2014 Fiscal Year Research-status Report
地震動下における配管内乱流機構および配管振動機構の解明
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24760148
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Research Institution | The Institute of Applied Energy |
Principal Investigator |
木野 千晶 一般財団法人エネルギー総合工学研究所(原子力工学センター), その他部局等, 研究員 (40465977)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Immersed Boundary法 / カットセル法 / 流体構造連成シミュレーション / 振動場乱流 / 有限体積法 / 有限要素法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、流路壁面が複雑に振動・変形する条件下での乱流解析を実施し,地震動下の配管内乱流シミュレーションに適した乱流モデルを提案すると共に、提案モデルを用いた地震動下における配管の流体・構造連成シミュレーションにより大規模プラント配管系の振動機構および耐震性に関する知見を得ることである。
これまでに本研究目的の達成に必要な、壁面の複雑な振動・変形を考慮可能な乱流シミュレーション手法の開発およびVerification&Validationを実施した。平成26年度においては、これまでに開発した流体構造連成手法を用いて、壁面が正弦波で変形する乱流シミュレーションを実施し、様々な物理的知見を得た。具体的には、壁面の振動によって、圧力損失が3倍程度増加することを確認した。壁面積は振動によってほとんど変化しておらず、振動による乱流構造の変化がその要因であると推察される。渦の可視化を通じて、壁面が凸状になった領域において生じた渦が下流に流され、下流域にて上昇する壁面と衝突することで大量の渦が発生する様子を捉えた。この現象は圧力損失が増大する要因の一つと考えられる。振動によって生じた速度変動は通常のチャネル乱流と同様に、壁から離れるに従い減衰していく。その傾向において平板な壁面を持つ乱流との差異は見られなかった。また、壁面上の圧力振動は壁面振動と同様の周波数を持っており、壁面振動による乱流構造の変化が、壁面振動の増幅につながる可能性を指摘した。さらに、昨年度開発した安定化手法を改良し、非物理的な圧力振動を従来以上に抑制する手法を考案した。昨年度開発した手法は時間的不連続性を緩和するが、質量の保存性に問題があった。今年度開発した手法は質量の保存性を保ったまま時間的不連続性を緩和する。これにより振動場乱流シミュレーションをさらに安定的に実施可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度においては、壁面が正弦波で変形する乱流シミュレーションを通じて、壁面振動が乱流構造に与える影響を評価した。これまでに開発してきた圧力振動抑制手法を用いることで、安定的に振動場における乱流シミュレーションを実施することができ、様々な物理的知見を得ることができた。
また、昨年度までに提案してきた圧力振動抑制手法をさらに改良し、時間的連続性・保存性の両方を満たす手法を考案することができた。今回考案した新手法は本研究で用いるCut-CellベースのImmersed Boundary法の適用範囲をさらに広げる可能性を持っており、今後計画している振動場乱流・流体構造連成シミュレーションを効果的に進める上で非常に重要な技術となる。
現時点において「乱流が配管の固有振動数に与える影響について検討」には至っていないため、実施期間を1年間延長した上で、地震動下の配管内乱流解析を実施する。本シミュレーションを実施する上で必要な技術は全てそろっており、当初の予定通り乱流が配管の固有振動数に与える影響について検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度においては、これまでに開発されたシミュレーション手法を用いて、地震動下の配管内乱流シミュレーションを実施する。特にLESを用いた振動場乱流解析を実施し、DNS結果と比較することで地震動下における乱流場を表現可能なLESモデルを選定する。年度後半においては、これまでの議論を通じて選定されたLESモデルを用いた流体構造連成シミュレーションを実施する。振動条件としては、過去の地震動で得られた波形を用い、壁面の振動が配管内乱流構造に与える影響を評価するとともに、配管の固有振動数や振幅にどのような影響があるか議論する。
併せて、これまでに得られた「振動場における乱流シミュレーションの解析結果」、「時間的連続性・保存性の双方を満たすCut-CellベースのImmersed Boundary法」についての学会発表・論文執筆に取り組み、本研究を通じて得られた成果の普及に努める。
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Causes of Carryover |
これまでに、壁面振動下における乱流シミュレーションを安定して実行可能とするための新しい数値シミュレーション手法を開発し、またImmersed Boudanry法ベースのFVM(有限体積法)-FEM(有限要素法)流体構造連成手法を確立した。さらに、壁面振動によって渦構造が押し流されることで壁面近傍における圧力に影響を与えることなど、これまでに報告されていない新たな知見を得ることができた。これらの成果を、原子力分野の数値流体力学に関する最大の国際会議であるNureth-16にて発表するために本事業の予算を用いる。この会議は隔年で開催されており、2015年が開催年に当たる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用額は、次年度に参加予定のNureth-16など国際会議の参加費および、執筆を予定している論文の英文校閲費に当てる。また、5月に開催される計算工学会・12月に開催される数値流体シンポジウムへの参加費などに使用する。
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