2014 Fiscal Year Annual Research Report
イモリの性フェロモン、ソデフリンの受容機序とその個体群差に関する研究
Project/Area Number |
24770061
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
中田 友明 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (50549566)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | フェロモン / 両生類 / 繁殖行動 / 個体群差 |
Outline of Annual Research Achievements |
イモリの雄性フェロモンであるソデフリンの受容処理機構を調べ、嗅覚による配偶者選択・生殖隔離機構の解明を目的に、最終年度は以下の3点の研究を行った。 A.脳内作動回路の解析:ソデフリンの受容細胞は雌の鋤鼻器から副嗅球へ軸索投射する鋤鼻細胞であった。現在はマニピュレーター操作で単離したソデフリン受容細胞に発現している受容体遺伝子を解析中で、今後再構築系へ導入してソデフリン結合能を確かめる。一次感覚中枢(副嗅球)からの神経回路を同定するため、フェロモン作動時の活性脳領域を調べた結果、視床下部・視索前野・扁桃体等に陽性反応がみられ、これらの領域と副嗅球の連絡など詳細を今後調べる予定である。 B.受容能の内分泌学調節機構の解明:ソデフリン受容細胞はプロラクチン(PRL)とエスラジオール(E2)の分泌の盛んな繁殖期の雌でみられ、非繁殖期や脳下垂体と卵巣を除去した動物(HX/OVX)には殆どみられないが、PRLとE2を投与すると繁殖動物と同等に観察されるようになった。HX/OVXへPRLとE2もしくはsalineを投与した群間で、嗅覚器の新生細胞数を比較すると、鋤鼻細胞の新生はホルモン投与群で多いが、一般の匂い受容細胞では差がなかった。繁殖期に分泌されるホルモンが鋤鼻細胞を誘導しフェロモン受容能が高まるようだ。 C.種間・個体群間での解析:シリケンイモリの奄美亜種で新規のソデフリン様ペプチドに加えて、アカハライモリの種特異的フェロモンと考えられてきたソデフリンをコードする遺伝子が単離された。そこでシリケンイモリ2亜種(奄美亜種と沖縄亜種)の6個体群において、ソデフリン様ペプチドの多型を解析し、現在までのところソデフリンおよび新規ペプチドの発現は奄美亜種にみられ、沖縄亜種ではシレフリンが発現しているようである。今後アミノ酸配列変異が行動的差異を生む神経基盤が明らかになり、フェロモンにおける生殖隔離機構を分子・細胞レベルで解明されると思われる。
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