2014 Fiscal Year Annual Research Report
インド・カティアワール地方における中世の都市構造とその現代的変容に関する調査研究
Project/Area Number |
24760503
|
Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
岡村 知明 国士舘大学, イラク古代文化研究所, 共同研究員 (70583516)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | インド / カーティアワール地方 / イスラーム / 港市 / 都市組成 / 14世紀 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、インド北西部カーティアワール地方において13世紀~16世紀に形成された港市の都市構造に着目し、イスラームとの接触における都市・建築の転用過程と市街地空間の変容を明らかにすることを目的とする。具体的対象地を、ヒンドゥー土着の都市形状を持つマングロールMangrolと,ムガル朝成立以前のイスラームの港市であるヴェラヴァルVeravalに定め,街路,施設配置,街区といった都市組織の集合の仕方において異なる構成原理を持つ事例に着目し、主に以下の点から臨地調査を実施した。 1.カーティアワール沿岸部における港市の形成と14世紀の水利用の建築遺構 インドでも早期にイスラーム化した沿岸部の都市では、旧市街が外郭と内郭からなる二重の方形の囲壁で構成され、その形成に際し、既存の寺院、市壁といった都市基盤の大部分が転用された経緯を持つ。マングロールでは、14世紀初頭の建設当初と考えられる貯水井戸・貯水槽等の水利用の建築遺構が20以上確認され、その分布状況と建築形態に関する調査を行った。貯水井戸の遺構について、沿岸部のイスラーム化の過程で成立した特異例と考えられ、調査成果を中世建築研究会、日本沙漠学会沙漠誌分科会、日本建築学会大会で発表した。 2.中世遺構と現代の市街地整備への援用 印パ独立後に多数の住民移動を経験したカーティアワール地方の港市は、往時から現代まで住民構成を大きく変えている。都市の公共施設である水利遺構は,現状では所有・管理形態をめぐる宗教的な重層性を持つこと、また灌漑以外にも祠堂やコミュニティ施設として利活用されている実態が明らかとなった。近代の植民地期に直接的支配を受けず、19世紀半ばから印パ独立までナワーブ(ムスリム太守)政権が長く存続した両都市では、既存の公共施設を踏襲し現代の市街地整備に援用された点が特徴として挙げられる。
|