2012 Fiscal Year Research-status Report
染色体分離を制御するノンコーディングRNAとその作用機序の解明
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24770168
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
井手上 賢 熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (20420250)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | non coding RNA / セントロメア / 染色体分離 |
Research Abstract |
本研究の目的は、染色体分離過程に関わるセントロメアRNA(Sat RNA)の機能を解明することである。本年度の記述すべき成果を以下に示す。 1. Sat RNAノックダウンの影響の精査。RNAノックダウンにより染色体分離のキーファクターであるAurora Bの活性が上昇し、その基質の一つ、Histone H3のリン酸化が亢進することを見いだした。さらにこのときAurora Bの染色体局在が減少することを見いだした。2. Sat RNAの正確な細胞核内分布の検証。Sat RNAのFISHにより、このRNAが細胞核内でドット上の局在を示すことを明らかにした。3. Sat RNAに結合する因子の探索。染色体分離のキーファクターであるAurora Bが細胞周期のM期特異的にSat RNAに結合することを明らかとした。またM期以外の時期に結合する因子の一つとして、スプライシング因子DHX38を同定した。この結果は、細胞周期の進行に伴って、Sat RNAに結合する因子が変化していることを示している。Sat RNAに結合する因子を質量分析により解析するため、M期およびそれ以外の細胞周期のステージからそれぞれSat RNA-タンパク質複合体を精製することに成功した。4. Sat RNA過剰発現させたときの染色体分離への影響。Sat RNA過剰発現させる系を構築したが、染色体分離への影響は観察されなかった。この結果はSat RNAがCisにのみ機能し、Transには働かないことを示唆している。5. マウスにおけるSat RNAについてノックダウンを行ったところ、ヒト培養細胞と同様に核の形態異常を観察した。これはヒトだけでなくほ乳動物間でsat RNAの機能が保存されている可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究計画の本年度分とそれに沿った実施状況は以下に述べる。研究計画に記載したすべての項目で何らかの進展を達成できており、概ね順調であると判断している 1(1). Sat RNAノックダウンの影響の精査。RNAノックダウンにより染色体分離のキーファクターであるAurora Bの活性が上昇し、その基質の一つ、Histone H3のリン酸化が亢進することを見いだした。この知見はSat RNAノックダウンにより細胞核の形態異常が起きることの原因となっている可能性がある。1(2).セントロメア領域のへテロクロマチン化の検討。Sat RNAノックダウンによりHistone H3のリン酸化が亢進することを見いだしたが、これはヘテロクロマチン形成にも影響する可能性を示唆しており、引き続き検討する。2(1). Sat RNAの正確な細胞核内分布情報。Sat RNAのFISHにより、このRNAが細胞核内でドット上の局在を示すことを明らかにした。現在このドットがセントロメアと一致するか否かを免疫染色によって検討中である。2(2). Sat RNAに結合する因子の探索。キーファクターであるAurora Bが細胞周期のM期特異的にSat RNAに結合することを明らかとした。またM期以外の時期に結合する因子の一つとして、スプライシング因子DHX38を同定した。さらに結合因子を同定するため、M期およびM期以外の細胞周期のステージからそれぞれSat RNA-タンパク質複合体を精製することに成功し、現在それに含まれる因子を質量分析により解析中である。3(1). Sat RNA過剰発現させたときの染色体分離への影響。Sat RNA過剰発現させる系を構築したが、染色体分離への影響は観察されなかった。この結果はSat RNAがCisにのみ機能し、Transには働かないことを示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においても本研究申請で立案した研究計画に沿って進める。具体的な内容は以下の通り。 1(1). Sat I RNAノックダウンが染色体分離のどのステップに阻害が出じるかを明確にし、RNAの作用機序を探る。そのために前年度で同定したSat RNA結合因子の挙動への影響を精査する。1(2). in vitro系の構築。ヒト培養細胞核抽出液を用いてSat RNA-結合因子の複合体がin vitroで再構築できないかを検討し、Sat RNAが細胞内で機能するために必要な性質を探るための足がかりを作る。2(1). Sat RNA-タンパク質複合体の全体像の解明。前年度で同定したSat RNA結合因子群について、それぞれのタンパク質同士の結合様式をIP実験で検証する。3(1). Sat配列を持たせたプラスミドを導入し、そのプラスミド上でセントロメア領域と同様な挙動(ヘテロクロマチン化や周辺因子群の会合など)を、再現出来るか検討する。この計画については外部から過剰発現したSat RNAが細胞に影響を及ぼさないという結果を得たため、変更する。次年度はSat RNAノックダウン時におけるセントロメア領域のクロマチン状態を精査しヘテロクロマチン形成に影響がないかを検討する。3(2). Sat RNA機能の生物保存性の検討。ヒトにおいて同定したSat RNA結合因子群について、マウスでも保存されているかをIP実験およびノックダウン実験等にて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究計画の遂行に必要となる、RNAノックダウンに用いるアンチセンスオリゴおよびRNAiのためのsiRNA合成費用、細胞への核酸導入試薬購入費、抗体染色用の各種抗体購入費などに充てる。さらに分子生物学的実験の為の一般試薬、酵素類、ディスポーサルの器具類の購入、細胞培養用の試薬購入にも使用する。加えて国内外で行われるミーティングおよび学会に参加し、研究遂行の為の情報収集のための出張費用、論文投稿のための英文校正、投稿費として計画している。
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Research Products
(10 results)