2012 Fiscal Year Research-status Report
太陽系初期の固体物質進化:彗星塵と小惑星物質の比較鉱物学
Project/Area Number |
24740358
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小松 睦美 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (50609732)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 隕石 / 炭素質コンドライト / 彗星塵 / 変成 |
Research Abstract |
アメリカNASAのStardust探査機による彗星ダスト粒子(C2067.2.112.1, C2067,2,113,1)について、詳細な電子顕微鏡分析を行った。その内一つの粒子(T112)のかんらん石は、星雲での凝縮にて形成されたAOA(アメーバ状かんらん石集合体)と呼ばれる始原隕石中にみられる物質と組成的に類似していることがわかった。しかしながら、彗星ダスト粒子のかんらん石は、隕石中のAOAかんらん石とは異なり、クロマイトと共存しており、凝縮後の2次的な加熱を経験した可能性が示唆された。 さらに、西アフリカ砂漠発見された隕石NWA1152などの始原隕石を分析した。AOAの特徴を手掛かりとして、それらの隕石の母天体の変成過程について議論した。その結果、NWA1152は熱変成をほとんど受けておらず、炭素質コンドライト種の中でも始原的であることを示した。また、AOA中の鉱物の化学的特徴と平衡凝縮計算モデルを合わせると、AOA以下の二つのトレンドを保存することを明らかにした。すなわち、①ほぼ全ての種類に含まれるAOAが約1250-1150Kの温度で星雲より凝縮②母天体を形成後、水質変成・続いて熱変成が生じたと考えられる。 以上の結果を、地球惑星科学連合大会(2012年5月20~25日)、Meteoritical Society Annual Meeting (2012年8月12-17日)、第45回南極隕石シンポジウム(2012年11月29-30日、国立極地研究所、東京)、The 45th Lunar and Planetary Science Conference (2013年3月18-23日、アメリカ、ヒューストン)にて発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、本研究は、太陽系外縁部を起源とする物質である彗星ダストと小惑星帯を故郷とする炭素質コンドライト構成物質の比較研究により両物質の形成過程をより具体化し明らかにすることで、太陽系星雲内での物質循環、及び微惑星形成までの熱史について詳細な条件を与えることである。 今年度は、彗星ダスト中にAOAに類似した粒子を入手し、詳細な記載を行った。彗星ダスト粒子は、隕石物質と類似した物質から構成されていることが従来の研究で証明されているが、隕石の重要な構成物質であるAOAに類似した粒子は発見されていなかった。本研究では、透過型電子顕微鏡分析により初めてAOA起源と考えられる粒子の詳細な記載を行った。本結果は彗星物質と隕石物質の起源の類似性をより高く示唆するものであるが、炭素質コンドライト中の様々な変成を受けた隕石中に含まれるAOAと比較したところ、彗星が2次的な変成を経験した可能性が示唆された。本研究では、彗星及び小惑星の母天体である小惑星の2次変成の環境をより詳しく明らかにするため、水質変成を受けた新たな隕石の分析と、分光分析とリモートセンシングデータからのアプローチを展開し始めたところである。 以上のことから、本年度の目標である彗星と小惑星の変成過程を検証するという計画は順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでのAOA起源の彗星ダスト粒子の鉱物学的研究から、彗星ダストが加熱を受けた形跡が確認された。今後は、2次的加熱の条件について考察するために、炭素質コンドライト隕石の分光分析を行う予定である。 本研究ではさらに、炭素質コンドライトの分光分析を行うことで、水質変成の度合いをより詳細に決定し、彗星の進化との関連性を議論する。炭素質コンドライトの分光スペクトルは、低アルベドに起因する分析・解析の困難さから、発表されているデータは非常に数が限られている 。また、そのほぼ全ては全岩を平均した粉末分光スペクトル分析によるもので、個々の岩石学的な特徴・すなわち水質変成の度合いとリンクはされていないのが現状である。 本研究では、初年度にフーリエ変換赤外分光高度計を導入し、地球産の鉱物について基礎データの取得に取り掛かった。今後は、実際の炭素質コンドライト隕石のデータを取得し、水質/熱変成の度合いにより統計的な分類を行う予定である。同時に、個々の岩石学的な特徴・すなわち水質変成の度合いとの分光スペクトルの比較研究から、水質変成の度合いをより詳細に決定し、小惑星と彗星の進化との関連性を明らかにしていく予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度は、フーリエ変換赤外分光高度計FT/IR-4100A(日本分光株式会社製)を導入した。次年度には、アタッチメント部FT/IR-4100Bの購入を予定している。惑星物質の分光スペクトルについては、小惑星のリモートセンシングは多くされているにも関わらず、それに対応する隕石の微小領域分光については殆ど研究が行われていない。本研究では、炭素質コンドライトの中でも、太陽系初期の鉱物凝縮時の情報を残している高温鉱物に着目した分光分析を行うことで、彗星および小惑星との新たな関連性が得られるはずと期待される。 これらの結果は、Japan Geoscience Union Meeting 2013 (2013年5月,千葉), The 76th Annual meeting of the Meteoritical Society (2013年7月, Canada), The 34th Symposium on Antarctic Meteorites (2013年11月, 東京)、The 45th Lunar and Planetary Science Conference (2014年3月, Houston, USA)にて発表を行う予定であり、本研究費からも旅費の支出を予定している。
|