2012 Fiscal Year Research-status Report
ストレス環境下において現れる損傷mRNAを選択的に分解する分子機構
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24770131
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
細田 直 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (40438198)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | mRNA分解 / 翻訳 / ストレス / 核酸 |
Research Abstract |
細胞が紫外線・オキシダントなどのストレス環境にさらされると、mRNA塩基あるいはmRNA鎖は損傷を受ける。蛋白質コード領域中にこういった損傷が現れると、リボソームは翻訳途上で停止する。その結果、C末端側が欠失した異常蛋白質が発現し、細胞にダメージを与える。細胞はこのような損傷mRNAを速やかに分解することにより、ストレス環境に迅速に対応すると想定される。 本年度は、損傷mRNAの一形態である終止コドンをもたないmRNAを急速に分解する分子機構について解析を進めた。終止コドンに変異を導入したβグロビンレポータ遺伝子をHeLa細胞に導入し、産生されるmRNA動態を、以下に示す種々の条件において解析した。(1)鉄応答配列IREを5’非翻訳領域にもつmRNAは、ヘム鉄存在下においてのみ翻訳される。IREを5’非翻訳領域にもつレポータmRNAでは、ヘム鉄存在下においてのみ、終止コドンをもたないmRNAの急速な分解が観察された。翻訳依存的にこの急速な分解が引き起こされることが明らかとなった。(2)エキソソーム複合体において、RNase Rファミリーに属するDis3およびRNase Dファミリーに属するRrp6が3’-5’RNA分解活性を担っている。siRNAによるノックダウン実験により、Dis3がこの急速な分解において主として機能することを見出した。(3)同様のノックダウン解析により、エキソソーム制御タンパク質であるRNAヘリカーゼSki2 およびMtr4が相補的に機能することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変異レポータmRNAを用いた解析により、損傷mRNAを急速に分解する分子機構として、エキソソーム複合体およびその制御タンパク質について新しい知見を得ることができた。しかしながら、損傷mRNAが出現するストレス環境、および翻訳停止を引き金として損傷mRNAを検知する分子機構については、解析がやや遅れている。以上の理由により、本年度における達成度は「概ね順調にして進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ストレス環境下において生ずる損傷mRNA上での翻訳停止 mRNA損傷がどのようなストレス環境において生じるかに関しては現時点では不明である。mRNA「塩基」損傷については、アルキル化剤および細胞内代謝産物Sアデノシルメチオニンにより生ずるメチル化塩基、紫外線照射や酸化的ストレスで生じる8-オキソグアニン、紫外線照射で生じる塩基間光架橋、を想定している。mRNA「鎖」損傷については、紫外線照射や酸化ス トレスによるmRNA鎖の切断を想定している。これら損傷mRNA上における翻訳停止について検証する。 (2)翻訳リボソームの停止を引き金とする損傷 mRNA を検知する分子機構 mRNA「塩基」損傷においてはリボソームが翻訳領域上で停止することによりNGDが起動し、mRNA「鎖」損傷においてはリボソームがmRNAの3’末端で停止することによりNSDが起動すると想定される。これらの翻訳停止では、翻訳終結因子類似タンパク質Dom34-Hbs1が機能することが、申請者を含め複数のグループから報告されている。そこで、損傷 mRNAの検知においてDom34-Hbs1が機能するかどうか検討する。翻訳終結因子eRF3類似タンパク質はHbs1だけでなくGTPBP1、GTPBP2も知られている。これらが翻訳停止の検知において協調的に機能する可能性について検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究を遂行する上での基本的な設備は既に備えられているため、研究経費において消耗品が大きな割合を占める。消耗品として、遺伝子操作においては、プラスミド精製試薬、制限酵素・修飾酵素各種、PCR 酵素、DNAシークエンス試薬が必要となる。またオリゴDNAを受託合成するための出費が予想される。細胞培養においては、培地、牛胎児血清、培養用プラスチック器具、レポーター遺伝子を細胞内に導入するための高効率トランスフェクション試薬が必要となる。蛋白質解析はWestern法で行うので、PVDF膜、タグ配列に対する1次抗体、HRP標識2次抗体、化学発光検出試薬が必要となる。抗体を作製するため実験動物が必要となる。Northern法におけるプローブ作製、およびin vivo翻訳解析などのため、[32P]・[35S]RI標識化合物が必要となる。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Biological Role of the Two Overlapping Poly(A)-binding Protein Interacting Motifs 2 (PAM2) of a Eukaryotic Releasing Factor, eRF3 in mRNA decay2012
Author(s)
Masanori Osawa, Nao Hosoda, Tamiji Nakanishi, Naoyuki Uchida, Tomomi Kimura, Shunsuke Imai, Asako Machiyama, Toshiaki Katada, Shin-ichi Hoshino, and Ichio Shimada
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Journal Title
RNA
Volume: 18
Pages: 1957-1967
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