2012 Fiscal Year Research-status Report
非定常波動音響シミュレーションを利用した残響室法吸音率の補正
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24760469
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
富来 礼次 大分大学, 工学部, 准教授 (20420648)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 非定常波動音響シミュレーション / 残響室法吸音率 / 有限要素法 / 面積効果 / 拡散音場 |
Research Abstract |
本研究では、近年急速に発展している波動音響に基づく非定常音場シミュレーションを駆使し、以下2項目を行うことを目指している。1. 残響室法吸音率測定値の変動要因と測定室内音場の拡散性の関係の明確化:室内音場の拡散性に関わる要因、すなわち周波数・室の形状・容積および測定試料の寸法・吸音率を変化させた音場を、複数の指標で評価し、測定に影響を与える範囲を明らかにする。2. 残響室吸音率補正手法の開発と適用範囲の検証:1. をふまえ、残響室法吸音率の補正手法を提案する。この提案手法をJIS A 1409による実際の測定に適用し適用範囲を検証する。本年度は以下のような成果が得られた。 1.JIS A 1409に使用可能な測定室内音場に対する非定常波動音響シミュレーションの実施:JIS A 1409に使用可能な3つの測定室を対象に、3周波数で,測定試料の寸法を2種、吸音率を4種変化させた計72種の音場に対し非定常波動音響シミュレーションを実施し、残響室法吸音率を算出した。なお、この際、測定試料には局所作用を仮定し、シミュレーションで試料に与えた材料定数より乱入射吸音率を測定の目標値として算出し、両者の差を誤差とした。 2. 測定室壁面へ入射する音のエネルギーのバランスに関する補正の適用範囲の検討:1. で得られたシミュレーション結果を用い、それぞれの音場で測定室壁面へ入射する音のエネルギーのバランスを求め、音場の減衰曲線の補正を行った。補正により、それぞれの音場の減衰曲線が、完全拡散音場を仮定した理想的な減衰性状に近似することが確かめられた。また吸音率が高い場合、もしくは試料面積が広い場合、補正の効果が少なくなる可能性が示された。 これらの結果について国内学会で発表し、議論した。これらは次年度の研究計画に反映させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、波動音響に基づく非定常音響シミュレーションにより、残響室法吸音率測定値の変動要因と測定室内音場の拡散性の関係の明確化、および残響室法吸音率補正手法の開発とその適用範囲の明確化、を行うことを目的としている。本年度は、残響室法吸音率の変動要因として、周波数、測定試料の寸法、測定試料の吸音率を変化させた72音場を対象に非定常音場解析を行い、それぞれの音場で残響室法吸音率を算出した。来年度は、それぞれの音場で拡散性に関する指標を算出し、残響室法吸音率測定値と上記変動要因、および拡散性の関係を明らかにする。また、残響室法吸音率補正手法として、測定室壁面へ入射する音のエネルギーのバランスに関する手法について、残響室吸音率算出に使用する減衰曲線への補正を試み、その有効性を確かめた。来年度は、残響室法吸音率の補正へ適用し、その有効性と適用範囲を明らかにする。以上より、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、平成24年度の研究成果をふまえ、以下を試みる。 1. 非定常波動音響シミュレーションの実施:平成24年度の成果をふまえ、残響室法吸音率測定の変動要因の検証に必要な音場を追加してシミュレーションを実施する。また、測定試料として拡張作用が生じる材をモデル化したシミュレーションの実施、残響室法吸音率の算出とともに、乱入射吸音率も算出する。 2. 残響室法吸音率測定音場の評価指標の算出と誤差との比較:平成24年度の3. をふまえ、有効と予想される室内音場の評価指標を1. で得られたシミュレーション結果からそれぞれの音場で算出する。必要に応じて1. の音場に対する他のシミュレーションも実施する。それぞれの音場で得られた室内音場の評価指標を、1. で得られた誤差(残響室法吸音率と乱入射吸音率との差)と比較し、測定値の変動要因が誤差に与える影響を明らかにする。 3. 残響室法吸音率補正手法の構築と非定常波動音響シミュレーションによる適用範囲の検証:2. の結果をふまえ、補正手法の構築を行う。構築された補正手法の有効範囲を、1. のシミュレーション結果を利用して検証する。 4. 提案した補正手法の実験による検証:複数の室、材を用い、残響室法吸音率のラウンドロビンテストを実施し、そのうちいくつかの材に対し多くの試験実績のある試験機関に測定を依頼する。全ての測定結果に対し、3.で構築した補正手法による補正を行い、その有効性を検証する。 なお、情報収集および研究成果の発表のため、国際学会・国内学会に参加する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度作成した非定常波動音響シミュレーションのプログラムを活用し、さらに多くの音場を対象にシミュレーションを実施するため、データ分析用のノートPCの購入を予定する。 また、平成25年度は、平成24年度の成果をふまえ、提案する補正手法を実際の残響室法吸音率の測定に対し試行するため、実験材料の購入を予定している。また、補正手法の有効性の検証をより普遍的なものとするため、大学院生を実験補助として雇用し、より多くの測定を行い、シミュレーション結果と比較する。また、所属する研究機関のみではなく、他の研究機関での測定も予定しているため、測定試料の運搬費および測定旅費の使用を計画している。
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Research Products
(3 results)