2012 Fiscal Year Research-status Report
二量化、クラスタ構成、および膜受容体細胞内輸送に関する単一分子蛍光の研究
Project/Area Number |
24750029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
BIJU V・Pillai 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (60392651)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 上皮増殖因子受容体(EGFR) / 受容体の二量体化 / 受容体のクラスター形成 / 量子ドット (QD) / 細胞内輸送 |
Research Abstract |
本研究の目的は、上皮増殖因子受容体(EGFR)の二量体化、クラスター形成及び細胞内輸送の分子メカニズムを明らかにすることである。蛍光標識したEGFリガンドを用いてヒト肺腺癌細胞株H1650に過剰発現させたEGFRを活性化させ、生細胞でのEGF-EGFR複合体及びクラスター形成の様子を解析し研究を行った。初めに、ヒト リコンビナントEGFをBiotin-3-Sulfo NHS esterを用いてビオチン化し、その反応物をsephadex-G25カラムを用いてゲル濾過にて精製した。同様の方法で抗EGFR抗体のビオチン化を行い、ビオチン化EGFをストレプトアビジン標識CdSe/ZnS量子ドット(QD)と抱合反応させた。60%コンフルエンスまで培養したH1650細胞はリン酸緩衝液PBSで洗浄後、0.5 nM QD-EGF抱合体溶液を加え4℃にて反応させ、数回洗浄した。細胞の蛍光イメージングは反応直後からすぐに15分単位で観察を行った。添加直後の蛍光イメージは独立した蛍光のスポット(点)が見られ、QD-EGF-EGFR複合体によるものだと考えられた。しかしながら、我々は添加30分後には大きなクラスター様蛍光イメージを観察した。この予備実験から、EGFRのクラスター形成が添加30分以内に起こり、その15分後にはクラスターの細胞内輸送が始まっていることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EGFR単一分子及びそのクラスター自身そしてその細胞内輸送の観察は、概ね期待通りに進んでいる。EGFのビオチン化及びQD-EGF抱合反応によって、我々はがん細胞で効率的にEGFRを活性化することできた。単一分子蛍光イメージングを用いた実験は生細胞での蛍光標識したEGFRの濃度制御に有用であり、このような制御は細胞膜での個々のEGF-EGFR複合体やそのクラスターの検出に必須であった。今回の予備実験において、EGFR単一分子の検出及びクラスター形成や細胞内輸送を確認できる概要時間から、EGFRや他のGタンパク質共役受容体の二量体化やクラスター形成の機構解明に対する継続的な研究への有益な情報が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画は、時間分解蛍光イメージングやFRET解析を用いて、EGFRの二量体化やクラスター形成のキネティクスや細胞内輸送の評価である。特に、H1650細胞を用いた生細胞におけるEGFRの二量体化、クラスター形成及び細胞内輸送のキネティクスは、単一分子の蛍光強度と単一クラスターの蛍光強度に見られる時間変化との相関関係によって調べることができる。まず、H1650細胞におけるEGFRはQD標識性EGF及びCy5標識性抗EGFR抗体を異なった濃度で処理することによって活性化されるだろう。我々はEGFRの二量体化、クラスター形成及び細胞内輸送の程度は、活性化されたEGFRの数と直接関係していると仮説を立てた。クラスター形成のキネティクスや細胞内輸送に最適なクラスターサイズは、QDの蛍光強度の経時変化やQDからCy5への蛍光共鳴エネルギー遷移(FRET)、EGF濃度から直接導き出されるだろう。さらに、EGFRの発現レベル、クラスター形成率、クラスターの細胞内輸送量との関連は、EGFRを高発現するH1650細胞とマウス黒色腫(メラノーマ)細胞におけるEGFRの比較研究によって評価できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は主にCy5 dye、CdSe/ZnS量子ドット、汎用研究試薬、細胞培養培地、抗EGFR抗体、ヒトリコンビナントEGF、研究用消耗品の購入に使用する予定である。また、国内外の学会それぞれ一つずつ参加するために費用の一部を使用予定である。
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