2012 Fiscal Year Research-status Report
イモリの性フェロモン、ソデフリンの受容機序とその個体群差に関する研究
Project/Area Number |
24770061
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
中田 友明 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 助教 (50549566)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | ペプチドフェロモン / 繁殖制御機構 / 生殖隔離 / 内分泌 / 鋤鼻器 / シグナルトランスダクション / 鋤鼻受容体 / 地域個体群 |
Research Abstract |
該当年度申請者は、脊椎動物の性フェロモン作用機序を明らかにする目的で交付申請書に記した計画に照らし下記の実験研究を行い、一定の成果を得て成果を国際誌ならびに、学会において発表した。 [1]イモリ性フェロモン、ソデフリンの受容細胞での神経的応答をCa imaging技術を用いて観察する技術を開発し、フェロモン受容細胞が受容動物の鋤鼻器に存在し、その応答性は種・性別・性成熟度に依存していることを明らかにした上で、細胞内のシグナル伝達機構を明らかにした。この成果は国際誌 Peptidesに発表した。 [2]フェロモンによって誘起された神経応答が処理される脳内領域を明らかにするために、応答細胞がる鋤鼻器を含めたイモリの嗅覚器にある感覚神経の局在と性質についてそこに発現するタンパク質、mRNAについて組織学的手法(免疫染色およびin situ hybriodization)を用い調べるとともにフェロモン受容細胞がGαoタンパク質を発現し、終脳前部に位置する副嗅球に軸索を伸ばしていることを確認した。Gαoタンパク質は脊椎動物の鋤鼻器に発現する特定の感覚受容体タンパク質(V2R)と共役していることが様々な種で確認されており、ソデフリンがV2Rを受容されることを示唆した。この成果について現在論文を作成中である。 [3]イモリフェロモン(ソデフリン)受容体遺伝子を同定する為に受容細胞を含む鋤鼻器のcDNAライブラリーを構築し、遺伝子の同定を開始した。 [4]受容体遺伝子を得た後にそのフェロモン受容能を解析するツールとして、マウスの脾臓に発現するGタンパク質であるGα15を発現する安定細胞株をCHO細胞で作製した。Gα15は各種のGタンパク質共役型受容と広く共役する特殊なGタンパク質であり、これを発現する細胞株に同定したフェロモン受容体遺伝子を導入することで、フェロモンの受容能を確認することができる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ペプチドフェロモン(ソデフリン)の受容処理機構を分子/形態/生理・行動/個体群という多角的視点で解析し、フェロモンによる配偶者選択・生殖隔離機構を解明することで、生物進化・種分化とフェロモンという新しい観点に立った研究の基盤を確立し、希少動物や産業動物の繁殖の効率化に資することを目的として研究を遂行している。現在まで3年計画の初年度として特に分子生物学的・生理学的解析に焦点を当ててフェロモン受容機構の解明のために研究を行い順調な成果を得ている。 まず、フェロモン受容細胞が生きた状態で観測できるCa imagingシステムの開発を行い、ペプチドフェロモンの受容細胞が鋤鼻器の感覚神経であることを突き止め、その細胞数が性別および性成熟度によって違いがあることを確かめた上で、成熟メスで繁殖期に血中濃度の高まるホルモンによって受容細胞数が上がることが、繁殖期の動物のフェロモン感受性の上昇を引き起こしていることを明らかにした。さらに同システムを用いてフェロモン応答神経がフェロモンを受容してから神経が興奮するまでの機構について解析を行い、ペプチドフェロモンのシグナル伝達機構を明らかにした。これらの成果は研究計画に照らして計画以上の進展をみせ、既に国際誌に投稿、受理された。 一方、ソデフリン受容体遺伝子の同定に関しても、ソデフリン受容細胞のcDNAライブラリーを作成し、遺伝子スクリーニングを行うとともに、得られた受容体遺伝子を発現させ、そのリガンド結合能を調べるための遺伝子改変細胞株の作成を行った。現在まで、計画した実験において進展が前後したものもあるが、試行したものに対しては順調に達成できているとから、研究の達成度はおおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に開発したCa imagingによるフェロモン受容細胞の同定法を生かし、フェロモン受容体に発現する受容体候補の遺伝子の単離を行う(1)。単離後は前年度に作製したGα15発現細胞に受容体候補遺伝子を導入し、導入した遺伝子が実際にイモリフェロモン(ソデフリン)と結合能を有しているかを調べる(2)。 (1)遺伝子の単離にはまず、 Ca imagingで同定した受容細胞を顕微鏡下で採集し、少量の細胞からmRNAを精製、遺伝子両端にアダプターを付加したcDNAを合成してアダプター配列に対するプライマーを用いてcDNAライブラリーの増幅を行う。このライブラリーを鋳型に前年度成果よりソデフリン受容体が属すると推測される 受容体ファミリー(V2Rs)に特異的なプライマーを用いて受容体遺伝子のクローニングを行う。 (2)前年度に作製したGα15発現細胞は、様々なGタンパク質共役型受容体と共役してリガンドが受容体に結合した際に細胞内のCa応答を見せる細胞であるため、フェロモン受容体の確認にはCa imagingを用いる。 一方、脳内での作用機序の解析には副嗅球に伝わったフェロモン情報がどの脳内領域に伝達され処理されるかを調べる。脳内の神経活動のマーカータンパク質としてc-FosおよびERK-1の利用を試行する。c-Fosは哺乳動物を中心にフェロモンを含む脳内の神経活動をモニターする目的で使用されており、ERK-1はさらにゼブラフィッシュやセンチュウなど幅広い動物種で神経活動のマーカータンパク質して広く利用されている。 上記、研究が計画通りに終了した場合、最終年度の年度フェロモン分子の地域個体群間での差と活性の違い(フェロモンの個体群ごとの分子進化)について、イモリの国内個体群(東北、関東、中部、西日本、九州)およびシリケンイモリの二個大群(奄美、沖縄)について研究を進める予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の助成金の使用計画として[1]実験に関わる使用と[2]研究発表に関わる使用に分けて次年度研究費全額の使用を計画をしている。 [1]実験に関わる使用:「今後の研究の推進方策」に記した研究計画に沿って実験を行い、目標の達成に必要な物品および、旅費としての使用する研究費であり、次年度は採択決定時に記した通り、実験動物(アカハライモリ、動物用飼料)7万円、ガラス・プラスチック器具15万円、実験試薬・抗体等50万円の合計72万円を使用する計画である。 [2]研究発表に関わる使用:研究成果を広く社会に還元するために、次年度は複数(少なくとも2報)の論文を国際誌に発表する計画である。そのため、国内外での学会における参加発表経費として30万円の旅費の他に、論文のカラーチャージ代ならびに別刷り代としてそれぞれ15万円の合計60万円の支出を計画している。 また、採択時の申請書に書かれた通り、本研究においては高額の設備・備品は原則として現有のものを利用するため、設備備品の新規購入は計画していない。
|
Research Products
(6 results)