2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24780007
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
小松 邦彦 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター寒地作物研究領域, 主任研究員 (20355655)
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Keywords | ダイズ / 草型 / 遺伝子 |
Research Abstract |
25年度は急遽10カ月強の海外研修を行うことになったため、当初の計画とは違い、研究実施期間が大きく制限されることになった。 遺伝的な解析については、24年度に変異系統およびその野生型兄弟系統の間で、責任遺伝子が座上している領域にデータベース上でアノテーションされた3つの遺伝子の塩基配列に違いがないことが明らかになり(上流側2.5kb以上、下流側1kb以上を含む)、かつ、公開されているゲノム情報と大きく異なる配列が当該領域に相当量含まれていることが推測されていた。そこで、25年度は新規の配列の解読と変異型および野生型系統間の比較を進めた。新たに約7kbpについて解読を完了させたが、両系統間で形質の変異を説明しうる塩基配列の違いは見いだせなかった。当該配列については、一部、既知のゲノム情報とほぼ同一と考えられる配列が含まれており、当該領域のゲノム構造は既知の配列と未知の配列が入り組む複雑なものとなっている可能性が高いと考えられた。また、新規に解読した配列をGeneScan等のプログラムで検索・解析したところ、レトロトランスポゾンと考えられる構造を含むことが明らかになった。解析の対象としている領域に関して、データベースで公開されている配列と解析に用いた変異系統及びその野生型兄弟系統の塩基配列が大きく異なることの一つの原因はレトロトランスポゾンの挿入である可能性が考えられた。 調査に比較的長い期間を要する変異系統の光環境に対する反応の調査および植物ホルモン施用試験は研究実施期間が制限されたことから行うことができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
25年度は、急遽、比較的長期の海外研修に赴いたこと、また、データベースの情報から推測された候補遺伝子がすべて責任遺伝子ではなく、新たに当該領域に見出された未知の配列の中に責任遺伝子があると24年度の結果から推測されたことから、当初の目論見とは大きく異なる方向に研究内容の変更を行う必要があった。研究期間は限られたものの未知配列の解読を進め、責任遺伝子が座乗すると考えられる領域では未知配列とデータベースで公開されている既知配列が複雑に入り組んだ構造を取っていると推測できうるデータを得た。このことは今後の解析を進める上で重要な知見と言える。以上の点から、25年度は当初計画に対する達成度という点では十分とは言い難いが、最終目標である短葉柄形質を制御する遺伝子の単離に向けてできうる限りの対策は行ったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
変異体とその野生型兄弟系統のゲノム塩配列の比較については、責任遺伝子が座上すると推測される領域に見出された未知の配列の解析を中心に進める。当該領域は全く未知の配列と既知の配列が複雑に入り組んで構成されていると考えられ、解読と統合を進めるのは比較的困難であると予想される。既存の「Williams82」のゲノム情報だけでなく、利用が可能になった「エンレイ」の情報も有効に活用し効率的に解読を進める。また、それと並行し、大規模分離集団のいくつかの後代(当該領域で組換えあり)について、今までの解析で明らかになった当該領域のSNPsを調査し、さらなる領域の絞り込みを行って責任遺伝子推定の確度を上げる。 光環境に対する反応の調査では、各色のLEDを組み合わせるなどして24年度とは異なる光環境を創出し、葉柄長に対する影響を評価する。植物ホルモン施用試験では、やはり他種植物での変異体の形態がやや似るジベレリンやオーキシンに対象の中心を移し、変異体に施用して反応をみる。 今後、25年度に研究期間が限られた影響を取り戻すべく最大限の努力を払うが、研究の進捗状況によっては課題延長申請等も検討し、当初の目標を十分達成できるよう手を尽くす。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は10カ月強の海外研修を行い研究実施期間が短かったこと、配列が全く未知のゲノム領域の解読は複数箇所を同時に進めることが出来ず進展が遅いため、使用する試薬等が減少したことにより差額が生じることとなった。 責任遺伝子が座上すると推測される領域は未知の配列と既知の配列が複雑に入り組んで構成されていると考えられるため、塩基配列解読に十分な経験がある契約研究員を雇用し、効率的かつ正確に塩基配列の解読を進められる体制を整える。また、場合によっては外部業者へ一部を委託するなどスピードアップも図る。
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