2013 Fiscal Year Research-status Report
地震動下における配管内乱流機構および配管振動機構の解明
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24760148
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Research Institution | The Institute of Applied Energy |
Principal Investigator |
木野 千晶 一般財団法人エネルギー総合工学研究所(原子力工学センター), その他部局等, 主任研究員 (40465977)
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Keywords | 配管振動解析 / 乱流 / 流体構造連成シミュレーション / 有限体積法 / 有限要素法 / Immersed Boundary法 / OpenFOAM |
Research Abstract |
本研究の目的は、流路壁面が複雑に振動・変形する条件下での乱流解析を実施し,地震動下の配管内乱流シミュレーションに適した乱流モデルを提案すると共に、提案モデルを用いた地震動下における配管の流体・構造連成シミュレーションにより大規模プラント配管系の振動機構および耐震性に関する知見を得ることである。 平成25年度においては、壁面が正弦波で変形する乱流シミュレーションを実施した。本シミュレーションを進める中で、壁面振動時に発生する数値誤差に起因した圧力振動が計算を不安定化させるという新たな課題が顕在化した。よって、これらの数値誤差を低減するため、壁面が変形した場合に生じる時間的不連続性を修正する手法を新たに考案し、シミュレーションを安定して実行できるようにした。本手法は、壁面の移動に伴って流体セルが構造セル(構造領域内に存在する流体セル)、構造セルが流体セルに変化する際に生じる数値誤差を修正したものである。構造セルは流体計算の対象から外れるため、前時刻に存在した流体セルがいきなり消失することとなり、運動量保存が崩れ圧力振動の要因となる。本手法はこのような時間的不連続性を改善するものである。本手法により、壁面振動を伴う乱流シミュレーションが安定して実行できるようになった。加えて、配管の固有振動数に影響を与える壁面圧力の変動周波数について検討をおこなった。本解析結果では、乱流に起因する圧力振動の影響は限定的であり、壁面振動の周波数が大きな影響を与えることを確認した。 また、構造解析コード(有限要素法)と流体解析コード(有限体積法)を用いて、Immersed Boundary法をベースとした連成手法を開発した。本技術を円柱の流動励起振動シミュレーションに適用し、正常に動作することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度においては、壁面が正弦波で変形する乱流シミュレーションの実施および壁面振動が乱流構造に与える影響の評価を計画していた。本シミュレーションを実施するに当たって、壁面周辺で生じる数値誤差に起因した圧力振動が大きな課題となった。これまでに、これらの数値誤差を低減する手法を開発し、乱流シミュレーションを安定的に実行できるようになった。これにより、配管の固有振動に影響を与える壁面圧力の変動に関する知見をおおむね取得することができた。 平成25年度の目標の一つであった、「最も高い精度で地震動下における乱流場を表現可能なLES乱流モデル」の選定には至っていないが、すでに複数のLESモデルを用いた乱流シミュレーションに着手済みであり、これらの議論に必要な乱流データを取得可能な技術は整っている。よって、最終年度中に適切なモデルを選定することは十分に可能である。また、最終年度の目標であった、Immersed Boundary法をベースとした流体構造連成手法の開発はすでに前倒しで完了している。 以上から、最終年度においては、当初の予定通り、これまでに得られた技術・知見を用いて地震動下の配管内乱流解析を実施し、乱流が配管の固有振動数に与える影響について検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度においては、これまでに開発されたシミュレーション手法を用いて、地震動下の配管内乱流シミュレーションを実施する。流体・構造連成手法に関しては、平成25年度において開発された、Immersed Boundary法をベースとした流体構造連成手法を用いる。また、年度前半において、壁面振動下における乱流解析を継続し、これまでに得られた知見を元に、適切な乱流モデルを選定するとともに、学会発表を通じてモデルの妥当性について議論する。併せて、本解析を実現するために開発された壁面周辺において発生する数値誤差に起因した圧力振動を低減する新規手法についての議論も継続する。 年度後半においては、これまでの議論を通じて選定された乱流モデルを用いた流体構造連成シミュレーションを実施する。振動条件としては、過去の地震動で得られた波形を用い、壁面の振動が配管内乱流構造に与える影響を評価するとともに、配管の固有振動数や振幅にどのような影響があるか議論する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度においても解析用マシンの購入、これまで得られた研究成果をするためのの学会出張費・学会参加費・論文投稿費などに多額の研究費が必要となる。最終年度において必要となる研究費は、交付される研究費を大幅に超えていることが予想されるため、今年度における研究費の使用を最低限度に押さえた。結果として、端数が生じた。 本研究は多数の大規模シミュレーションを実施する必要があり、解析用マシンの数が研究の進捗を左右することから、解析用マシンをさらに増設するため20万円程度を使用する。本研究を通じて開発されたImmersed Boundary法をベースとした流体・構造連成シミュレーション手法、壁面が複雑に振動・変形する条件下での乱流解析の検討結果などを公表するための学会出張費・学会参加費・論文投稿費に20万円程度を使用する。研究に必要な書籍や可視化ソフトウェアの購入に20万円程度を使用する。これらの総額は交付される研究費を大幅に超えることが予想されるため、次年度使用額も併せて使用する。
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