2012 Fiscal Year Research-status Report
雄性配偶子の細胞膜分子構造が制御する重複受精機構の解明
Project/Area Number |
24770062
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
森 稔幸 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (00462739)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 重複受精 / 配偶子 / 有性生殖 / 花粉 |
Research Abstract |
被子植物を中心とする陸上植物は、食糧となる農作物から森林資源に至るまで我々人類の生活を支える重要な植物資源となっている。遺伝的多様性に富んだ植物資源を維持するためには、それを保証する有性生殖の仕組みの理解が重要な鍵と考えられる。本研究では、被子植物の受精(重複受精)において、雌雄の配偶子(精細胞・卵細胞)を融合へと導くタンパク質分子群を明らかにし、被子植物の繁殖を根底から支える重複受精の分子メカニズム解明を目指している。平成24年度は、近年新規に発見した雄性配偶子側受精制御因子の機能解析を試みた。遺伝学的手法によって新たに見いだされた同因子はシロイヌナズナ精細胞の表面で特異的に発現する膜タンパク質であり、同因子を正常に発現できない変異株は不完全な重複受精を見せることが分かった。現在、同因子は配偶子融合に先立つ配偶子接着・認識などの段階で働くものと予想している。また、植物受精の瞬間における配偶子膜の動態解析を行った。シロイヌナズナの配偶子特異的遺伝子を駆使し、雌雄配偶子の膜を特異的に標識した株について受精の様子を観察したところ、生きた組織内での配偶子膜融合の様子を観察することに成功した。 一方、雌性配偶子側の受精因子は全く分かっておらず、イネの単離卵細胞を用いた雌性配偶子受精因子の探索を開始した。イネ卵細胞のサンプルは微量であるため、そこから抽出したmRNAを標的としたPCR法を適用した。その結果、卵細胞に特異的な遺伝子と思われるDNA断片を多数見いだすことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規植物雄性配偶子受精因子の解析をメインテーマとして進行しているが、ほぼ予定通りの進展を得ている。テッポウユリの花粉生殖細胞の全遺伝子カタログを用いた新規雄性配偶子膜タンパク質の網羅解析も進行中であり、新たな植物雄性配偶子受精因子の単離が期待される。また、新たに開始した雌性配偶子受精因子の探索法も昨年度内に確立されたため、今後の展開が期待できる。平成25年度のうちに新たな受精因子が同定できれば翌年度内にその発現・機能解析を完了することができる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降は、昨年度から解析を行っている新規雄性配偶子受精因子の機能解析を進行すると同時に、テッポウユリ花粉生殖細胞膜タンパク質の網羅解析から新たな受精因子の探索を試みる。昨年度のうちに同細胞の膜画分の精製に成功しており、質量分析の準備は完了しているため、解析結果から同細胞で顕著な候補を絞り、発現解析を開始する。モデル植物シロイヌナズナでホモログが同定できるものは逆遺伝学的手法による機能解析を行う。また、イネ卵細胞を用いた特異的遺伝子スクリーニングの実験系も確立したため、雌性配偶子受精因子の同定にも注力する。 上記の通り、今年度に新たな受精因子の同定・発現解析を行う予定であるが、シロイヌナズナの栽培環境拡大の必要が予想される。新たな栽培装置(人工気象器)の購入を検討しているが、実験スペースなどの問題が生じる場合は他機関へ共同研究等の申請も検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(3 results)