2012 Fiscal Year Research-status Report
π共役高分子への直接化学修飾による電子物性制御と高機能化
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24750115
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
木本 篤志 甲南大学, 理工学部, 講師 (40464797)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | π共役高分子 / カルバゾール / 有機薄膜太陽電池 |
Research Abstract |
本研究の基盤となる有機薄膜太陽電池用材料として、カルバゾール骨格を有するPCDTBTを合成した。通常は、より高い光電変換効率を目指すために、高分子量体を得ることが目的とされてきたが、今回はFriedel-Craftsアシル化反応が可能なある程度溶解性の高い高分子を新たに合成し、その光電変換特性と化学修飾について検討した。 高分子中のカルバゾールに化学修飾する前段階として、類似骨格を有するカルバゾール誘導体を別途合成し、検討した。本研究では、カルバゾールの3,6位への化学修飾を計画したが、その隣の2,7位に電子供与基が導入された誘導体に対する検討例は、知られていなかった。2012年度は、モデル物質およびカルバゾール系共重合体への3,6位への化学修飾条件の検討を中心に検討した。 求電子反応によるカルバゾール骨格のフッ素化反応については、モデル物質に対し、文献等に報告されている反応条件を検討したが、フッ素化は確認できなかった。今後、反応条件の最適化が必要である。 また、2,7位に電子供与基が導入された新規カルバゾール誘導体を合成し、3,6位へのアシル化反応を試みた。電子供与基であるチオエーテル基を2,7位に導入した誘導体を合成し、アシル化反応による3,6位への化学修飾を試みた。その結果、反応条件の検討により、目的とする修飾体を高収率で得ることに成功した。この反応を利用することで、当初予定になかった新規有機薄膜太陽電池用材料を得ることが出来た。 この検討により得られた知見を活用して、カルバゾール系共重合体へのアシル化反応を試みた。NMR測定より3,6位への化学修飾が確認できたが、その導入率は低く、反応条件の改善が必要となった。そこで、新たにカルバゾール系共重合体に類似の新しいモデル物質を合成し、反応条件を検討した。その結果、高い導入率を得られる反応条件を見出すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2012年度は9月に所属機関の変更があり、研究環境の再構築が必要となった。そのため、実験全体の進行が遅れたが、その間は文献調査を中心として、カルバゾールあるいはその類似化合物に対する化学修飾条件を調査することでカバーし、合成を行う環境が立ち上がった後に直ちに実行できる体制を整えた。そのため、研究計画の遅れを最小限にとどめ、研究の円滑な遂行を取り戻した。 研究計画としては、基盤となる高分子反応用π共役高分子材料の合成は完了しており、その光電変換特性も既に解明している。ポリカルバゾール交互共重合体に対する直接化学修飾法の確立に関しては、若干の遅れは見られるものの、低い化学修飾率ながらも成功している。さらにモデル反応の詳細な検討により、高い化学修飾を達成できる反応条件を既に見出している。これにより、異なる化学修飾率を有するポリカルバゾール交互共重合体を得ることが可能となり、化学修飾率と機能との相関を検討する準備は整っている。 以上により、全体の研究計画からは若干の遅れが見られるものの、本研究において最も重要かつ困難な点であるカルバゾール系共重合体への直接化学修飾を達成する反応条件を見出すことにはすでに成功しており、研究計画の遅れを取り戻すことは十分可能であるといえる。 また、現段階で未整備の太陽電池特性の評価に関しては外部で評価できる研究機関を確保しており、今後の研究には全く支障をきたさない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の知見をもとに、カルバゾール系共重合体へのFriedel-Craftsアシル化反応による化学修飾の高効率化を目指し、新たな反応条件を採用し、π共役高分子への化学修飾率を向上させるために、1H NMRを用いた検討を行う。今年度前半に電気化学測定装置を整備し、化学修飾によるモデル物質、およびπ共役高分子の電子状態変化について検討し、直接化学修飾法のメリットをより明確にする。特に、カルバゾール骨格の酸化還元電位の変化より、化学修飾率と電子状態変化の相関について詳細に検討する。 π共役高分子の直接機能化を目指して種々の機能性部位の導入を行う。具体的には単なるアルキル鎖だけではなく、フラーレン誘導体などを導入し、π共役高分子の高度な機能化を目指す。以上の検討で得られた機能化π共役高分子を電子ドナーとする有機薄膜太陽電池を作製し、化学構造、相分離構造と光電変換特性との相関について検討する。 並行して、カルバゾール骨格以外の芳香族骨格を有するπ共役高分子への化学修飾を達成するために、求電子置換反応されやすいチオフェン骨格を中心とした新規モノマーの探索も同時に行い、化学修飾と電子状態制御の相関について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度は所属機関の変更があり、当初の計画からの変更を余儀なくされた。そのため、支出予定にも変更が生じたために、未使用額が発生した。2013年度は研究環境が整ったので、繰り越し分は試薬などの消耗品の購入に充てる予定である。 2013年度分に関しては、消耗品費として、物質合成に関してはπ共役高分子を合成するための試薬、溶媒、器具の購入を予定している。太陽電池素子を作製・評価するために必要なフラーレン誘導体などの試薬、および、素子評価用の消耗品として透明電極基板、校正用セルの購入を予定している。また、年度前半にはπ共役高分子の電子状態を解明するために、別途外部予算にて電気化学測定装置を立ち上げるが、その際に必要不可欠な各種電極などの周辺消耗品、測定・解析用PCの購入を予定している。 国内学会(高分子討論会、太陽エネルギー学会、日本化学会)で研究成果を発表するための出張旅費として、約10万円、および国際会議(PAT2013)での研究成果の発表のために約30万円、合計約40万円の支出を予定している。 その他経費として、合成した高分子の分子量評価が物性との相関、高分子を同定するうえで必須であるためのGPC測定を予定している。本研究で扱うπ共役高分子は会合性が高いため、汎用的なGPC装置では測定が困難である。そのため、外部にて特殊な高温GPC測定を依頼で行うために約20万円の支出を予定している。
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