2012 Fiscal Year Research-status Report
宇宙マイクロ波背景放射偏光観測のための広帯域反射防止膜の開発
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24740182
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
松村 知岳 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 特任助教 (70625003)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 光学素子・装置・材料 / 宇宙物理(実験) |
Research Abstract |
本研究は宇宙マイクロ波背景放射の観測のためのミリ波帯で用いる光学素子に広帯域反射防止膜を施す方法の開発として開発の研究として申請している。 宇宙マイクロ波背景放射の測定では、測定するシグナルが微弱なために、屈折光学素子(レンズ、フィルター、波長板等)を極低温に冷やす必要がある。光学素子は誘電率を持つために、表面によって反射が置き、その結果入射シグナルをロスしてしまう。これを解決するために、表面にコーティングを施し反射防止膜としてある特定の周波数にて反射を抑えることが従来の解決法であった。 しかし、極低温でのコーティングは材料の膨張率の違いにより剥がれてしまうことが従来からの問題であり、これを解決するために、コーティングではなく加工による反射防止膜の生成を行うことで剥がれてしまう問題を解決することを本研究で提案している。 現在、加工及び比較のための従来型コーティングによる反射防止膜のプロトタイプの作成、及びその評価システムの構築を行っている。すでに、加工によるプロトタイプの作成、および評価がスタートしており、理論から期待される反射防止膜の結果と矛盾のない結果が得られだしている。また、比較のために従来型のコーティングに関しても、波長に対して1/100程度の精度でコーティングが可能となるコーティングの技術を確立した。 評価のための測定系についても、高エネルギー加速器研究機構にある70GHzから170GHzの測定を行える装置を、本研究のサンプルのための透過及び偏光測定を可能とするよう改良し、結果として、サンプルの誘電率及び誘電損失の測定が行えるようになり、現在サンプルの透過および偏光を液体窒素温度で冷やした状態で測定を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は宇宙マイクロ波背景放射の観測のためのミリ波帯で用いる光学素子に広帯域反射防止膜を施す方法の開発として開発の研究として申請している。 現在、反射防止膜のプロトタイプの作成を行い、その評価システムの構築を行っている。ミリ波にて加工性がよいRexoliteという材料を用いることを前提に、加工による反射防止膜の形状のついてシミュレーションにより最適化を行い、そのデザインに基づき加工を行った。また同時に従来用いられるコーティングによる反射防止膜を作り、その性能の評価の比較を行う実験をスタートさせている。 加工方法については、高エネルギー加速器研究機構にあるDISCOウエハー裁断機を用いたプロトタイプの作成の可能性を検討しており、すでに簡単か加工については作成可能であることを示した。また、精密加工を専門とする業者にもプロトタイプ作成の可能性を探っており、すでに必要な加工精度が出せる業者を見つけ作成の検討を進めている。 また、従来型のコーティングに関しても、波長に対して1/100程度の精度でコーティングが可能となるコーティングの技術を確立した。 光学素子に反射防止膜を行うためには、光学素子そのものの評価が重要になり、その光学素子の特性に会わせて反射防止膜を生成する。本研究の一環として、反射防止膜だけではなく光学素子の特性を測定するために、高エネルギー加速器研究機構にある70GHzから170GHzの透過測定を行える装置を、本研究のサンプルのための透過測定ができるように改良した。また、こうした測定はサンプルを液体窒素温度で冷やした状態で測定することができるようにも改良を行った。既に得たデータより、Rexoliteを用いた加工による反射防止膜は理論から期待される透過特性と矛盾がないことを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
宇宙マイクロ波背景放射のための反射防止膜は、広帯域で高い透過性をもち、かつ偏光状態に対して影響を与えないことが大切である。 次年度は反射防止膜の試作品のための、シミュレーション、作成、また評価システムの構築に多くの時間を割いた。特に光学材料Rexoliteはミリ波で高い透過性をしめし、また加工性がよいので、反射防止膜をRexoliteという材料に加工し評価を行い、物理的な理解を深めた。 次年度は引き続き、このRexoliteに加工した反射防止膜の評価を透過だけに限らず、偏光状態への影響に対しても行う予定である。また、同様な加工をミリ波光学フィルター及びレンズ材料に行い、より実際の実験に用いることができる試作品を作成する予定である。具体的にはアルミナ、そしてシリコン等の材料に対して反射防止膜加工を行う予定である。 また、評価項目としてこれまでは透過により、反射防止膜ができているかについて測定を行ってきたが、これに加えサンプルを回転することにより偏光特性があるか、また加工により望まない異方性が発生していないかの評価も行う予定である。現在の測定システムは一回のスペクトル測定に数時間かかり、より多くのサンプルを測定するためにはシステムを自動化することが大切になる。具体的には、本年度購入した自動可動ステージをLabViewでコントロールすることで、測定の効率を上げ、より精密な測定を多くのサンプルに対して行うようにする予定である。 次年度後半にはRexoliteおよびアルミナ、シリコンへのサンプルに対して加工、評価を行い、測定結果を査読論文としてまとめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の予算の中で、2,060,385円ほどは繰り越した。これは、アルミナやシリコンへの加工が可能な業者を見つけたものの、加工費が高額であるために、加工を行う前に自前で簡単な加工のテストや、また加工しやすい部材Rexoliteにて物理的な理解を深めることを優先したためである。 次年度は、今年度の理解を元に、光学サンプル部材(アルミナ、シリコン、Rexolite)の購入費として125万円。また業者(芝技研)にお願いする加工費として100万円。高エネルギー加速器研究機構で保有するDISCO社のウエハー裁断機のための砥石を25万円。最後に、結果報告のための旅費として30万円の使用を予定している。
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