2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24740144
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐々木 健志 筑波大学, 計算科学研究センター, 研究員 (80457134)
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Keywords | ストレンジネス / バリオン間相互作用 / 格子QCD / 量子色力学 / 理論核物理 |
Research Abstract |
本研究の目的は、強い相互作用の基礎理論である量子色力学(QCD)から、実験的情報が非常に限られているストレンジネスS=-2のバリオン2体系の相互作用を直接求め、Λ粒子を2個含む安定な原子核(ダブルΛハイパー核)の存在範囲に関する予言や、ストレンジクォークを2個含んだ6個のクォーク状態であるH-ダイバリオンの存在可能性に関する提言を与える事にある。S=-2の2つのバリオン系は現在稼働中のJ-PARCにおける核物理研究の主要テーマとの直結しており、実験的研究が着々と進む一方で、ΛΛ相互作用の理論的不定性により、ダブルΛハイパー核の構造研究がなかなか進まないという現状がある。このような状況を打破するためにも、格子QCDによるΛΛ相互作用の決定が待たれる。 平成25年度は、PACS-CSグループにより作成されたゲージ配位のうちで、比較的重たいクォーク質量を与える配位を利用し、ΛΛ状態を含むS=-2の2バリオン系の波動関数を系統的に計算し、結合チャンネルを考慮したポテンシャルを導出し検証を行った。 結合チャンネルを考慮したΛΛ相互作用の結果は、短距離で斥力的、長距離で弱い引力を持つ事が今回の研究により明らかになった。この相互作用は、クォークの質量が軽くなるにつれて斥力部分が成長し、引力的な相互作用部分が非常に弱くなってゆく様子が見られた。この結果として、結合チャンネルを経由して引力を稼がない限りダブルΛハイパー核を構成する事が非常に難しいという事が考察される。 また、現実世界より重たいクォーク質量の世界でのH-ダイバリオンの存在形態についての結果についての考察として、この状態はクォークの内部自由度に関する対称性の破れに伴い、束縛状態から共鳴状態に移行していく様子を明らかにすることができた。
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