2014 Fiscal Year Research-status Report
超平面配置の自由性の多角的解析と関連する幾何学の研究
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24740012
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
阿部 拓郎 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (50435971)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 超平面配置 / 自由配置 / ベクトル束 / 分裂型 / 自由配置の剰余定理 / 剰余的自由配置 / ワイル群 / ルート系 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度も、研究計画において大きな進展を得た。大きく分けて五つの業績があげられるが、多岐にわたるため、以下、うち二つの業績に的を絞って、具体的に内容を述べる。
まず、Daniele Faenzi氏及びJean Valles氏との国際共同研究として、A2型のワイル配置のある変形族に対応する対数的ベクトル場がSteiner束と呼ばれる、特徴的なものであることを示し、さらにその不安定直線をすべて決定することに成功した。これは代数幾何的視点から見れば、射影平面上の安定束の分裂型の、ある種の完全決定といえ、極めて斬新な結果である。また、本研究計画の目標たる、代数幾何的手法の導入が成功を収めた意味で、計画における着実な進展である、といえる。
次に私個人の研究として、超平面配置における剰余定理の証明及び、剰余的自由配置の導入があげられる。前者は、自由配置構成において、その1980年における導入以来中心的な役割を果たしている加除定理を発展させたものである。端的に言うと、補空間のポアンカレ多項式が、制限した配置のそれで割り切れることが、自由性と深く関わっていることを、剰余定理は主張する。これは、自由性という代数的な情報が、ポアンカレ多項式の剰余という位相的、あるいは組み合わせ論的情報から決定されるケースが非常に多いことを示唆する、画期的な定理である。さらにこの定理を用いて、古典的に重要な帰納的自由配置を含み、かつそれより真に大きい自由配置のクラスとして、剰余的自由配置を導入した。この剰余的自由配置においては、自由性が組み合わせ論的に決定される、と主張する、いわゆる寺尾予想が成立する。また、Recursively free配置の多くやShi配置もこのクラスに属するなど、様々な発展がみられており、これらの結果は、自由配置研究における大きな進展であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の進展を具体的に数字で表すならば、本研究計画に関連する論文が三本アクセプト・出版され、また新しく五本のプレプリントを公開した。また、本年度は海外での国際研究集会で四度、国内の国際研究集会で四度、本研究計画に関連する内容について講演をするなど、研究結果の発信も極めて順調であった。このように数字的に見ても、その順調な進展具合がうかがえる。
研究計画の具体的な進展内容についてであるが、代数幾何学の本理論への応用は、実績概要欄にある通り、理想的な状況で結実されたといえる。さらに字数の都合上、実績欄には記載できなかったが、Ish配置と呼ばれる、一般化されたCatalan数などと関連の深い配置の自由性の証明や、複素射影平面中の配置の自由性の組み合わせ論的性質を、本数が12本以下の場合にすべて調べ上げ、孤立した自由配置のうち本数が最小のものを決定するなど、大きな進展をあげている。
さらに特筆すべきは、実績欄に詳述した、自由性に関する剰余定理の発見である。これにより、今までその自由性が組み合わせ論的であるか容易に判定できなかった多くの配置、たとえばShi配置、31型のunitary reflection groupに対応する配置、intermediate配置などが、実際は組み合わせ論的に自由であることが、初めて証明された。この剰余定理は、これ以外にも多くの応用を持ち、また今後の発展も期待される。その意味で、超平面配置の自由性理論、とくに寺尾予想に関連した分野において、本質的な進展をもたらす結果であると考えている。これらから総合的に判断して、本研究計画は当初の計画以上に進展していると結論付けたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、本研究計画の最終年度でもあるため、研究の総括及び、次の研究計画策定に向けた新規開拓を実施する。
まず、平成26年度の研究の中で最も重要な、剰余定理をさらに深く理解するところから始める。どのような配置が剰余的自由配置であるかは、まだまだ研究・計算を実施する余地の大きい、重要な問題である。これについては、unitary reflection配置について、近年計算機を用いて目覚ましい結果を残している、ドイツの研究者たちと共同で実施する(うち一名とはすでに共同研究の経験あり)。個人的には、知られている多くの自由配置は剰余的であり、ゆえにその自由性は組み合わせ論的である、と予想している。とくに重要な、Catalan型配置のそれについて、注力して研究を行いたい。
さらに、ルート系と関連する超平面配置の幾何学について、より深く研究を進める。近年、William Slofstra氏により、ルート系の反転配置と呼ばれる、ワイル群の元から定まる超平面配置が精力的に研究されている。この研究は、私が平成25年度に、寺尾宏明氏らと共同で証明した、イデアル配置の自由性と深くかかわっている対象である。一般に超平面配置は、ワイル群中の鏡映との関係は明確であるものの、それ以外の一般の元との関係は明確でないことが多い。しかしこの反転配置は、ダイレクトにワイル群と超平面配置、さらには関連する様々な幾何学を統一的に研究できる場を与えてくれるものであり、個人的に注目している。この、反転配置とワイル群との関係を中心に、超平面配置の自由性と絡めてその幾何学を探求してゆきたい。
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Causes of Carryover |
実績欄にも記載の通り、平成25年度に続いて平成26年度も、研究は予想以上に進展した。特に、直線配置の自由性を幾何学的に理解する結果が、多くの分野の研究者にもわかりやすい結果として、評価を受けている。そのため、国内外の多くの、それも様々な研究者から講演に招待される回数が増加した。結果、予定していた研究成果発表のための旅費の節減へとつながり、次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度の末に完成した、剰余定理に関する論文は、自由配置研究及び特異点論などにおける、極めて重要な進展である。よって、平成27年度はこの結果を積極的に情報発信し、認知度を高めるとともに、関連する国内・国際共同研究を推進する必要がある。そこで平成27年度は、さらに積極的に研究成果の発信に、科研費を用いる。
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Research Products
(15 results)