2012 Fiscal Year Research-status Report
表面波・放射波複合光伝導アンテナのテラヘルツ波応答
Project/Area Number |
24760043
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高野 恵介 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 研究員 (70583102)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | テラヘルツ波工学 / メタマテリアル / テラヘルツ伝送線路 |
Research Abstract |
近年のインクジェット工法の発展により、数ミクロン幅の微細金属配線が基板上に直接描画できるようになっている。本年度は、テラヘルツ波光源および検出部とそれらをつなぐ伝送線路をインクジェット技術を用いて半導体基板上に描画し、テラヘルツ帯での動作を実証した。光源にパルス幅100 fsのモードロックチタンサファイアレーザーを用い、時間遅延ステージを経たレーザー光を同一基板上に対物レンズで集光できる光学系とした。超微細インクジェット工法を用いて、低温成長ガリウム砒素基板上に電磁波放射および検出用の2つの光伝導スイッチ部とそれらをつなぐ伝送線路を作製し、電磁波を検出できることを確認した。伝送線路はGaubou線と呼ばれる1次元の金属ワイヤーとし、10 mmの長さとした。10 mmのGaubou線においておよそ0.5 THzまでの電磁波の伝搬が可能であった。 Gaubou線近傍に分割リング共振器と呼ばれる微小共振器を配置した構造の電磁界シミュレーションを行い、バンドパスフィルタおよびバンドストップフィルタを設計した。超微細インクジェット工法を用いて、銀ナノペーストで構造を低温成長ガリウムヒ素上に作製し、テラヘルツ波伝搬特性を測定した。電磁界シミュレーションで、フィルタを構成する金属部分の電気伝導度を個体の銀の数十分の1に仮定すると実験結果を再現することがわかった。インクジェット工法では銀ナノペーストを用いて構造を作製するため、銀ナノ粒子径に起因する構造表面の粗さがテラヘルツ領域の実効的な電気伝導度を低下させていると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、超微細インクジェット工法を用いた同一基板上テラヘルツ放射検出チップの作製と、その評価のための光学系の構築を予定していた。その予定通り、超微細インクジェット工法を用いた試料によってテラヘルツ波の放射と検出が可能となっている。また、当初計画で遠方放射波検出のために光ファイバー結合型の光伝導アンテナを用いるとしていた。光ファイバー結合型の光伝導アンテナを用いた放射電磁波の検出系は構築したが、光ファイバー中の群速度分散を補償していないために、超短パルスレーザーのパルス幅が伸びて0.5THz以上の電磁波が検出できていないので改善する必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
ここまでの研究で、テラヘルツ波放射検出および導波路が同一基板上に配置された試料を超微細インクジェット工法で作製し評価できるようになった。このプロセスを利用して、波長に比べて微細な金属構造上を伝搬する疑似表面プラズモンポラリトン導波路を提案したい。特にインクジェット工法に特徴的な基板から立ち上がった準3次元構造を用いたテラヘルツ電磁波伝搬の報告はこれまでになく、その伝搬の特徴と利点を研究したい。また作製したアンテナの遠方放射特性を調べるために、ディテクター部を可動にする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品として、超微細インクジェット工法関連物品、ガリウム砒素基板および光学素子の購入を計画している。超微細インクジェット工法関連物品は、インクジェットノズル、金属ナノペーストインクなどを含み160,000円を予定している。ガリウム砒素基板の購入には200,000円程度を予定し、長作動距離対物レンズやファイバー分散補償のための負分散ミラーや可動ステージなど光学系部品のために640,000円を予定している。 導波路上の電磁波シミュレーション等について共同研究者との打ち合わせ、および研究成果発表のために200,000程度の旅費を計画している。 研究成果発表のための論文掲載費用として100,000円程度を予定している。
|