2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24760406
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
金井 昌信 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20375562)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 地域防災計画・政策 / 津波避難 / 津波警報 / 避難情報 |
Research Abstract |
平成24年度については、東日本大震災の経験を通じて形成された津波警報に対する意識を把握することを目的として、具体的には以下の2つの研究課題を行った。 (1) 住民の津波警報に対する意識に関する仮説の検討:この度の津波の経験が、住民の津波警報に対する意識にどのような影響を与えるのかについて、人間のリスク情報の理解特性に関する知見をもとに、理論仮説を措定した。これに際して、東日本大震災時における津波避難の意思決定構造を明らかに、この知見も参考とした。具体的には、岩手県釜石市民を対象に実施されたアンケート結果から、平時における津波リスク情報を把握していたこと、地震発生後に避難情報を把握できたことが、迅速な津波避難を促す効果があったことが確認された。その一方で、大津波警報(予想津波高さ3m)という情報を把握した場合については、そのような効果を確認することができなかった。以上の結果から、住民は、「避難に値するかどうか判断するために、予想津波高さに関する情報として具体的な数値を求めている」可能性が示唆された。 (2) 住民の津波警報に対する意識の把握:(1)の検討結果を踏まえ、その仮説を検証するための調査を実施した。具体的には、気象庁による津波警報の改善後(平成25年3月)に、南海トラフの巨大地震津波によって甚大な被害が想定されている地域の住民を対象にインターネット調査を実施した。調査結果より、津波警報が変わったことを知らなかった住民も多かったが、仮説通り、「巨大」などの表現ではなく、具体的な数値で予想津波高さに関する情報を欲していることが確認された。また、大震災の発生から2年が経過し、この間、新想定が公表されたりしたものの、震災発生1年後に実施した他の調査結果と比較すると、危機意識の低下を自覚している住民が増えてきていることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初平成24年度に予定していた研究課題である(1)住民の津波警報に対する意識に関する仮説の検討、(2)住民の津波警報に対する意識の把握は、ともに実施することができた。なお、詳細な成果のとりまとめ、および学会発表等についても、当初の計画通り、平成25年度に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度については、前年度に引き続き、津波警報に対する意識を把握するとともに、前年度の検討結果を踏まえて、今後の災害情報・避難情報のあり方を検討することを目的として、以下の3つの研究課題を行う。 (3) 住民の津波警報に対する意識(経年変化)の把握:前年度に実施した調査項目に、経年変化に関する質問項目を追加し、同様の方法で調査を実施する。 (4) 平時における津波リスク情報の提供方法の検討:住民の津波警報に対する意識に関する調査結果を踏まえ、平常時における津波リスク情報の提示方法を検討する。具体的には、津波ハザードマップの改良を検討している。現在、想定津波という1つのシナリオについての予想浸水域が示されているものに対して、津波警報の予想津波高さ毎の予想浸水域を提示することなどの技術開発を検討する。 (5) 住民の情報理解特性を踏まえた、津波警報・避難情報のあり方の検討:住民の津波警報に対する意識に関する調査結果を踏まえ、いざというときに避難を促すための津波警報・避難情報のあり方を検討する。具体的には、津波警報に連動した避難情報を検討している。現在の体制では、津波警報は気象庁が発表し、それを踏まえて各自治体が避難情報を発表することになっている。しかし、津波の襲来が危惧されている沿岸部の自治体の中には、小規模の町村が少なくない。それらの自治体では防災を専門とする職員を配置することができない場合もあり、避難情報の対象地域の選定など、情報発表の意思決定を効率的に実施できていない実態がある。そのため、津波警報の規模に応じて、避難情報の対象範囲などを機械的に定めておく方法などを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度については、情報収集や学会発表等のための旅費と、その他として、消耗品費および調査実施費の使用を計画している。 なお、平成24年度の研究費を計画的に使用した結果、126円の残額が生じたが、これについては、平成25年度の研究費と合わせて執行する予定である。
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