2012 Fiscal Year Research-status Report
長繊維強化自己治癒セラミックスにおける損傷成長と自己治癒の競合関係の解明
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24760072
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
中尾 航 横浜国立大学, 工学研究院, 准教授 (60361870)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | インテリジェント材料 / 構造材料 / 破壊力学 / き裂 / 高温構造材料 / FRC |
Research Abstract |
本研究では,静応力が作用する環境下において,長繊維強化自己治癒セラミックスにおける力学場による損傷の成長と自己治癒による損傷の縮退の競合挙動を調査し,自己治癒材料の設計応力に関する考え方と決定指針について議論を行うことを目的とする。本研究では,材料強度学の観点から自己治癒材料研究を遂行することによって,新規材料開発ばかりに偏重し実用化が遅れている自己治癒材料研究を飛躍的に前進させることを目指す。 本年度は,長繊維強化自己治癒セラミックスにおける損傷の成長と縮退の競合関係の定量的な評価を可能とする実験手法を確立した。具体的には、油圧サーボ式強度試験機と高温炉を組み合わせた装置にSiC治具を用いてV型ノッチを設けた矩形試験片のV型ノッチに3点曲げによる荷重を加えることで実験を行った。試験片を実験温度まで昇温した後、一度所定の余荷重を加え、V型ノッチ底に予き裂を導入する。その後、所定の静応力を負荷した条件下で一定時間を保持を行う。一定時間保持後、試験荷重を一定速度で上昇させることで、試験片強度を測定した。 上記試験法を用いることで、1100℃における所定の静応力下での自己治癒による強度回復挙動の経時変化を測定した。その結果,一定時間内に強度が回復に向かう最大応力を限界負荷応力は,予き裂材強度の80%に当たる応力であることが分かった。また,この限界応力は自己治癒の生じない室温では,10時間ほどで試料を最終破壊へと至らせることも同時に分かった。以上の結果より,長繊維強化自己治癒セラミックスにおける損傷の成長と縮退の競合関係を定量的に測定している実証を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度までに,自己治癒可能な限界応力の温度依存性を測定終了している予定であったが、1100℃での結果しか得ることができなかった。しかしながら,実験手法も確立することが可能であり,また,平成25年度に実施予定の破壊エネルギーを変化させてき裂を導入する手法も確立することに成功していることから,計画の遂行に何ら問題ないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
実施計画どおり,自己治癒可能な限界応力の経時変化を測定し,また,き裂導入時の破壊エネルギーを変化させた状態での限界応力についても測定を行う。これらの知見を無次元化することで,自己治癒材料の設計応力のモデル式を提案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には、消耗品費の一部(\10,528)が残額として残っている。この残額を含め研究費の多くを,試験治具等の実験消耗品費として使用する。また,試験片の作製補助等の業務を行う実験補助者に対する謝金として使用する。成果がまとまり次第,国内外の関連する学協会において成果報告を行う予定であり,その旅費としても使用する予定である。
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