2012 Fiscal Year Research-status Report
ヘムオキシゲナーゼに関わる蛋白間相互作用およびCOによるシグナル伝達機構の解明
Project/Area Number |
24750169
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
原田 二朗 久留米大学, 医学部, 講師 (10373094)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | ヘム酵素 / ヘムオキシゲナーゼ / NMR緩和分散測定 / ヘム代謝 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
ヘムオキシゲナーゼ(HO)は、シトクロムP450還元酵素(CPR)やビリベルジン還元酵素など複数のタンパク質と協同して基質ヘムを分解する酵素である。一方、HOはガス状シグナル伝達物質と目される一酸化炭素(CO)を副産物として発生する生体内で唯一の酵素でもある。本研究課題では、HOに関わる酵素群との相互作用機構、および、COによるシグナル伝達機構を明らかとすることを目的としている。また研究の一環として、新しい手法であるNMR緩和分散測定法が、タンパク質の未知機能探索に有効であることを実証していく。 HOのNMR緩和分散測定を行ったところ、基質ヘム結合時に関連して、特定の3つの領域のアミノ酸に動き(揺らぎ)が観測された。それらの領域の内の1つは、ヘム結合部位よりも離れたタンパク質分子表面に位置し、これまでHOの機能と関連付けられてこなかった。よってその領域のアミノ酸が何故ヘム結合時に揺らぐのかを調べるために、全てについてAla置換変異体を作製し、その酵素活性を測定した。その結果、それぞれの変異体において野生型HOとは異なる活性が示され、これらアミノ酸は全て酵素機能に何かしら関与していることが分かった。このことにより、NMR緩和分散測定法はタンパク質の未知機能アミノ酸を検索するのに有効であると考えられた。 上記の変異体のうち、Phe79Alaは最も低い活性を示した。この変異体を詳細に調べていくと、Phe79はHOのヘム結合制御に関わることが分かった。一方、間接的ではあるが、近傍のArg185がCPRからの電子伝達に関与することが明らかとなった。HOの電子伝達に直接関わるアミノ酸残基が調べられたのは今回が初めてとなる。Phe79と周辺のアミノ酸がヘム結合時に揺らぐことが1つのアクションとなり、電子伝達を含めた一連の酵素反応が起こるモデルを現在考察している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度中に予定していた、NMR緩和分散測定法のタンパク質の未知機能検索ツールとしての有効性の実証については達成できたと考えている。また、HOの変異体解析から、HOとCPRとの相互作用と未知であった電子伝達系の解明においても大きく進展した。しかしながら、これらの研究成果の学術論文による報告が遅れており、その点を含めて上記の評価とした。現在、NMRの研究については論文を投稿中であり、また、相互作用・電子伝達系の解明については投稿準備中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度からの研究方針は、まずHOとビリベルジン還元酵素(BVR)との相互作用について調べていく予定である。この研究については、「研究実績の概要」にあるAla置換変異体の1つであるLeu77Alaが適していることを既に見出しており、この変異体を中心に解析を行っていく。また、HOとCPRとの相互作用についての研究は、結合力が弱い両タンパク質間での複合体形成を中心に行う予定である。これについても、適した変異体の候補をすでに見つけており、HO-CPR複合体を調製し、立体構造解析を目指した結晶化を検討する。 HOが反応副産物として発生するCOの生理機能の解明についても着手する予定である。過去の報告により、cGMPを合成する可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)が、ある一定のCOの存在下で活性を上昇させることが報告されている。生体内で唯一COを発生する酵素であるHOがこのsGCにどの様に関わるのかを調べていく。現在のこところ、ターゲットとしたい哺乳類のsGCは、安定した調製法が未だに構築されていない。一方で、昆虫のsGCについては、大腸菌内での発現・精製法が確認されているので、この方法を参考にし、哺乳類のsGCにおいても大腸菌内での発現系の構築を行いたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請時においては、老朽化している低圧クロマトグラフィー装置(FPLC)の買換えのため、設備備品費を計上していた。しかし、当講座設置の高速液体クロマトグラフィー装置(HPLC)の一部として使用していたUV-VIS検出器が突然故障し、使用不能となったため、この検出器の代替機を優先して購入した(525千円)。HPLCは酵素活性の際の生成物の検出や酵素の精製にも用いていため、この装置なしには研究計画の遂行は不可能であった。よって、代替機の購入はやむ負えない状況での判断であったと考えている。そのため、予定していたFPLCの買換えには予算が不足し、残りの781千円を次年度に繰り越している。FPLCが老朽化していることには現在でも変わりはなく、またこの装置も研究計画遂行には欠かせない機器である。よって、次年度に繰り越した資金は、本FPLC装置が故障した場合の対応に使用する予定である。状況に応じては、次年度予算と合わせて代替機の購入も検討する。
|
Research Products
(34 results)