2012 Fiscal Year Research-status Report
表面特性に立脚した高次ナノ構造制御による高活性酸化鉄系光触媒の開発
Project/Area Number |
24760556
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Aomori Prefectural Industrial Technology Research Center |
Principal Investigator |
角田 世治 地方独立行政法人青森県産業技術センター, 工業総合研究所, 研究員 (50557808)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 光触媒 / オキシ水酸化鉄 / 色素分解 / 有機物分解 |
Research Abstract |
本研究の目的は、オキシ水酸化鉄における光触媒活性と結晶形態の関連性から表面特性を解明し、この表面特性に立脚したナノ構造制御によって、高い光触媒活性を有するオキシ水酸化鉄光触媒を得ることである。 平成24年度は、4種類の多形(α、β、γ、δ)を有するオキシ水酸化鉄について形状の異なる粒子を合成し、多形、粒子形状と光触媒活性の関連性について調べた。光触媒活性は、アルデヒドなどの有機物酸化分解及び過酸化水素存在下における有機色素の分解によって評価した。 まず、多形と光触媒活性の関連性を調べたところ、4種類の多形のうち最も強い光触媒活性を示したのがα型であり、次いでγ型となった。β型とδ型はほとんど光触媒活性を示さなかった。α型は、有機物酸化分解反応と有機色素分解反応の両方に活性を示し、γ型は有機色素分解反応にのみ活性を示した。有機物酸化分解には系内の酸素を還元すること(活性酸素の生成)が必要であり、いずれの多形も伝導帯は酸素還元に十分な位置にある。しかし、光触媒表面における酸素還元については、α型の方が高活性と考えられた。 次に、それぞれの多形において、ロッド状やシート状など形状の異なる粒子を合成し、その活性の変化を調べた。β型とδ型は形状の違いによる活性変化が見られなかったが、α型とγ型は形状の変化により活性が変化したことから、比表面積と同様に粒子形状も活性に影響を与えることが判明した。粒子の形状ごとに単位表面積あたりの活性を求めた結果、α型においては{021}面が、γ型においては{100}面および{001}面の露出が多い粒子形状が高活性であることが判明した。これら表面特性の違いの一因は、光照射により生成するキャリア(正孔)のトラップサイトである表面水酸基の密度に起因すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度では、4種類のオキシ水酸化鉄について、その光触媒特性を多形、粒子形状、表面特性の観点から明らかにすることが目的であった。 結果として、β型とδ型は、形状によらず光触媒活性をほとんど示さなかったが、α型とγ型は形態によって光触媒活性が大きく変化することが判明した。バンドギャップや伝導帯位置といった特性はどの多形についても近いが、幾つかのモデル反応における活性から、α型とγ型では対象となる光触媒反応が異なるという表面特性の違いが明らかになった。さらに、粒子形状と活性の違いを調べたところ、α型とγ型では、ある特定の結晶面の面積割合が活性に影響を与えることが判明し、表面水酸基の密度との関連性について示唆される結果が得られた。 以上、当初の計画通りに研究を遂行できており、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度はおおむね順調に推移したことから、今後も計画通りに推進する方策である。 具体的には、平成25年度は前年度に得られた表面特性に基づき2種類の高活性化手法を検証する。まずは、ナノ構造制御による高活性化を試みる。これは、活性な結晶面、有効な粒子形状に関する知見を基に、その特性を十分に発揮するためのナノ構造体を合成するものである。次に、前段階で得られたサイズ・形状制御された光触媒粒子の高分散化を試みる。ここで得られた光触媒の構造的特徴や光触媒活性は、前年度と同様の手法で評価し、活性の変化を確認する。また、前年度に活性が認められなかったβ型やδ型についても対象とし、活性への影響を確認する予定である。 平成26年度では、異種材料との複合化による高活性化と新機能の発現について検証する。これは、前年度に得られた光触媒材料の表面機能を強化するものであり、高活性化と同時に新機能の発現が期待できる。これは主に助触媒担持と異種光触媒との複合化の2種類の手法によって行う。 尚、平成24年度では、4種類の多形のうちβとδは活性が低かったが、異種材料などとの複合化により、その可視光吸収特性を活かした複合材料が得られる可能性があるため、これらについても引き続き対象として研究を遂行する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、光触媒活性を比較検証するために必要な形状を有するオキシ水酸化鉄光触媒を予定より早い段階で合成することに成功したことから、計画した試薬の幾つかが不要となり、幾分の繰り越しが発生している。 現時点で次年度以降の研究推進計画に変更はないことからも、当初計上した費用に繰り越し分を加え、これを主に試料調製や光触媒反応実験・機器分析に必要となる消耗品、論文投稿・学会発表に要する費用に充てて使用する計画である。
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Research Products
(2 results)