2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24760497
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
川田 菜穂子 大分大学, 教育福祉科学部, 講師 (90608267)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 住宅政策 / ジェンダー / 配偶関係 / 離婚 / 国際比較 / イギリス / フランス |
Research Abstract |
戦後日本の住宅システム、すなわち、公的住宅政策、社会保障や社会福祉、企業の福利厚生における住宅制度、住宅市場などの住宅をとりまく包括的なシステムは、男性稼ぎ主が持家を取得することを前提として成り立ち、大きなジェンダー不平等を内包してきた。しかし1970 年代以降、結婚や家族のあり方が大きく変容し、離婚の増加が顕著である。このような背景のもと、住宅の所有形態、アフォーダビリティ、資産形成、物的水準などの住宅条件に関して、不利な状況におかれる離別女性が増えている。本研究は、離別女性の住宅経歴の国際比較分析を通じて、日本の住宅システムにおける課題を、ジェンダーの視点から明らかにするものである。離婚の増加は、多くの先進諸国にみられる共通の現象である。しかし、異なる住宅システムのもと、各国の離別女性の住宅経歴は、違った傾向を持つ。 平成24 年度は、まず既往研究や政策資料等のレビューを行った。ここでは主として、日本・イギリス・フランスを対象に、各国の住宅システムについて、その特性をジェンダーの視点から横断的に明らかにした。2012年11月には、フランスの住宅政策に関する有識者へのヒアリングを実施した。 また、公刊統計や国際機関等が提供する既往調査の個票データを独自に分析することを通じて、各国の離別女性がどのような住宅条件におかれているのかの位置づけを明らかにした。ここでは、ジェンダーと配偶関係を分析の枠組みに設定し、性別や有配偶、未婚、離別、死別などの違いによって、住宅条件がどのように異なるのかに着目し、国ごとの特性を明らかにした。イギリス・フランスについては、Luxembourg Income Studyや Generations and Gender Surveys等の個票データ、日本については、国勢調査のオーダーメイド集計結果等を用いて分析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に計画していた住宅システムとジェンダーに関する既往研究のレビューについては、資料収集や有識者へのヒアリング調査(フランス)を実施し、体系的な情報の収集・整理・分析を進めている。 また、公刊統計や国際機関が提供する個票データを用いた離別女性の住宅条件に関する比較分析についても、すでに Luxembourg Income Study、Luxembourg Wealth Study、Generations and Gender Surveys 等の個票データにアクセスし、順調に分析を進めているところである。 これらの研究成果成果については、平成25年度に国際学会、および国内学会において口頭発表を行い、学会誌に論文投稿を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、まず昨年度に得られた研究成果を国内外の学会で発表し、有識者等から必要な助言を得たいと考えている。あわせて、学会誌への論文投稿を予定している。 それらの内容ををふまえたうえで、離別女性のより具体的な住宅条件を把握するために、国際機関等が提供する各国のパネルデータを入手し、住宅経歴の国際比較分析を行う予定である。パネルデータを利用することで、離別女性の一定時点の住宅条件を把握するだけでなく、離婚前から離婚後の住宅条件を動態的に捉えることができる。比較対象国は、日本、イギリス、フランスを予定している。ここでは、とくに住宅所有形態の変化に着目し、各国における傾向の違いを把握するとともに、背景にある住宅システムが離別女性の住宅経歴にどのように影響しているのかについて考察する。 さらに、離別女性の住宅経歴に関するインタビュー調査を予定している。本調査では、欧州における2か国を選定し、離別女性を対象したインタビュー調査を実施する。そのうえで、応募者が近年に実施した日本調査の結果と比較し、各国の住宅システムの違いがもたらす離別女性の住宅経歴の差異について、具体的に検討する。平成25年度については、イギリス、フランスのどちらか1カ国での実施を予定している。調査項目は、結婚から現在までの家族、住宅、就労、家計などの状況と離婚時の財産分与等についてである。また、住宅に関連する制度利用の利用経験についても把握する。本調査では、現地でのインタビュー対象者確保が厳しい状況に備えて、質問紙と電話によるインタビューの実施など、複数の調査手法を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に計画していた国際学会での口頭発表、および論文投稿は、平成25年度に実施することとなった。そのため、平成24年度の予算に計上していた国際学会旅費・学会参加登録費、および学会誌投稿料は、平成25年度に支出する予定である。
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Research Products
(1 results)