2014 Fiscal Year Annual Research Report
直接的アリール化反応を基盤とするリビング重合系の開発
Project/Area Number |
24750088
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
脇岡 正幸 京都大学, 化学研究所, 助教 (50598844)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 直接的アリール化 / C-H結合切断 / 精密重合 / パラジウム触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
直接的アリール化反応を基盤とするリビング重合系の実現を目指し、まず、高活性な触媒を開発するための知見を収集した。その結果、アセテート架橋の多核錯体[PdAr(μ-O2CMe)(PPh3)]n (C1)が優れた反応中間体のモデルであり、2-メチルチオフェンとの反応により対応する直接的アリール化生成物を定量的に与えることを見出した。そして、錯体C1は、溶液中で単核錯体[PdAr(O2CMe-κ2O)(PPh3)] (C2) との平衡にあり、配位不飽和な錯体C2が真の活性種であることを明らかにした。 最終年度には、これらの知見に基づき2-ブロモ-3-ヘキシルチオフェン (1: ThBr) の重合を行い、リビング重合達成の可能性を探った。Pd[P(o-tolyl)3]2と1から調製した配位不飽和なチエニル錯体{PdThBr[P(o-tolyl)3]}2 (C3)を触媒として用いて重合を行った。その結果、P(2-Me2NC6H4)3 (L1) を添加して重合を行うと、リビング連鎖重合に特徴的な挙動を示すことがわかった。この場合、1の転化率が35%まで分子量の増加は緩慢であったが、転化率が35%を超えると直線的に分子量が増加した。すなわち、重合初期では1のオリゴマー化(逐次重合)が進行し、その後、そのオリゴマーが開始剤となって連鎖重合が進行していることがわかった。この連鎖重合の機構について、種々検討を行ったところ、リビング重合の一種である触媒移動型縮合重合と同様にring-walkingを伴う機構で進行しており、その機構の発現には、ある程度の鎖長を持ったP3HTの存在が必要であることが示唆された。また、以上の挙動はL1に特有な現象であり、その他の配位子を用いた反応では1の転化率が90%を超えるまでポリマー分子量は数百程度であった。すなわち、典型的な逐次重合の進行が観測された。
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