2014 Fiscal Year Annual Research Report
進化過程における新規機能遺伝子の誕生~真骨魚類孵化酵素をモデルとして
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24770230
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
佐野 香織 城西大学, 理学部, 助手 (70612092)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 機能進化 / 新規機能獲得遺伝子 / 孵化酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
進化過程において、真骨魚類の孵化は、単一酵素による分解系から2種の酵素による効率の良い分解系へと進化している。卵膜分解作用から、2種の酵素による分解系は、単一種の酵素と同様の機能を持つ酵素(祖先型酵素)と新規機能酵素よりなることが明らかとなった。真骨魚類の中で初期に分岐したカライワシ類は単一種の孵化酵素を持ち、卵膜を膨潤させることによって孵化を行う。これが祖先型の卵膜分解メカニズムであると考えられる。一方カライワシ類より後期に分岐した正真骨類の魚種は2種類の孵化酵素clade I, clade II酵素をもち孵化時には2種の酵素により卵膜が可溶化される。2種類の酵素による分解系では各酵素が卵膜タンパク質(ZPタンパク質)の別々の部位を切断することが分かっており、2種の酵素は特異性がはっきりと分かれている。しかし、正真骨類と側系統的に分岐したもう一方のグループ、ニシン・骨鰾類の魚種はclade I, clade IIの2種類の酵素を持つにもかかわらず、卵膜は膨潤するが可溶化することなく孵化が行われる。このことからclade II酵素は正真骨類に至る進化の過程で卵膜可溶化という新規機能を獲得したといえる。27年度は正真骨類に属するメダカの2種類の孵化酵素を用いて研究を行った。すでにクローニングされている正真骨類の様々な魚種の孵化酵素のアミノ酸配列の比較からclade Iとclade II特異的に置換が見られるアミノ酸を見つけた。メダカclade I酵素のアミノ酸のうち5残基をclade II様に変化させた孵化酵素を、大腸菌を用いた発現系で作成したところ、メダカのwild clade Iとは異なるペプチド分解特異性を示し、clade IIの特異的な切断点のペプチドを分解する活性が得られることがわかった。しかし卵膜は可溶化できなかった。今後は一次構造に対する特異性に加えて高次構造の認識機構を明らかとすることを目指す。
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