2012 Fiscal Year Research-status Report
砂丘を越えて沿岸低地を遡上する巨大津波からの堆積モデル構築
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24740341
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
高清水 康博 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (10446370)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 津波堆積物 / AMSファブリック / 古流向解析 / 粒度分析 / 2011年(平成23年)東北地方太平洋沖地震 / 17世紀巨大津波 / 胆振 / 東北地方 |
Research Abstract |
砂丘を乗り越えて沿岸低地を遡上する津波からの堆積モデルを提案することを目的として,①2011年(平成23年)東北地方太平洋沖地震による巨大津波の堆積物と②北海道西部太平洋岸から確認されたトリガー不明17世紀巨大津波の堆積物の研究を進めた. 1.東北地方太平洋岸地域 陸前高田市の沿岸地域(いわゆる“高田の松原”付近)において現地調査を行った.この地域では沿岸の砂丘部分を津波が乗り越えた際に,強い侵食作用が発生したため,浜堤域はほとんど失われ,津波来襲前に陸域だったところが海域となった.この海域部分から津波堆積物と考えられる地層を塩ビパイプを用いた簡易コアにより採取した.計6本の試料(コア長:34cm,25cm,45.5cm,173cm,47.5cm,および99.5cm)を定方位不攪乱で採取した.これらの試料は,実験室に持ち帰った後,塩ビパイプを開いて整形し,写真撮影および記載を行った.その後,今回最も連続した試料を採取できた173cmコアについて,帯磁率異方性を測定するための7ccキューブによる試料採取を行い,さらに1cm間隔で採取した試料の粒度分析を実施した.また,仙台平野地域で採取した定方位不攪乱試料についても,試料の整形,写真撮影および記載をし,帯磁率異方性を測定するために試料採取を行った.これらの試料のAMSファブリックの測定を行った. 2.北海道西部太平洋岸地域 日高海岸地域および胆振海岸地域に分布する17世紀津波堆積物の定方位不攪乱試料の記載を行い,帯磁率異方性を測定するため7ccキューブによる試料採取を行った.帯磁率異方性の測定は次年度(平成25年度)に行う.また,研究対象とした17世紀津波堆積物の重要性を明らかにするために,北海道内における津波堆積物のレビューをし,総説を学術雑誌(地質学雑誌)に投稿した(現在,審査中).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的である「砂丘を乗り越えて沿岸低地を遡上する津波からの堆積モデルの提案」についての達成度は,概ね順調に進展していると判断した. 事前の予備研究から継続し,本研究を進めた結果,すでに本研究の目的の一部を論文として報告することができた(Takashimizu et al., 2012;髙清水ほか,2013).また,より詳細な堆積モデルの解明のために,仙台平野の巨大津波堆積物(3・11津波,貞観津波,および弥生津波の堆積物)の古流向解析を進めている(成果の一部は,次年度の日本堆積学会2013年千葉大会(4月,千葉大学)で発表).また,②北海道西部太平洋岸から確認されたトリガー不明17世紀巨大津波の堆積物の試料の記載を進め,最終年度に分析を行う準備を整えた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の実施項目に基づき,平成25年度においても砂丘を乗り越えて沿岸低地を遡上する津波からの堆積モデルを提案することを目的として,①2011年(平成23年)東北地方太平洋沖地震による巨大津波の堆積物と②北海道西部太平洋岸から確認されたトリガー不明17世紀巨大津波の堆積物の研究を進める. 【1.東北地方太平洋岸地域】:平成25年度では,まず採取した173cmコアのAMSファブリックの測定を行う.その後,コアの記載結果,粒度分析結果,およびAMSファブリック測定結果を総合的に解釈し,この173cmコアの形成過程を明らかにする.その上で残りの5本のコアの分析項目やサンプル採取計画を決定し,作業を進め,陸前高田市の沿岸地域(いわゆる“高田の松原”付近)における3・11津波による侵食・堆積作用の解明を目指す. 次に仙台平野地域で採取した定方位不攪乱試料については,AMSファブリックの測定結果の解析を進め,砂丘を乗り越えた後の津波の挙動についての堆積学的考察を行う.その後,得られた成果について公表を目指す. 【2.北海道西部太平洋岸地域】:平成25年度は,昨年度採取した定方位不攪乱試料のAMSファブリックの測定および粒度組成の解析を行う.これまでに得られている既存資料とあわせて,17世紀津波の遡上時の挙動解明を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究の推進方策に基づき,研究費の執行を予定している. 物品費(20万円):野外調査および分析用消耗品 旅費(50万円): 野外調査(宮城県・岩手県海岸地域,北海道胆振・日高海岸地域),AMSファブリック測定(京都府京田辺市同志社大学理工学部)および日本地質学会にて成果発表(宮城顯仙台市東北大学) 人件費・謝金:特に計上しない その他(30万円):放射性炭素年代測定(4試料)および投稿論文の英文校正
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Research Products
(5 results)