2013 Fiscal Year Research-status Report
雄性配偶子の細胞膜分子構造が制御する重複受精機構の解明
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24770062
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
森 稔幸 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (00462739)
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Keywords | 重複受精 / 有性生殖 / 配偶子 / 花粉 / 被子植物 / GCS1 / GEX2 / 膜タンパク質 |
Research Abstract |
被子植物を中心とする陸上植物は、食糧となる農作物から森林資源に至るまで我々人類の生活を支える重要な植物資源となっている。遺伝的多様性に富んだ植物資源を維持するためには、それを保証する有性生殖の仕組みの理解が重要な鍵と考えられる。本研究では、被子植物の受精(重複受精)において、雌雄の配偶子(精細胞・卵細胞)を融合へと導くタンパク質分子群を明らかにし、被子植物の繁殖を根底から支える重複受精の分子メカニズム解明を目指している。平成25年度は、近年新規に発見した雄性配偶子側受精制御因子GEX2の分子レベルでの機能解析を試みた。遺伝学的手法によって新たに見いだされた同因子はシロイヌナズナ精細胞の表面で特異的に発現する膜タンパク質であり、GEX2を正常に発現できない変異株は不完全な重複受精を見せることが分かった。そこで、GEX2が配偶子融合のどのような局面で機能するかを検証するために、GEX2変異株精細胞を受け入れた胚珠内の様子を詳細に観察した。胚珠内に存在する胚のう組織は細胞同士が密着しているため、雌雄配偶子の相互作用を観察するのは困難である。そこで新たな手法として、胚珠組織を細胞壁分解酵素で処理し、胚のう組織を細胞ごとに分散させる実験法を開発した。この手法によって、GEX2変異精細胞は卵細胞や中央細胞と安定した接着できないことが新たに分かり、GEX2は配偶子融合を安定化させる接着因子であると結論した。本研究成果を論文としてまとめ、米科学誌「Current Biology」(2014, 24(2):170-175)に発表した。論文は世界的にも注目されており、同雑誌の“Dispatch”(2014, 24(4):R164-R166)で紹介された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで全く謎であった配偶子接着機構に、GEX2分子が関与していたことを世界で初めて明らかにした成果は想定以上に大きいと考えられる。また、次世代シーケンサーを用いて得られたテッポウユリの花粉生殖細胞の全遺伝子カタログをベースに、新規雄性配偶子膜タンパク質の網羅解析も進行中であり、新たな植物雄性配偶子膜タンパク質LGM1の単離にも成功した。以上の理由から、表記の評価としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、新たに単離した、LGM1タンパク質分子の発現局在・機能解析を試みる。興味深いことに、LGM1は被子植物のみならず緑藻・コケ植物・シダ植物にもオーソログが見いだされており、緑色植物進化の中で保存されてきた機能が期待できる。また、雌性配偶子(卵細胞・中央細胞)側で発現すると予想される受精因子(上記GEX2のパートナー分子など)を単離する計画も現在進行中であり、世界で初めてとなる被子植物雌性配偶子側受精因子の同定につなげたい。
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Research Products
(3 results)