2012 Fiscal Year Research-status Report
犬の行動学に基づく人とロボットの長期的かつ持続的なコミュニケーションの設計
Project/Area Number |
24760212
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
新妻 実保子 中央大学, 理工学部, 助教 (10548118)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 動物行動学 / 人-ロボットコミュニケーション / ソーシャルロボティクス |
Research Abstract |
平成24度の計画は犬の愛着行動を人-ロボットコミュニケーションモデルへ適用するためのモデリングを進めることであった。特に、犬の行動における個体差を表す行動特性要因として知られている3つのパラメータ(「主人へ懐いている度合い」「未知人物の許容レベル」「不安に対する感度」)を新たに導入した。そして、動物行動学の知見に基づいて行動特性パラメータの値を決定し、行動特性を区別したロボットの振る舞いを実現した。 犬の愛着行動を実現する上でコミュニケーション対象の人々とロボットの社会的位置づけを明らかに表現することは極めて重要な点である。「未知人物の許容レベル」はロボットのコミュニケーション対象となる人物ごとに設定することにより、従来研究では表現できなかったロボットとコミュニケーション対象者の関係を表現可能とした。具体的には、従来研究では、ロボットとロボットの「飼い主(owner)」と「他者(stranger)」の2者しか定義できなかった。これに対して、「未知人物の許容レベル」の高い人物を「身近な他者(familiar person)」あるいは「未知人物の許容レベル」の低い人物を「見知らぬ人(unfamiliar person)」と区別可能とした。 ロボットがonwer及び他者との社会的関係に応じて愛着行動を示したとき、その振る舞いから人は自分自身の立場、あるいは他者のロボットに対する立場を解釈できることが求められる。このため、行動特性を変えた場合にもロボットの振る舞いからロボットのコミュニケーション対象である二人の立場を正しく判別できるかどうかについて検証した。実験者の外観や被験者との関係等の事前知識が実験に影響しないよう、実験はシミュレータを通じて行った。その結果、9割の被験者が行動特性が異なる場合にもロボットとコミュニケーション対象2名の関係を正しく解釈できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画にとして平成24年度は「愛着行動のモデリング - ロボットの行動特性の表現 -」及び「能動的インタラクション機構の設計」を計画した。 「 研究実績の概要」にて述べたように、ロボットの行動特性の表現とその評価に関しては実装するだけでなく、評価実験までを行えたことから、当初の計画以上に進展することができた。 一方「能動的インタラクション機構の設計」では、人からロボットへの能動的な働きかけをセンシングできるよう視覚、聴覚、触覚によるセンシング機構を実装することを計画した。視覚センサとしてカメラを搭載し、コミュニケーション対象となる人の顔の位置、向きを計測することを実現した。また音声解析機能を統合し、あらかじめ特定した語句に関して識別できるようになり、音声によるパラメータチューニングを実現した。行動特性パラメータをロボットとのコミュニケーション中にコミュニケーションを介してチューニングできるようにした点は当初の計画以上に進展した点である。しかし一方、触覚センサを搭載し人からの触行動を判別することは判別精度が低く、ロボットの行動モデルと統合するまでには至らなかった。また、ロボットの頭部動作部の制御及び各種センサを制御するマイクロコントローラの設計に課題が残り、ロボット全体としての堅牢性に課題が残った。 以上より、当初の研究計画に対しておおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
安定したロボットの動作を実現するためには、ロボットの堅牢性を向上させることが必須である。しかし、前述の通り、ロボットの制御を行う計算機に関するハードウェア構成に課題が残る結果となった。そのため、まずは安定して持続的にロボットを振る舞わせることができるよう、頭部動作部及びセンサ処理部のハードウェア構成から改良する。その後、平成25年度の計画として予定していた「能動的インタラクションの設計と評価」及び「コミュニケーション度の評価」について研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度へ繰り越した研究費により、制御用の計算機を購入する予定である。またコミュニケーションの評価として、人の動作及び生体情報の計測を予定しているため、それに対応したセンサを購入する予定である。実験補助とデータ整理への人件費を使用する。また研究成果を国際会議、及び国内学会にて発表することを考えているため、旅費、学会参加費、英文校正として研究費を使用する計画である。
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Research Products
(5 results)