2013 Fiscal Year Research-status Report
乱流混合が微小慣性液滴の蒸発過程に与える影響の解明
Project/Area Number |
24760152
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
大西 領 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球シミュレータセンター, 研究員 (30414361)
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Keywords | 雲乱流 / 混相乱流 |
Research Abstract |
平成25年度は<プログラム実行,乱流混合の影響解明のための年度>であった.前年度までに,定常等方性乱流場を形成する差分コードおよび粒子運動をラグラジアン法によって追跡する既存コードをベースとして,水蒸気場(スカラー場)の計算過程および水滴の蒸発過程を実装した. まず,並列プログラム実行の検証を行った.96*96*96個の計算格子中に7万粒子を混入させるケースを検証対象として,プロセス数を1,8,64と変化させた.その結果,計算実行時間がプロセス数に反比例して減少すること,結果が統計的に同じであることを確認した.また,乱流混合の影響を受けながら粒子群のサイズ分布の時間変化を計算した.その結果,乱流の影響,特にエネルギー消散率,によって径成長速度が大きく変化することを確認した.さらに,初期のサイズ径分布(つまり粒子ストークス数や粒子数密度)を様々に変化させた実験も行った.そして,それら実験から得られたデータと,実際の気象シミュレーションで用いられるパラメタリゼーションから予想される結果を比較した.その結果,既往のパラメタリゼーションでは乱流の影響を正しく考慮できないことを明らかにした.また,同じ条件下の計算を何回も繰り返すことによって,成長速度の分散に測定することにも成功した.この分散に関する情報はパラメタリゼーションでは得られない貴重なものである. 以上,本年度はプログラムの並列実行および乱流混合の影響の解析を開始した.また,並列コードのチューニングにも取り組んだ.今年度は96*96*96個の計算格子を用いた低レイノルズ数流れを対象とした.次年度にはより大規模な計算を行うことによって,より高いレイノルズ数流れを得て,乱流混合の影響のレイノルズ数依存性についても検討する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プログラムコードの並列実行および乱流混合の影響の解析を所期の予定通り行い,貴重なデータを得ることができた.一方で,初年度に予想外に発見した,“ある特定の条件下では,比較的落ち着いた乱流状態と励起された乱流状態とを繰り返すという興味深い現象”の深い考察には手が回らなかった.ただし,これは応募当初の想定外のタスクであった.結局,本年度の達成度は応募当初の想定通りだったと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成26年度には,乱流混合の影響のレイノルズ数依存性を調べるために,高レイノルズ数数でのデータを取得する.これまではワークステーションでのプログラム実行を行ってきたが,平成26年度には効率的に研究を進めるために,申請者の所属する(独)海洋研究開発機構が保有するスーパコンピュータを用いる.その際には,再びコードのチューニングが必要になるかもしれない.得られるデータのサイズが大きくなるため,データ解析や可視化作業にもスーパコンピュータの利用が必要になるかもしれない.また,成果の学会発表,論文発表だけでなく,得られる貴重なデータをインターネット上でも積極的に公開していく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定より低額で物品を購入できたため,若干の次年度使用額が生じた. 最終年度である平成26年度には大規模計算を予定している.2年度目までに20TB分のデータサーバを購入した.最終年度には40TB分程度を追加購入する.また,最終年度であるので,成果発表費用(論文発表費用,学会参加費用)への使用に多くの予算を使用する予定である.
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Research Products
(6 results)