2012 Fiscal Year Research-status Report
乱流混合が微小慣性液滴の蒸発過程に与える影響の解明
Project/Area Number |
24760152
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
大西 領 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球シミュレータセンター, 研究員 (30414361)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 混相乱流 / 豪雨予測 |
Research Abstract |
平成24年度はプログラム開発および検証年度であった.本研究では,3次元気相乱流場のNavier-Stokes方程式を直接計算し,微小慣性粒子(水滴)の個々の運動をラグラジアン法により追跡計算する.既に定常等方性乱流場を形成する差分コードおよび粒子運動をラグラジアン法によって追跡するコードは開発されていた.本年度は,このコードをベースとして,水蒸気場(スカラー場)の計算過程および水滴の蒸発過程を実装した.当然,水蒸気場と水滴は結合された.厳密には,温度場の計算も必要であるが,本研究は蒸発現象を主対象とし,当初の計画通り温度場を無視した. 開発したコードの検証のために,ある一つの粒子から一定の速度で水蒸気が放出される系の計算を行った.この単純な系に対してはフーリエ解析による理論解が存在する.水蒸気の濃度変動強度の時間変化に関して,理論解と計算結果を比較した結果,乱流場を精度良く解像するのに十分な解像度(つまりコルモゴロフスケール程度の解像度)を用いれば,理論解と計算結果は良く一致することが確認された.さらに,多数の粒子が乱流中を運動しながら蒸発するという系に対しても検証実験を複数行い,乱流エネルギーや濃度変動強度の収支が正確に評価されることも確認した.さらに,試計算を行う中で,ある特定の条件下では,比較的落ち着いた乱流状態と励起された乱流状態とを繰り返す現象を発見した.このような現象は粒子蒸発のない系では見られないので,この現象は粒子の蒸発と乱流場が相互作用した結果引き起こされていると考えられる.この現象が乱流混合にどう影響するのか今後明らかにしていく. 以上,本年度は主にプログラムコードの開発および検証実験を行うことにより,信頼性の高いコードを開発することに成功した.高い計算性能を目指すことはしておらず,コードのチューニングはまだ途上である.これは次年度に行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
プログラムコードの開発および検証を所期の予定通り行った.さらに,ある特定の条件下では,比較的落ち着いた乱流状態と励起された乱流状態とを繰り返すという興味深い現象を発見した.これは粒子蒸発のない系では見られないので,この現象は粒子の蒸発と乱流場が相互作用した結果引き起こされていると考えられる.この予想されていなかった興味深い現象を踏まえることによって,乱流混合に及ぼす粒子蒸発の影響の解明が大きく推進されると期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降は小~中規模の計算を実行することによって,乱流混合が微小慣性液滴の蒸発過程に与える影響の解明に取り組む.がむしゃらに条件を設定してプログラムを実行するのは効率的ではないので,まずは計算条件をじっくり検討するための試行錯誤を行う.その際,平成24年度に行った検証実験の設定を参考にする.複数の乱流無次元量を対象とするので,乱流理論に関する多数の著名論文を執筆してきたインペリアルカレッジロンドン大学のVassilicos教授に助言も頂くことにより研究の効率的な推進を目指す.また,平成24年度に見出した,ある特定の条件下では,比較的落ち着いた乱流状態と励起された乱流状態とを繰り返すという興味深い現象に注目することによって,乱流混合に及ぼす粒子蒸発の影響の解明が大きく推進されると期待される.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に予定していた専門的知識の提供は当該研究者の都合により,次年度(平成25年度)に繰り越すこととした.また,英文校閲に関しても論文1報を平成25年度に繰り越すこととした.これは,ある特定の条件下で比較的落ち着いた乱流状態と励起された乱流状態とを繰り返すという興味深い現象の発見,という良い予想外のことに伴う追加実験のために論文作成がずれ込んだためである.これらのずれ込み以外はほぼ想定内の予算執行状況であり,次年度以降,情報収集やコード開発などの準備段階から成果発表段階に徐々に移行していく.それに伴い,当初の予定通り,成果発表に伴う旅費や英文校閲,ホームページ作成などに研究費が使用される.
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Research Products
(3 results)