2012 Fiscal Year Research-status Report
高精度モデリングに基づく不均一系オレフィン重合触媒の非経験的設計
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24750101
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
谷池 俊明 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 准教授 (50447687)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | Ziegler-Nattaオレフィン重合触媒 / 実験と計算科学の相互支援に基づく触媒設計 / 密度汎関数計算 / 高精度モデリング / コンピュータ予測 |
Research Abstract |
計算科学の発展は不均一系触媒の構造や反応機構に関する種々の実験結果に量子化学的な解釈を与えることに成功したが、計算科学を主導とした高性能触媒の非経験的設計は未だに実現されていない。一方、工業的なオレフィン重合の主翼を担う不均一系Ziegler-Natta触媒の性能向上において、新規ドナーの開発が切望されている。近年、我々は実験結果に裏打ちされた密度汎関数計算によって、種々の結果を統一的に説明可能な共吸着モデルを提唱した。本研究の目的は、この高精度モデルを更に洗練し、真に非経験的なドナー設計を史上初めて実現することである。 本年度は、各種のモノエステル系ドナー(安息香酸エチル、安息香酸メチル、ヘプタン酸エチル、プロピレン酸フェニル)を用いた触媒のプロピレン重合性能に関する実験結果[B. Liu et al., Macrmol. Symp. 2007, 260, 42.]を計算科学的に定量再現可能なモデルを提案することを第一目標とし、大規模な密度汎関数計算を行った。 不均一系触媒に代表される複合材料の性能を定量再現するに当っては、系に存在する全ての成分間の相互作用を適切なモデルで記述することが肝要である。具体的には、Ziegler-Natta触媒を構成するMgCl2, TiCl4, ドナー, アルキルアルミニウム間の相互作用を密度汎関数計算によって厳密に取り扱うことで、実験で得られた触媒活性が表面に吸着したドナーのアルキルアルミニウムによる脱離の活性化エネルギーによって、ポリプロピレンの立体構造が共吸着モデルの枠内で描写される活性表面構造の立体特異性(プロピレンのre面挿入とsi面挿入の活性化エネルギー差)によって、それぞれ定量的に再現可能であることが明らかとなった。これは、不均一系触媒の性能を第一原理的な計算科学に基づき定量再現した世界で初めての成功例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前項で述べたたように、「各種のモノエステル系ドナーを用いたZiegler-Natta触媒のプロピレン重合性能に関する実験結果を定量再現する」という初年度の目的を完全に達成した。さらに、平成25年度に予定していた、各種のジエステル系ドナーに関する実験、及び、計算に前倒しで着手することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、各種のジエステル系ドナー(フタル酸エステル、マロン酸エステル、コハク酸エステル、グルタン酸エステル及びこれらの誘導体を含む計13種)を用いたZiegler-Natta触媒の合成、化学組成分析、プロピレン重合性能評価(活性、立体構造、分子量及び分子量分布)を行い、前述した触媒構成成分に係る相互作用の全描写を考慮した網羅的な密度汎関数計算を行う。ジエステル系ドナーは、現行のプロピレン重合の大半を担う最重要なドナーであり、触媒の性能改良を目的とした近年の重要な発見もここに集中している。しかしながら、ドナーの構造と触媒性能の間の相関は、計算科学はおろか実験的にも全く明らかになっておらず、これを解明することが次年度の主目的である。本年度に扱ったモノエステル系ドナーと比較して、ジエステル系ドナーは官能基数の増加による吸着モードの複雑化、分子体積の増加による吸着子間相互作用(及び表面被覆率)に留意した計算を行う必要がある。以上の目的が達成されれば、不均一系触媒における計算化学的な触媒設計という夢を、実際の工業触媒の提案という具体的な形で証明することができると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に頂く予算の主な用途は、前項の実験を遂行するために必要な消耗品(ドナー、溶媒)と成果を国際学会で発表するための旅費である。特に後者に関しては、K. ZieglerとG. Nattaのノーベル賞受賞50年を記念して開催されるInternational Conference on the Reaction Engineering of Polyolefins (イタリア、フェラーラ)にて招待講演を行う予定である。
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Research Products
(4 results)