2012 Fiscal Year Research-status Report
確率微分方程式に関する高精度数値計算法および精度保証法の確立とその応用
Project/Area Number |
24760064
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Future University-Hakodate |
Principal Investigator |
田中 健一郎 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 助教 (70610640)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 二重指数関数型(DE)公式 / DE-Sinc法 / 分布関数 |
Research Abstract |
本研究では確率過程の汎関数の条件付き期待値を計算することが主要な課題の一つである.そして,そのための有用な数値計算公式として二重指数関数型変換(DE変換)を用いた公式(DE公式)を用いるのが一つの方針であった.また,この期待値計算においては偏微分方程式による定式化を用いることもできるが,この方法においては,方程式を離散化して解くためのDE-Sinc法を用いる方針であった. 本研究では,将来的に数値計算結果の精度を厳密に評価することを目指しているため,数値計算公式の精度評価は重要な問題である.DE公式/DE-Sinc法については既に研究代表者らによって精度評価が与えられていたが,その公式を適用する場合の被積分関数に対する前提条件はやや厳しいものであった.実際,その前提条件よりも緩い条件のみを満たす関数に対しても,DE公式/DE-Sinc法がある程度の精度を達成することが実験的に知られていた.このような場合に対する精度の解析は,前述の期待値計算などへの応用にとっては重要な問題である. 24年度は,まずこの問題に対する解析を行った.具体的には,定積分に対するDE公式,関数近似・不定積分公式に対するDE-Sinc法について,前述の実験的結果が数学的に説明できることを示した.この結果は,従来より広い範囲の関数に対してもDE公式/DE-Sinc法が実用上純分に有用であることを主張するものであり,公式のユーザーに利便性を提供するという観点からも有用なものである. 次に,期待値計算を行うために,積分公式の具体的な適用方法を考察した.本研究で想定している期待値計算は,主に金融派生商品の価格計算に現れるものだが,この計算には,確率分布の分布関数を特性関数から計算する形の定式化がある.そこで,この定式化に沿って,特異積分の現れない形で分布関数を計算する方法を提案した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書では,研究開始当初において多方面からのアプローチを想定しておく必要性から,以下のようなアプローチを検討していた;積分公式による期待値計算,確率微分方程式の離散化,確率微分方程式からの特性関数の導出,偏微分方程式(PDE)による定式化を用いた各種解法.なお,モンテカルロ法も方針としては考えているものの,計算精度を厳密に評価するという観点からは使用しにくいものであるため,優先的とはしていない. 24年度においては,「研究実績の概要」で述べた内容で論文発表や学会発表を行うと共に,これらのアプローチのうち高速・高精度計算に適した方法を吟味するため,先行研究調査および各方法の検討を進めた.その結果,大別して (1) 分布関数を計算し,その結果を用いて所望の条件付き期待値を求める方法,(2) 条件付き期待値の満たすPDEを,適切な境界条件のもとで解く方法 が有効であろうと判定できた.さらに(2)についてはより具体的に (2-1) Fourier変換によってPDEを時間発展型の常微分方程式(ODE)に変換して解く方法,(2-2) PDEを空間方向にDE-Sinc法で離散化し,近似的に有限次元のODEとして解く方法 が有力と思われた. このように方針がより限定的かつ明確にできたため,25年度以降,24年度に行った積分公式の研究を発展させ,目的の数値計算法が確立できる見通しが立てられたと考えている.実際,現在は(1)および(2-1)の双方に対して,Fourier変換の高精度計算法に基づく解法を考察中である.以上から,精度保証の研究開始は少し先になりそうではあるが,本研究の進展はおおむね順調であると評価している.
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Strategy for Future Research Activity |
「達成度」の項でも触れたとおり,今後は大別して (1) 分布関数を計算し,その結果を用いて所望の条件付き期待値を求める方法,(2) 条件付き期待値の満たすPDEを,適切な境界条件のもとで解く方法 について研究していく予定である.さらに(2)についてはより具体的に (2-1) Fourier変換によってPDEを時間発展型の常微分方程式(ODE)に変換して解く方法,(2-2) PDEを空間方向にDE-Sinc法で離散化し,近似的に有限次元のODEとして解く方法 を考える. まず(1)については,Fourier変換に基づく様々な方法が考案されている.これに対しては高速Fourier 変換(FFT)という高速計算法を利用することが可能であるため,今日では主要な方法の一つとなっている.そのため,Fourier変換の数値計算のために積分公式を用いることになる.このための公式は,Fourier変換用に考案されたDE公式を含めて幾つか考案されている.そこで本研究では,これらの比較検討や精度評価を通じて必要な改良を加え,有用な計算法を確立する. 次に(2)については,いずれも作用素の半群を利用した解法が可能になると考えられるが,前者(2-1)では解をFourier(逆)変換の形で表すことになるため,方針(1)で考案した方法およびFFTが利用できると考えられる.後者(2-2)は,DE-Sinc法による離散化を通じた解法が考えられる.高速化のためには,作用素の半群を離散化した場合に現れる行列の指数関数を高速高精度計算する必要があると考えられるが,一般の行列に対してはこれは難しい問題であるため,適切な方法を考案する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は,引き続き以下の物品・旅費を中心に研究費を使用する. [理論的考察に必要な物品] 微分方程式の理論や数値解法の専門書,近似理論の専門書や,研究論文の購入などに研究費を使用する. [数値計算に必要な物品] 24年度に購入したPCやソフトウェアの保守費用として研究費を使用する. [成果発表] 成果発表に必要な旅費や学会参加費の支払いなどのために研究費を使用する.また,論文投稿にかかる費用にも研究費を充てる.
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Research Products
(8 results)