながら、研究目的2(幼稚園での保育実践…研究目的1で得られた結果をもとに、美術作品に関連した輪郭線を用いた造形遊びの観察と考察を実施し、子どもの絵画表現の発達的変容を実証する)を達成するために、大学附属幼稚園児でデータを収集し、その整理・分析・考察を行い、研究論文を発表していることから、研究の進捗状況は良好であると判断する。結果の整理方法として、「分析の視点」と「分類項目」を設定しているが、幼児の作品の分析を進めている中で、色彩表現方法の診断と表現内容のカテゴリー分析に関して、もっと詳細な指標に改良することによって、さらに具体的な有効性を明らかにできる可能性が出てきた。したがって、その点に関して専門知識の提供と指導助言を必要としている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、調査実施によって明らかになった結果にもとづき、緻密なデータの上に立脚した教育実践方法を論述する。これまでに得られた知見から、実証資料にもとづく原著論文を執筆し、学術雑誌に積極的に発表することによって、わが国の幼児教育・保育者養成・教育実践学研究の発展に寄与したい。研究をまとめる作業に際し、国内外の研究者から指導および助言を受ける予定である。実施計画に記している大学教員・小学校教諭・国内美術館学芸員に加えて、研究計画の変更点として「L’Atelier pour enfants」(ルーブル美術館)の講師が、‘activites jeune public et familles’という子どもを対象としたワークショップで行っている方法を見学・調査し、指導・助言をあおぐ。現地での仏語の通訳として三島和美氏に協力を依頼している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由は、「謝金」を利用しなかったこと等にある。幼稚園での調査にあたって、「謝金」として研究補助費を支払う予定で予算を立てていたが、教諭の通常勤務の範囲内であるとの幼稚園側の判断により、「その他(データ協力・お礼)」の費目で処理された。 今後の研究の推進方策において記しているように、新しい視点での専門知識の提供と指導助言を必要としていることから、国内外旅費、専門知識の提供費、通訳費を追加することで、研究結果の論の展開を補強していく予定である。次年度の研究費の主な使用計画は、以下のようなものである。研究成果をまとめるための費用として、図書費、文具費、資料提供・閲覧費、通信運搬費、印刷費、USB費、画材費、資料収集旅費、専門知識の提供費、現地調査のための旅費および通訳費、学生に対する研究補助費、研究成果を発表するための費用として、印刷製本費、成果発表費、外国語の校閲費。
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