2012 Fiscal Year Research-status Report
ゲーム理論において現れる不連続な非線形項を持つ放物型方程式系の研究
Project/Area Number |
24740083
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
出口 英生 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (30432115)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ゲーム理論 / 放物型方程式 / 不連続な非線形項 / 安定性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、空間支配による均衡選択の基準を調べ、他のアプローチとの比較を行うことである。ゲーム理論において、ナッシュ均衡の概念はゲームの解概念として重要な役割を果たしてきたが、複数のナッシュ均衡が存在する場合、プレイヤーはどのナッシュ均衡をプレイすべきか?という問題に直面する。これを均衡選択の問題という。この問題を扱うために、Hofbauer(1999)は、プレイヤーのランダムな移動を組み込む形で最適反応動学(一部のプレイヤーが現状に対する最適な戦略をとることで社会が動いていくという動学)を修正し、ナッシュ均衡のコンパクト開位相の意味での漸近安定性を用いて空間支配の概念を提案した。ナッシュ均衡が空間支配的であるとは、初期時刻に空間の大部分で他の均衡より優勢であれば、時間無限大でそれは全空間上で支配的となるということを意味する。 戦略数2の2人ゲームに対する均衡選択の重要な概念として、HarsanyiとSelten(1988)の危険支配の概念がある。ナッシュ均衡が危険支配的であるとは、ナッシュ均衡が実現しないかもしれないというプレイヤー共有のリスクが最小の状態であることを意味する。戦略数2の2人ゲームに対して、空間支配による均衡選択の基準は危険支配のそれと一致する。また、危険支配の概念の戦略数nの対称2人ゲームへの一般化として1/2支配の概念があるが、1/2支配的なナッシュ均衡は空間支配的であることが知られている。しかしながら、1/2支配的なナッシュ均衡を持たないゲームに対する空間支配による均衡選択の基準はまだ知られていない。 そこで、本年度は、1/2支配的なナッシュ均衡を持たない戦略数nの対称2人ゲームに対する空間支配性について研究を行った。特に、n=3の場合について考察し、1/2支配的でないナッシュ均衡が空間支配的となるための条件(空間支配的とならないための条件)を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1/2支配は強い概念であり、戦略数nの対称2人ゲームの多くは1/2支配的なナッシュ均衡を持たない。このようなゲームに対する空間支配性について研究し、ナッシュ均衡が空間支配的となるための条件(空間支配的とならないための条件)を得ることに成功した。このことから、研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
戦略数nの2人協調ゲームのあるクラスに対して一般に受け入れられた均衡選択の基準は、最大のナッシュ積をもつナッシュ均衡が好ましいというナッシュ積に基づくものである。このナッシュ積に基づく均衡選択の基準は危険支配の概念の拡張となっているので、最大のナッシュ積をもつナッシュ均衡が空間支配的となることが予想される。このことを念頭に置いて研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
偏微分方程式論とゲーム理論関連の図書の購入、出張先での論文作成やプレゼンテーションのためのノートパソコンの購入を予定している。また、国内外での成果発表や研究打ち合わせのための旅費を予定している。
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