2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24740160
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
日影 千秋 名古屋大学, 基礎理論研究センター, 特任助教 (00623555)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 宇宙大構造 / 重力レンズ / 初期ゆらぎの非ガウス性 / ダークマター / ニュートリノ質量 / 修正重力理論 |
Research Abstract |
1. 銀河赤方偏移サーベイを用いた宇宙論解析において、大きな系統誤差の要因となる、銀河分布と質量分布の間の不定性を取り除く研究を行った。特に、サテライト銀河がハロー中心の周りを運動することによって生じる赤方偏移歪み"Finger-of-God"の不定性を、重力レンズ情報を組み合わせることで、大きく減らすことに成功した。スローン・デジタル・スカイ・サーベイの明るく赤い銀河(LRG)サンプルと、背景銀河の重力レンズ歪みとの相互相関をとり、ハローの質量中心からずれたサテライト銀河の割合を測ることで、 Finger-of-Godの大きさを制限した。本研究の結果を使うことで、Finger-of-Godの系統誤差が全く分からない場合に比べて、宇宙大構造の成長率や、ニュートリノ質量の測定・系統誤差を大きく減らすことが可能である。 2. LRGをホストするダークマターハローが、 星形成率がピークとなる赤方偏移2以前に既に形成された質量の重いハローであるとすれば、 LRGのクラスタリングの性質を、非常に良く説明できることがわかった。これまでは、LRGとハローの対応関係を記述するのに、いくつものパラメターが必要であったが、今回はフリーパラメターなしにクラスタリングの性質を非常にうまく記述することができる。今回の発見は、明るく赤い銀河の形成・進化過程を知る上で大きな手がかりを与えたとともに、LRGをターゲットとする銀河サーベイの精密な擬似カタログの作成が可能となる。 3. WMAP衛星のCMB温度ゆらぎの観測データを使い、初期ゆらぎの非ガウス性の大きさを制限した。特に、初期ゆらぎの3次(バイスペクトル),4次(トリスペクトル)の非ガウス性を、構造のトポロジーを測るミンコフスキー汎関数を使って、制限することに初めて成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度の研究計画に記載した、(1)数値シミュレーションを使ったサブハロー運動の解析、および、(2)SDSS重力レンズ情報、測光サンプルを使ったLRGの動径分布測定、に関して論文としてまとめることができた。また、科研費によって購入したPCクラスターを使い、スローン・デジタル・スカイサーベイの観測データを用いた宇宙論解析に関する準備が着実に進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の記載の通り、今後は、明るく赤い銀河のサンプルの模擬カタログを大規模数値シミュレーションを使って作成し、理論モデルの精密化を行う。そして、スローン・デジタル・スカイサーベイの観測データを使った宇宙論解析を行い、ニュートリノ質量の測定や、構造形成の成長率の制限を行い、重力モデルのテストを行う。現在行われている、すばる望遠鏡を用いた分光サーベイ計画FastSoundの銀河サンプルを使い、高赤方偏移(z=1.3)での構造形成の成長率の測定を行う。また、青い銀河とダークマターハローの対応関係を調べ、すばる望遠鏡を用いた大規模撮像・分光サーベイ、Sumireプロジェクトに向けて、精密な理論モデルの構築を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、研究に使用するサーバーの購入額を当初の予定より、30万円ほど抑えることができた。そこで、それを次年度へ繰越し、次年度に請求予定の額と合わせた合計110万円の研究費は、主に、国内外での研究打ち合わせ、学会での発表のための旅費に用いる。より一層研究を深めるとともに、国内外へ研究を発信していく。 国内旅費として、日本天文学会(年2回)での研究発表(10万円)、数物連携宇宙研究機構にて、高田昌広教授らとの研究打ち合わせ(10万円)に用いる。また、外国旅費として、米国プリンストン大学およびプリンストン高等研究所に1-2週間滞在し、スパーゲル教授、ザルダリアーガ教授と研究打ち合わせ(40万)、独国マックスプランク研究所に1-2週間滞在し、小松英一郎教授との研究打ち合わせを行う(30万)。また、研究発表のため、国際会議での発表も、より積極的に行う予定である(20万)。
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