2012 Fiscal Year Research-status Report
アクリル酸グラフト繊維を用いた新規神経幹細胞培養技術の開発
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24760652
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
森 英樹 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30450894)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 細胞培養 / 神経幹細胞 / 高分子繊維 |
Research Abstract |
本研究の目的は中枢神経疾患治療に有効とされる神経幹細胞の新規培養技術の開発である。本研究は神経幹細胞の培養に用いられるニューロスフェア培養法を改良し、空間的制限を減らし、細胞培養効率の改善によって生産性を向上させることを目指すものである。具体的には、繊維上にニューロスフェアを接着させ、培養できる繊維材料を開発し、繊維上で培養されたニューロスフェア構成する細胞の生物学的特性を評価し、ニューロスフェア培養に最適な条件を選定することを目的とする。 初年度ではおもに繊維材料の開発をおこなった。ポリエステル、ナイロンの織物を基板材料とし、50から200ミクロンの繊維径の材料を試した。さらに、繊維材料に対しガンマ線を照射し、グラフト重合によって繊維上にアクリル酸を導入した。PA66繊維は、アクリル酸濃度60%の水溶液中でポリアクリル酸重合をおこなったものがグラフト率15%と最も高く、また、ガンマ線照射線量依存的にアクリル酸グラフト率も増加した。繊維上に導入されたポリアクリル酸はフーリエ変換赤外線吸収スペクトル-ATR法を用いて1700cm-1付近のカルボン酸由来のピークによって確認することができた。さらに導入されたアクリル酸のカルボキシル基に、水溶性カルボジイミドによる化学架橋反応によって、コラーゲン分子の修飾を試みた。PA66繊維1 cm2あたり5 μg程度のコラーゲン分子が修飾されたことをフルオレスカミン法によって確認した。培養マウス神経幹細胞を用いて、コラーゲン分子修飾アクリル酸グラフト重合PA66繊維への接着、増殖性を検討した。細胞の接着、増殖は培養5日程度で確認できたが、未修飾繊維と大きな差が得られなかったことから、次年度もひきつづき繊維材料表面の改良が必要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究目的としては神経幹細胞を接着、増殖させるための、繊維材料面の開発が中心であった。高圧蒸気滅菌が可能なPA66繊維を基板材料として選択し、細胞接着や増殖を促すためのタンパク質分子修飾する条件、特にカルボキシル基の導入を目的とした繊維表面へアクリル酸をグラフト重合する条件を調べた。カルボジイミドを用いてタンパク質を化学修飾するため条件までは概ね把握することができた。しかし、神経幹細胞の細胞接着、増殖を促す条件の獲得までには至らなかった。神経幹細胞はMMPの発現が高く、培養液中に多く分泌することをザイモグラフィーによって確認できたことから、修飾したコラーゲン分子を分解してしまった可能性も考えられる。材料表面への修飾タンパク質の適切な種類を選択することが今後必要である。 また、ガンマ線架橋PVAゲル上に神経幹細胞が接着することが確認できたことから、新たな細胞培養繊維の作成方法として繊維上へのPVAの導入し、神経幹細胞接着、培養へ応用することも検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
神経幹細胞が繊維上へ接着、増殖できるようなタンパク質の修飾やPVA等の新たな合成高分子導入条件を獲得する(8月迄)。また、昨年からの計画どおり繊維上で培養された細胞の①ニューロスフェア形成、②分化率の評価、③繊維に接着した神経幹細胞の高密度培養での細胞の解析といったバイオアッセイを中心に進める。 繊維に接着したニューロスフェアの量の比較や、ニューロスフェアの凍結切片を作製、免疫染色を施し、ニューロスフェア内部の神経幹細胞、分化した細胞がニューロスフェアの内部に一様に散在しているのか、部分的に局在しているのか、局在しているのであれば中心部分かもしくは表面部分かといった細胞分布、その細胞密度および分化率といった情報を詳細に解析する。 最終的には、神経幹細胞の増殖率を既存のニューロスフェア培養法と比較することによって培養した細胞が神経幹細胞としての多分化能を維持し、かつ増殖率の高い繊維および培養条件を選定する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
論文での成果発表を次年度に見送ったために残額が生じた。年度内に神経幹細胞の接着培養条件を得ることが難しくなったので、ひきつづき次年度も神経幹細胞接着培養条件を探索するため、新たに多くの研究材料を購入する必要がある。今年度の研究費残額はすべて次年度の物品費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)