2012 Fiscal Year Research-status Report
河川の高頻度流量観測データを用いた流域の雨水貯留量変動および貯留能の推定
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24760388
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
横尾 善之 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (90398503)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 降雨流出 / 成分分離 / 逓減解析 / 気候 / 地形 / 土壌 / 地質 / 土地利用 |
Research Abstract |
本研究は,全国的に蓄積されつつある河川の毎時の流量観測データを用いて流域スケールの雨水貯留量の変動および貯留能を推定することを目的としている. 研究初年度は,主に降雨流出の主要プロセスが3つ以上ある流域での適用性の解決を計画し,これを実施した.具体的には,Hino & Hasebe (1984)のフィルター分離AR法を用いて河川流量を逓減時定数の異なる3つから5つの流量成分に分離した上で,Kirchner (2009)の流量と雨水貯留量の関係式決定法をそれぞれの流量成分に当てはめた.本研究は,馬淵川石切所観測所,北上川田瀬ダム,鳴瀬川高田橋観測所,名取川湯本観測所,阿武隈川白河観測所を末端とする合計5流域を対象とした.北上川田瀬ダム,鳴瀬川高田橋観測所,阿武隈川白河観測所の各流域では年間の貯留変動幅が150~300mm程度と,年間降水量や日降水量の値と比較しても妥当な値が推定された.ただし,北上川田瀬ダムの流域では,ダムへの流入量がゼロとなるときの貯留量をゼロとした場合の流域スケールの貯留量の値が800から1000mm程度となっており,これが現実的な値なのかどうかについては検討の余地を残している.一方,馬淵川石切所観測所および名取川湯本観測所の流域では,年間の貯留変動幅が100mm未満となり,他の流域よりもかなり小さい値となった.また,河川流量がゼロにとなるときの貯留量をゼロとした場合の貯留量の値も100mm未満となり,この推定値は懐疑的であると判断している. 以上より,日本のように降雨流出過程の表現に複数の貯留モデルが必要な流域においてもKirchner (2009)の手法を適用して流域スケールの雨水貯留変動の推定が初めて可能になったものの,推定手法に問題点が残される結果となった.本手法の問題点を整理して,改善することが現在の課題である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は,主に降雨流出の主要プロセスが3つ以上ある流域での適用性の解決を計画・実施した.申請者は予備研究(横尾ら[2012],小林・横尾[2012])において,Kirchner (2009)の手法は日本のように降雨流出過程の表現に複数の貯留モデルが必要な流域においては適用できないことを確認していたため,この解決を目指した.Hino & Hasebe (1984)のフィルター分離AR法を用いて河川流量を逓減時定数の異なる成分に分離をした上でKirchner (2009)の手法を当てはめることが有効であることが本研究によって明らかになり,問題解決の見通しを立てることができた.このため,「おむね順調に進展している」と判断した. しかし,本研究の手法に問題点が残っていることも判明した.Hino & Hasebe (1984)の手法とKirchner (2009)の手法を単に組み合わせて使うだけでは不十分であり,推定結果とその過程を見直した上で,両手法の適用上のルール作りが必要であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究を実施した結果,Hino & Hasebe (1984)の手法とKirchner (2009)の手法を単に組み合わせて使うだけでは不十分であり,推定結果とその過程を見直した上で,両手法の適用上のルール作りが必要であるとの結論に至った. そこで本研究は,この問題と当初の研究計画を合わせ,①Hino & Hasebe (1984)の手法を適用する際のルール作り,②Kirchner (2009)の手法を適用する際のルール作り,③1000平方km以上の大流域における適用性の検討,④流域の貯留能と気候・地理条件との関係の4つの課題に取り組む予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(13 results)