2013 Fiscal Year Research-status Report
植物種間における開花期を越えた送粉者の共有による促進効果の検証
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24770025
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
川口 利奈 兵庫県立大学, 女性研究者支援室, 特任助教 (80571835)
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Keywords | 送粉 / 種間相互作用 / 花形質 |
Research Abstract |
共通の送粉者を利用する植物種の間には、たとえ開花期がほとんど重ならなくても送粉者の引き継ぎによる促進的な相互作用が生じ得る。このような種間関係は、どのような花形質を持つ植物種が群集内で共存しやすいかを説明するうえで重要な鍵を握っていると考えられる。本研究は、(1) 異なる開花フェノロジー構造(どの時期にどの花が咲くか)のもとで送粉者の花形質への反応を調べる行動実験、(2) 実物の植物を用いて相対的に送粉者の引き継ぎが起こりやすい条件を調べる野外実験という2つのアプローチを組みあわせ、これまであまり着目されてこなかったが群集内での植物種の共存機構のひとつとして機能し得る、開花期を越えた送粉者の共有による促進効果を再評価することを目的としている。 平成25年度は主に、ツリフネソウの野外集団の開花期初期から終期にかけて濃ピンクとオレンジ色のキンギョソウの鉢植えのパッチを近くに出現させ、花色のちがいによってツリフネソウからの送粉者(トラマルハナバチ)の引き継ぎの起こりやすさに違いがあるかを検証する実験をおこなった。現時点までに終えている解析の結果によると、前年度に行った実験と同様、ツリフネソウの花色と似た濃ピンクのキンギョソウのパッチでは、オレンジのパッチにくらべてマルハナバチの訪問頻度が多そうだということがわかった。濃ピンクの金魚草への選好性の時系列変化の有無については現在解析中である。本実験結果から、先行する開花種と後から開花する種の花色の類似度が送粉者による訪問花種の選択の時系列に影響するものだということが支持されれば、開花期のほとんど重なっていない植物種同士でも送粉者の記憶を介して互いの繁殖成功に影響を与え得ることを示唆した貴重な研究成果となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成24年度の調査地下見および野外実験遂行により、平成24年度は実験手法の検証と確立に専念し、25年度の同時期に規模を拡大して追加調査を行うことで効率的なデータ収集が可能と判断した。しかし、25年度は24年度に実験を行った調査地でのツリフネソウ個体数が年変動により大きく減少し、追加の調査地選定作業が生じた。また、開花フェノロジーの進行度合いが異なる3ヶ所のツリフネソウ集団で実験を行うなどしたため、野外実験期間が長期間に及び、室内実験の準備に取りかかるのが遅れた。さらに室内実験準備中の12月に研究代表者の所属機関変更が生じたため、年度内はデータ解析や研究成果発表準備に時間を充て、前所属機関である九州大学に在学する実験協力者が本格的に実験を行える平成26年4月以降に室内実験を行うよう研究計画を変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
(A)送粉者を介した花種間の相互作用に対する花色の類似度と開花フェノロジーの重複度の影響:25年度は野外実験期間が想定より長引き、その後研究代表者の所属機関変更が、室内実験の準備に取りかかる時期が遅れてまとまったデータを収集するに至っていない。よって、26年度は九州大学理学部生態科学研究室に所属する崎田愛音氏の協力を受け、九州大学箱崎キャンパス内に設置された室内ケージ内で、花色の似た花に対する送粉者の反応が開花期の重なり度合いによって変化するかどうかを検証する室内実験を進める。予備実験を6月頃に行い、本実験は7月末~8月頃に行う。実験の進行状況に応じて、当初25年度に計画していた、送粉者の引き継ぎやすさに対する花筒長の影響を調べる実験も行う。 (B)野外植物集団における送粉者の引き継ぎが起こりやすい条件の検証:25年度までに必要なデータの収集を終えているので、26年度は実験結果の詳細な解析を進め、研究成果をまとめる作業を引き続き行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
植物の開花状況による野外実験期間の延長により、室内実験開始期時期に遅れが生じた。また、平成25年12月の研究代表者の所属変更にともない、年度内はデータ解析や研究成果発表準備に時間を充て、前所属機関である九州大学に在籍する実験協力者が本格的に実験を行える平成26年4月以降に室内実験を行うよう研究計画を変更した。これらの事情により、実験用備品費用などの未使用額が生じた。 平成25年度内に終了しきれなかった室内実験は、平成26年4月から九州大学理学部生物学科生態科学研究室で関連テーマについて卒業研究を行う学生の協力を受け、引き続き九州大学箱崎キャンパス内に設置された室内次ケージで行う。未使用額はその経費と研究成果発表のための学会参加費等に充てることとする。
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