2013 Fiscal Year Research-status Report
微視的な力のつり合いに着目した土壌侵食量の新たな確率的評価手法の開発
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24760381
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
荒木 功平 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (00600339)
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Keywords | 土砂流出 / 土壌侵食 / 粒度分布 / 現地実験 / モニタリングシステム / 適応策 / 気候変動 / 地域連携 |
Research Abstract |
地球温暖化等の気候変動に伴う大雨の頻度増加が指摘されるようになり、経験したことのない災害の発生、各種産業への影響等が懸念されている。特に沖縄県では、亜熱帯特有の高温多雨気候により、土砂が流出しやすく、農地や開発事業地等から流出する赤土等は、水産業、観光業、サンゴ等の生息環境に影響を与えており、1950年代頃から問題化しているが、未だ解決に至っていない.このような中、本研究では第一に、過去の研究資料を収集・整理し、現状の把握を行っている。特に沖縄県では赤土等流出対策事業の「平成13年度流域赤土流出防止等対策調査 粒度分布や沈降特性を考慮した土壌分布把握推進事業報告書」から赤土代表格である「国頭マージ」の物理特性についてとりまとめた。 宜野座村で実際に農地を借用し、赤土等流出現地実験を行った。裸地の他に,放棄地(雑草地),堆肥混入,微生物を用いた地表面の被覆,流末部に敷き草,敷き砂,グリーンベルト適応策を実施し,約1年間にわたり,流出濁水量,赤土等流出量を計測した。その結果,グリーンベルト対策が最も効果があり,続いて放棄地,敷き砂,堆肥,敷き草,微生物,裸地の順となった。流末対策で,グリーンベルトにつづいて敷き砂が効果があったことから,粒径の違いが赤土流出に対して抑制効果をもたらすことを示している。これらの研究成果をとりまとめ,土木学会論文集に投稿し,掲載された。 沖縄県の粒度分布情報を効率的に生かすために、土の保水性・透水性を粒度分布から類推できるモデルの構築を目指し、土の保水性試験を行った。不飽和土の保水性試験・透水試験は長期の時間がかかるため、今後、粒度分布から土の保水性・透水性を類推できれば有用な手法となる。室内降雨実験を行い,表流水や赤土流出量は土の初期乾燥密度、初期含水量に大きく依存するのに対し,流出土の粒度にはほとんど影響しないことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
地球温暖化等の気候変動に伴う大雨の頻度増加が指摘されるようになり、経験したことのない災害の発生、各種産業への影響等が懸念されている。特に沖縄県では、亜熱帯特有の高温多雨気候により、土壌が流出しやすく、農地や開発事業地等から流出する赤土等は、水産業、観光業、サンゴ等の生息環境に影響を与えており、未だ解決に至っていない。1998年には国頭郡宜野座村でモズク養殖が赤土流出のため壊滅し、大きな社会問題になった。なお,農地からの赤土等の推定年間流出量は20万トンを超えるといわれている。このような中、これまで沖縄県では、様々な赤土等流出対策事業を行ってきている。 このような背景を踏まえ,過去の研究資料を収集・整理し、現状の把握を行うことができている。特に沖縄県の赤土等流出対策事業の「平成13年度流域赤土流出防止等対策調査 粒度分布や沈降特性を考慮した土壌分布把握推進事業報告書」から赤土代表格である「国頭マージ」の物理特性についてとりまとめ,一部を土木学会論文集G(環境)に投稿し,掲載された。論文等での学会への報告は平成26年度を計画していたので,当初計画以上に 進展しているといえる。 沖縄県の粒度分布情報を効率的に生かすために、土の保水性・透水性を粒度分布から類推できるモデルの構築を目指し、宜野座村の国頭マージの保水性を明らかにできている。 土壌侵食室内降雨実験を行い,表流水や赤土流出量は土の初期乾燥密度、初期含水量に大きく依存するのに対し,流出土の粒度にはほとんど影響しないことを明らかにできている。 当初計画では,平成25・26年度に宜野座村で農地を借用し、亜熱帯気候条件下における赤土等流出実験、現地計測を予定していたが、平成24年度の段階で農地を借用でき、赤土等流出の現地実験を行うことができている。また,その成果は上記論文に記載できている。したがって,当初計画以上に 進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
地球温暖化等の気候変動に伴う大雨の頻度増加が指摘されるようになり、経験したことのない災害の発生、各種産業への影響等が懸念されている。IPCC第4次評価報告では、1990年水準から、1℃の気温上昇でさえサンゴの白化が広がったり、生物の生息域が変わるとされている。特に沖縄県では、亜熱帯特有の高温多雨気候により、土壌が流出しやすく、農地や開発事業地等から流出する赤土等が、水産業、観光業、サンゴ等の生息環境に影響を与えており、1950年代頃から問題化しているが、未だ解決に至っていない。なお、農地からの赤土等の推定年間流出量は20万トン以上といわれ、近年のゲリラ豪雨の発生等による一層の負荷が懸念される。大雨の発生回数の増加や強い乾湿差による土壌の風化が広域的に拡大すれば、前述したような赤土等流出問題は、沖縄県にとどまらず、九州等各地に生じることが懸念される。しかしながら、これまで気候変動と赤土等流出問題を関連付けた研究はほとんど行われてきていない。 これまで開発・改良したモデル(土の粒度分布、保水性、透水性、土壌侵食量 を評価するモデル)による数値計算結果と土質試験結果との比較を行い、モデルの信頼性・妥当性を検討し、課 題・問題点を明らかにし、検討結果を反映(フィードバック)してモデルの改良・構築を行っていく。その際に、追加の土質試験等の必要性が明らかになれば、随時検討・実施し、基礎的データの追加を行っていく。特に人工降雨による土壌侵食実験を検討し、降雨量と土壌侵食量関係について、開発したモデルと室内人工降雨実験計測結果の比較を行い、モデルの信頼性・妥当性、実現象の再現に必要な課題を明らかにしていく。 現地実験および土質試験、室内降雨実験について、得られた結果をとりまとめ、学会等を通じて得られた成果を広く公表していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年度の消費増税等による経費の増加に備えるため,平成24,25年度で研究経費等の効率的な運用を行い,研究経費を削減し,平成26年度に研究経費が不足しないようにする必要があった。そのため,研究経費の運用については,目的,額,使途,執行方法等に関し,随時コストの削減等検討し,効果的かつ効率的に活用し,円滑に進めた。その結果,安い交通機関利用,研究協力者等の協力等により,次年度使用額を生じることができた。社会情勢に合わせてこのように柔軟に研究費を運用することができることに深甚の謝意を表します。 現地実験や,資料収集・打ち合わせ等のために,調査旅費が必要となる。加えて,実験装置・現地採取土壌の運送費等が必要になる。また,学会等への研究成果報告,打ち合わせ資料等を作成するための印刷費,論文投稿料が必要である。 これまで開発・改良したモデルによる数値計算結果と土質試験結果との比較を行い、検討結果を反映(フィードバック)してモデルの改良・構築を行っていくためには,実験についての妥当性,初期条件や境界条件の与え方を検討する必要がある。そのためには,書籍等を入手して新しい研究成果,実験装置の導入等を検討する必要があり,加えて,実験装置を開発・改良するための治具等メカニカル機器消耗品の購入が必要である。 なお,研究経費の運用については,目的,額,使途,執行方法等に関し,適切に管理し,随時コストの削減等検討し,効果的かつ効率的に活用し,円滑に進めることを申し添える。
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Research Products
(12 results)