2012 Fiscal Year Research-status Report
Regio、stereo選択的な開環メタセシス重合を用いた生体適合性材料の創製
Project/Area Number |
24750097
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小林 慎吾 山形大学, 理工学研究科, 助教 (70625110)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 開環メタセシス重合 / 血液適合性材料 / regio選択的重合 / 定序性高分子 / Grubbs触媒 / 精密重合 |
Research Abstract |
当該研究課題では、高い血液適合性を発現するポリ(2-メトキシエチルアクリレート)(PMEA)と類似の側鎖官能基(アルコキシ基、エチレングリコール鎖、2-メトキシエチルエステル基)に着目し、側鎖官能基の構造と側鎖-側鎖間の炭素数、エチレングリコール鎖長、官能基の結合様式を変更することによる生体適合性の制御に関する研究を行っている。 現在までに、cis-シクロオクテンのアリル位にアルコキシ基(メトキシ基、2-メトキシエトキシ基、2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ基)、カルボン酸エステル類(2-メトキシエトキシカルボニル基)を有するモノマー4種の合成に成功し、第二世代Grubbs触媒を用いたROMPと、続く水素添加反応による高分子の合成を行った。いずれの置換基を導入した場合も、高度にregio、stereo選択的な重合が進行し、側鎖-側鎖間の炭素数が7に制御された高分子の合成に成功した。得られた高分子の物性について、接触角測定による親水性評価を行った結果、PMEAと同様に親水的な表面が形成されていることを確認した。また、得られた高分子の含水試料についてDSCを用いた評価を行った結果、エチレングリコールユニットを有する高分子では中間水の存在が確認され、血液適合性の発現が期待できる結果を得た。本研究の成果の一部については2012年11月に特許出願を行い、14件の学会発表(1件は招待講演)を行った。 今後は、さらに官能基の構造を変化させたモノマーの合成とregio選択的なROMPによる高分子合成に関する研究を継続し、高分子の一次構造制御を通じた中間水量の制御、生体適合性の制御に関する研究を継続していく予定である。また、実際にヒト血小板粘着試験などを行い、PMEAに代表される生体適合性材料が発現する生体適合性の発現要因について究明を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該研究課題の達成度としては、やや遅れが生じていると言わざるをえない。有機合成実験を行うための環境の整備が遅れ、実験室の確保が2012年8月、設備の導入が概ね完了したのが2012年10月となったため、合成実験を本格的に開始できる時期に遅延が生じた。このため、当初予定していた生体適合性評価(血液適合性評価:血小板粘着試験など)までを年度内に行うことができなかった。 高分子合成の点では、本研究で血液適合性材料として比較の対象に用いているポリ(2-メトキシエチルアクリレート)(PMEA)と類似の側鎖構造を有する高分子の合成を達成することはできたが、より高い血液適合性の発現が期待できるベタイン類などを導入した高分子の合成には至らず、この点において研究の進捗に遅れが生じていると考える。 生体適合性評価の点では、本研究課題を通じて合成した新規高分子について血液適合性評価を行う予定であったが、実際の研究開始の遅延により2013年3月末の時点で着手できていない。2013年4月から評価を開始する予定である。 全体を通じて、生体適合性評価の遅れにより、高分子構造と生体適合性の相関性や、高分子が生体適合性を発現する機構について考察するには至っておらず、2012年度中の目標としていた達成度には未達となった。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、2012年度に合成した高分子について、実際に血液適合性評価(血小板粘着試験など)を行い、今後のモノマー構造設計に反映できる情報の収集を最優先に進める。 また、2012年度中に得られたポリマー合成の結果から、更に様々な構造の官能基を導入できる可能性が見出されたため、さらに高い親水性、生体適合性を示すと考えられる官能基(アミド類、環状エステル類)の導入を試みるとともに、より高度なregio選択性を発現する重合系の探索と、生成したポリマーの生体適合性評価を合わせて進めていく予定である。 さらに、申請者が当該研究で基盤技術として用いているregio、stereo選択的な開環メタセシス重合に関連する研究が、申請者が以前所属していたMinnesota大学Hillmyer教授の研究グループから数報報告され、当該重合法の適用範囲がさらに拡張できる可能性が見出されたため、関連報告の結果を反映しつつ、当該研究での高分子合成を進めていく予定である。 加えて、高分子構造と生体適合性の関係についても、申請者が所属する山形大学田中賢教授のグループにおいて新たな知見が蓄積されつつあり、regio選択的な開環メタセシス重合を用いた新規高分子合成と基礎的な物性評価に上記の知見を反映し、実際に生体適合性材料への応用を指向した研究として推進していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(20 results)