2013 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類の柔軟な性決定機構の進化ー有袋類のオスはどのように遺伝的に決められるのかー
Project/Area Number |
24770225
|
Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
桂 有加子 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 研究員 (00624727)
|
Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究では、有袋類のオスがどのように遺伝的に決められるのかについて明らかにするために、これまで有袋類でのオス決定遺伝子SRYの分子進化・機能、オス精巣での網羅的な遺伝子発現様式を調べてきた。有袋類を用いた実験・解析により、すなわち哺乳類の性決定機構がいつ、どのように進化して、SRY遺伝子がどのようにオス決定能を獲得したのかについて議論できると考えている。 性決定とは、未分化な生殖腺が精巣(オス)になるか、卵巣(メス)になるかを決める最も重要なプロセスのことである。哺乳類のなかでも初期に分岐した有袋類は、ヒトやマウスなどの系統(真獣類)とは異なる性決定、性分化機構をもつのかどうかについてこれまでの研究により議論されてきた。本研究では、まず哺乳類のオス決定に直接関与しているSRY遺伝子の進化的背景を調べるために、有袋類数種からSRY遺伝子を新たに同定し、真獣類のSRYとの配列比較を中心とした分子進化学的解析を行った。そして、有袋類のSRYの機能が真獣類のものと同じかどうか調べるために、SRYタンパク質の生化学的解析を行った。その結果、有袋類SRYの機能は、真獣類のものと類似していることが示唆された。さらに、ワラビーオス精巣の網羅的な発現解析により、精巣で発現する遺伝子を同定し、有袋類独自の性決定、性分化のしくみがあるかどうかについて現在検討している。 以上の結果成果から、有袋類の性決定遺伝子は、SRYである可能性が非常に高いことが示唆された。本結果は、我々の予想とは異なるものであったが、今後は、さらに本結果を実験的に強く示すために、遺伝子改変ワラビーの作成を共同研究者とともに検討していきたいと考えている。これまでの研究成果の一部は、すでに研究論文・総説としてそれぞれ国際査読誌で発表しているが、さらに二報の論文を現在執筆中である。
|
Research Products
(1 results)