2012 Fiscal Year Research-status Report
超平面配置の自由性の多角的解析と関連する幾何学の研究
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24740012
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
阿部 拓郎 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (50435971)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 超平面配置 / 直線配置 / 自由配置 / 対数的ベクトル場 / ルート系 / 原始微分 / ワイル群 / 加除定理 |
Research Abstract |
平成24年度は、大きく分けて二つの研究分野で成果を上げた。以下、分割して詳細を記述する。 まず、以前実施した研究の発展について述べる。寺尾宏明氏との共同研究において私は、ルート系に付随するワイル配置の変形のうちでとくに重要である、Shi型配置の対数的ベクトル場が持つ特殊な自由基底の存在を示し、それらを単ルート基底及びその双対と名付けた。しかし同氏との研究継続の結果、これらをカテゴリカルに理解することで、より自然な理解及び意味づけができることを発見した。即ち単ルート基底及びその双対は、微分作用素と微分形式の自然な双対の一般化であり、それらは原始微分から自然に定まる多重コクセター配置のベクトル場の基底の延長として得られることが分かった。この拡張はスカラー倍を除いて一意的であり、証明には有名なSchurの補題を用いる。本拡張に基づき、単ルート基底とその双対ではなく、単ルート基底プラス及びマイナスと、その名前も変更した。本結果は研究目的にあった、ルート系と超平面配置との関係の研究を深めるものである。改訂された結果は、現在雑誌投稿中である。 続いて、平面直線配置に関する結果について述べる。私はある直線配置が与えられた場合、そこに属する直線及び、それに新しく付け加える直線と元の配置との交点数を、元の配置の特性多項式に代入すると値が非負となることを発見した。特に後者は、配置の組み合わせ論的情報が、次に付け加えられる直線の幾何学的情報を制限するという意味で、極めて重要である。更に代入値がゼロとなる場合は、配置が自由となることも証明した。これは寺尾氏によって30年ほど前に示された加除定理の一般化である。これは、自由配置の形を決定するという本研究目的における大きな進歩であり、直線配置のペアの自由性を組み合わせ論で特徴づけることにも成功している。本結果は、現在雑誌投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究目的は、おおむね順調に進展していると考える。以下に理由を記述する。 まず、当初の目的を若干先取りしてはいるが、最終的な目標であるコクセター群・ルート系と超平面配置の関係、及び自由配置の幾何学及びベクトル束の利用に関連して、着実な進展があったことがその理由である。 特に後者に関しては、平面上の直線配置の交点数という、まさに超平面配置の幾何学の最もシンプルで基礎的な部分について、対数的ベクトル場の自由性と指標の理論を通じて興味深い進展が得られた。これは従来の自由配置の理解を大きく転換させるものであり、極めて重要である。またその証明においては、対数的ベクトル場を直線に制限した場合の指標の評価が重要な役割を果たすが、これは即ち射影平面上の階数2のベクトル束を射影直線に制限した場合の分裂問題と同値である。よって目的に記載した、代数幾何学的、あるいはベクトル束的な見地が大きな役割を果たしており、私の研究計画が妥当かつ有用なものであったことを証明していると言える。 また、前者に関しても上述した研究以外に、ルート系のより深い理解を超平面配置、特に自由配置の立場から追及する研究が進展中であり、近々研究成果をまとめ上げられる予定である。その意味でも、本年度の研究の達成状況は、最終的な目的までの距離を測った場合、おおむね順調である、と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策であるが、平成24年度の研究推進が比較的順調に進んだため、このままの方針で研究をより深化させてゆこうと考えている。以下、具体的に推進方策を述べる。 まず24年度に達成した、代数幾何・ベクトル場の手法を用いた直線配置に関する研究を更に推進する方向で検討している。この研究成果は、高校生にも理解・計算ができる成果でありながら、その証明に最新の理論を用いた点が極めて興味深い。ただし、上述した直線配置の特性多項式の判別式が負の場合は、主張が自明となってしまう、という弱点も内包されていた。そこで、組み合わせ論とのより深い融合といった新しい観点を取り入れることでこの弱点を改良し、自由直線配置のさらなる深い幾何学的理解へとつなげたい。 続いてルート系やワイル配置と超平面配置との関連に関する研究の推進方策について述べる。これも上述した通り、現在、ルート系の基本的な構造である高さを軸として、ルート系を超平面配置及び自由配置を用いて統一的に理解する方法について、研究が進展している。本研究は、ルート系の古典的な定理である双対分割定理を、超平面配置の言葉を用いて幾何学的に一般化し、別証明を与えるのみならず、新たな見地からの深い理解へと導くものである。その意義は大きく、現在の方向性のままで研究を推進することで、25年度中の達成を目指したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、主に研究打ち合わせ及び発表のための旅費として、研究費を使用することを考えている。 まず6月に、アメリカ数学会とルーマニア数学会が共同して開催する研究集会がルーマニアのアルバユリアで開催されるが、そこでの講演を依頼されている。本研究集会には、当該研究分野における第一人者が多く集うことが予定されており、そのような場所での研究成果発表は大変重要であり、同時に他の参加者の講演を聞くこと、および彼らと情報交換をすることは、本研究目的の達成において大変重要な意味を持つ。また、2014年1月にも、アメリカ合衆国で開催される研究集会において情報収集及び交換を行う可能性があり、そのための旅費としても研究費を使用することを考えている。 研究打ち合わせについては、現在ルート系に関する共同研究を行っている寺尾氏と、北海道大学において数度研究打ち合わせを行う予定である。同氏との打ち合わせによって私はこれまでに、いくつかの共同研究論文や新たな知見など、多くのものを得ることができている。よってこの打ち合わせは研究目的達成のための極めて重要なプロセスであると考えている。
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Research Products
(6 results)