2012 Fiscal Year Research-status Report
1分子蛍光偏光イメージング法による生体回転モーターの回転力発生部位の特定
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24770144
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福岡 創 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (50447190)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 分子モーター / バイオイメージング |
Research Abstract |
蛍光偏光を捉えるための顕微鏡システムを構築した.本顕微鏡システムでは,試料から発せられた蛍光をPおよびS偏光に分割し,両者を同一EMCCDカメラ上に投影させた.ガラス上に吸着させた蛍光タンパク質(GFP)や蛍光標識したアクチン繊維を蛍光観察したところ,試料から発せられた蛍光の強度が,PおよびS偏光像間で排他的であることが確認できた.予備的な実験において,本顕微鏡システムをGFPで蛍光標識されたべん毛モーターに適用したところ,モーター由来の蛍光は観察されたが,現状では細胞の自家蛍光や細胞質内の余分なGFP由来の蛍光の影響のため,モーター由来の蛍光を感度よく捉えることができていない. また,研究計画では蛍光標識されたべん毛モーターの蛍光強度変化が,モーターの回転に由来するかどうかを明らかにする必要があるが,そのためにはモーター由来の蛍光強度変化とモーターの回転を同じ時系列で計測しなければならない.今年度の研究計画に従い,そのための顕微鏡システムを別途構築した.細胞の明視野像(赤色領域)を捉える高速CCDカメラと蛍光タンパク質の蛍光(緑色領域)を高感度に捉えるEMCCDカメラを組み合わせることで,モーターの回転と蛍光タンパク質の細胞内局在を同時に観察することが可能な顕微鏡システムを別途構築した.顕微鏡システムの検証として行った実験において,モーターを構成するタンパク質の一つである固定子(GFP融合固定子を用いることで)がモーターの共役イオンの有無に依存して結合・解離することを機能的モーターで検出することに成功したことや,また細胞内シグナル伝達分子CheYのGFP融合タンパク質を用いることで,CheY結合によりモーターが回転方向転換することを捉えることに初めて成功するなど,本顕微鏡システムを構築したことで新たな生物学的発見も得られるなど,研究が大きく発展した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蛍光偏光を捉えるための顕微鏡システムにより蛍光タンパク質由来の蛍光偏光を生成タンパク質では捉えられるようになったが,細胞内でそれを観察するためには,細胞の背景光等の影響が大きいことが判明し,まだ実現に至っていない.今後は細胞の余分な蛍光タンパク質由来の蛍光や,細胞の自家蛍光を除くシステムを構築することで問題点の克服を目指す. モーターの蛍光強度変化がモーター回転に由来するかどうかを検証するためには,モーター由来の蛍光強度変化とモーターの回転を同時に計測する必要があるが,こちらの顕微鏡システムの構築は計画通りに進み,モーター回転と蛍光タンパク質の細胞内局在を同時に捉えることが可能となった.また明視野―蛍光同時観察用顕微鏡システムの検証として行った実験において,モーターを構成するタンパク質の一つである固定子がモーターの共役イオンの有無に依存して結合・解離すること,またモーターの回転方向転換が細胞内シグナル伝達分子の結合により起こることを,機能的なモーターで初めて捉えることに成功するなど,本研究が大きく発展した.
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Strategy for Future Research Activity |
細胞内で蛍光偏光を捉えるための顕微鏡システムを構築する.細胞の自家蛍光や,細胞内の余分な蛍光タンパク質由来の蛍光を除くシステムを考案する.方法は,蛍光タンパク質冷気用のレーザーを二光路に分割し,一方を試料上で1マイクロメートル程度に集光し,細胞内を拡散する蛍光分子および自家蛍光となる分子由来の蛍光を褪色させ,モーターからの蛍光を効率よく取得できるようにする. モーターの蛍光強度変化をモーター回転に由来するかどうかを検証するためには,モーター由来の蛍光強度変化とモーターの回転を同じ時系列で計測しなければならない.今年度までに,蛍光タンパク質の局在と細胞の明視野像を二つのカメラを用いることで同時に捉えられるようになったので,次年度は,蛍光偏光検出用顕微鏡システムと,明視野―蛍光同時観察用顕微鏡システムを組み合わせる. 上記顕微鏡構築後,当初研究計画通りに蛍光タンパク質で蛍光標識したべん毛モーターを観察し,モーター回転に伴うP,S偏光像に蛍光強度変化の有無を検証する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり,平成25年度請求額とあわせ,平成25年度の研究遂行に使用する予定である. 平成25年度においては高額の設備備品の購入は計画していないが,研究の進捗状況に応じて購入を検討する. 消耗品については,顕微鏡システムの改変に伴うレンズ,光学フィルター類,ミラー類などの光学部品が必要となるため,これらを随時購入する予定である.また観察対象となる試料の作成,培養などに試薬類が必要なため,これらを随時購入する予定である. 旅費については,資料収集や国内外の学会における研究成果発表のための旅費の使用を予定している.
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Research Products
(5 results)