2012 Fiscal Year Research-status Report
自由電子レーザー励起によるレーザープラズマ光源の研究開発
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24760051
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
岩山 洋士 分子科学研究所, 極端紫外光研究施設, 助教 (50584570)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 原子 / イオン / 蛍光 / X線自由電子レーザー / プラズマ / クラスター |
Research Abstract |
パルス・クラスター源の開発及び斜入射分光器による蛍光スペクトル測定を行った。実験には、理化学研究所の極紫外自由電子レーザー(EUV-FEL) SCSSを利用した。希ガス・クラスターに波長51nmの高強度EUV-FEL光を照射し、その蛍光を斜入射分光器で波長10nm~100nmの範囲で計測した。 まずパルス・クラスター源は、新規に開発した。大きいクラスターを生成するために、液体窒素で冷却することができるパルス・バルブを開発し、数千原子から数万原子が凝縮した希ガス・クラスターをパルス的に噴出できるパルス・クラスター源を開発した。 蛍光測定では、まずArクラスターについて入射光51nmを用いて実験をした。蛍光スペクトルより、EUV-FEL照射されたArクラスターから最短20nmの蛍光が放出されていることが分かった。またこれら蛍光波長をNISTの原子準位に関するデーターベースと比較することで、最大6価に及ぶ励起多価Arイオンが多数生成していることがわかった。これは光照射によってクラスターがナノ・プラズマ化していることを示している。またクラスターサイズ依存性より、クラスター表面に高いイオン価数の励起多価イオンが生成されやすいことが分かった。また蛍光強度の入射FEL光強度依存性は非線形であり、多光子過程を経て励起多価イオンが生成されていることが示された。 このように、希ガス・クラスターに高強度EUV-FEL光を照射することで、入射光よりも短波長の蛍光を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高強度EUV-FEL光を照射された希ガス・クラスターからの蛍光について、クラスターサイズ依存性、元素依存性、光強度依存性などを詳細に測定及び解析を行った。その結果、クラスター表面で高いイオン価数の励起多価イオンが生成しやすく、小さいクラスターサイズほど短波長の蛍光を放出していることが分かった。また各元素の希ガス・クラスターについて測定した結果、XeやNeクラスターよりもArおよびKrクラスターのほうが強く発光していることが明らかになった。このように当初の研究実施計画で予定していたように、もっとも蛍光の効率が高いクラスターサイズ、元素などの実験条件を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は平成24年度に決定した実験条件に基づき、蛍光強度の励起原子密度依存性を計測することで超蛍光過程の観測を目指す。超蛍光過程では蛍光の放出角度分布の指向性が良くなるため、光軸上に斜入射分光器を設置する。強い非線形性を観測後、斜入射分光器が設置されていた場所に、X線ストリークカメラを取り付けて、超蛍光スペクトルの時間構造をshot-by-shotで測定する。AlやSnフィルターを適宜用いることにより、特定の波長の蛍光の割合を高くしながら計測を行う。観測されたスペクトルについて、ピーク強度、パルス幅、遅延時間の励起原子密度依存性を分析することにより、クラスターからの超蛍光の発生を確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試料用の高純度ガスボンベを購入する。また平成25年度に当研究分野の主たる国際学会のひとつである"International conference on Photonic, electronic and atomic collisions"が中国において開催されるため、その渡航費用を計上している。当学会にて装置開発に関する成果の公表と、最前線の装置技術に関する情報収集を行う。
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