2012 Fiscal Year Research-status Report
層状構造を有する二次元遍歴電子系における新規機能性材料の探索
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24760534
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
太田 寛人 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60546985)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 層状化合物 / 遍歴電子磁性体 / 異方的超伝導体 |
Research Abstract |
鉄系超伝導体および酸化コバルト超伝導体の周辺における新規機能性物質の探索を目指して研究を行った。今年度の研究予定では両方の超伝導体の周辺物質を探索する予定であったが、鉄系超伝導体の周辺物質であるコバルト・ヒ素系物質において研究が進展したので、こちらの研究に注力した。その結果、以下の結果が得られた。 ①Ae2MO3CoAs (Ae:アルカリ土類金属, M:軽い遷移金属)と書かれる物質群の探索の結果、Sr2ScO3CoAs, SrVO3CoAs, Ba2ScO3CoAsの合成に成功し、Sc化合物がコバルトの磁気モーメントが強磁性秩序を示す一方でV化合物は強磁性秩序を示さないことが分かった。ただしV化合物ではVの磁気モーメントが反強磁性秩序を示した。これら三つの物質の間で固溶系を合成した結果、特にSr2(Sc,V)O3CoAsにおいてコバルトの磁気モーメントが温度の低下とともに強磁性秩序から反強磁性秩序へ相転移することが分かった。この現象は以前注目していたSmCoAsOやNdCoAsOと共通の現象であり、巨大磁気抵抗が期待される。 ②AeCo2As2 (Ae:アルカリ土類金属)と書かれる物質群の探索の結果、これまで磁気秩序を示さないと考えられていたSrCo2As2においてCoを部分的にNiに置き換えることで他のCoAs層状化合物と同程度の磁気秩序が誘起されることを明らかにした。これはNiに部分置換することによりエネルギーバンドに電子が添加され、フェルミエネルギーの位置が磁気秩序に有利な状況に”チューンナップ”されるためと考えられる。この結果は①で挙げたSrVO3CoAs中のコバルトの磁気モーメントを秩序化する際のヒントになる。Vの3d電子が一部Coに移動する”セルフドーピング”が考えられ、逆にCoをFeで部分置換することにより磁気秩序を誘起できる可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では層状化合物超伝導体に注目し、関連物質の中から新規機能性材料を探索することを目的としている。平成24年度の研究では鉄系超伝導体の近隣物質であるコバルトヒ素系において、新たな強磁性-反強磁性転移物質を発見した。この結果はCoAs伝導面の間に磁気モーメントを有する元素を挟み込むことにより強磁性-反強磁性転移を誘発できることを示しており、今後の物質設計において重要な指針を示している。例えばコバルトヒ素系よりも高い磁気転移温度を示しうるマンガンヒ素系はより高い温度での強磁性-反強磁性転移が期待でき、より室温に近い条件での巨大磁気抵抗効果の実現が期待できる。 また、SrCo2As2にNiを部分置換することにより磁気秩序を誘起できたことは、これまでポテンシャルはあるのに磁気秩序しなかった物質における磁気秩序の誘起方法として重要である。また基礎的な点では、CoAs伝導面における二次元遍歴電子磁性の統一的な理解に重要な進展をもたらしたと考えられる。 以上の点から、平成24年度の研究成果は申請時に予定していたものを超えるものになったと考えている。従って現時点において、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は前年度に得られたSr2(Sc,V)O3CoAsの磁場中における電気抵抗率を含めた物性測定を行うとともに、CoをMnに変えることにより磁気転移温度の上昇を狙い、より実用性の高い磁気抵抗効果を示す物質の探索を行う。またより詳細な物性の研究を行うためにも単結晶試料の作成を行う。その一方で、申請書類に書いた平成25年度の研究実施計画にもあるように、前年度に引き続き物質探索を行っていき、新たな機能性材料の可能性を追求して行く予定である。特に前年度に研究を行わなかったコバルト酸化物に関連する物質にも注目し、熱電特性などの性能の高い物質の探索も行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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