2013 Fiscal Year Annual Research Report
作用誘導型量子分子動力学法による窒化ホウ素フラーレン成長機構の理論的研究
Project/Area Number |
24750018
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
太田 靖人 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (30447916)
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Keywords | 作用誘導型分子動力学計算法 / 窒化ホウ素 |
Research Abstract |
窒化ホウ素(BN)フラーレンは1998年に発見された比較的新しい籠状物質であるが、その特異な構造と、耐熱性,耐食性,絶縁性などの優れた物理化学特性から、医療や産業分野での多様な用途への応用が期待できる物質として注目されている。窒化ホウ素の籠状クラスターは窒化ホウ素の結晶に数百kVの高エネルギーの電子線を照射すると結晶表面に形成されることが報告されているが、その生成機構はよくわかっていない。そこで本研究では分子の構造変化の過程を原子レベルで追跡するために、変分原理に基づいて分子の動的なトラジェクトリーを計算するaction derived molecular dynamics (ADMD) 法に着目した。このADMD法に、MOPAC2012,density functional tight binding (DFTB),Gaussian03など分子系の電子状態計算を行う量子化学計算プログラムをドッキングさせ、化学結合の切断、再結合を伴う複雑な化学過程を追跡できる理論化学計算法を開発し、窒化ホウ素クラスターの構造変換過程に応用した。窒化ホウ素の電子線照射実験から結晶表面状に多数の格子欠損が生じることが知られているため、初期状態として欠損を含んだ平面型または半かご状の窒化ホウ素クラスターを設定し、この状態からかご状の窒化ホウ素クラスターへ変換する過程を取り扱った。その結果、欠損を含んだクラスターはその不安定な構造から安定構造に遷移する過程で、ポテンシャルエネルギーの放出が起こり、この放出された運動エネルギーがかご状の構造変化を促進することがわかった。また、かご状クラスターが形成される過程では4員環や5員環などが断続的に出現・消滅することもわかった。
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